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2月も終わり・・・

あっという間に2月もあと2日。 僕がツアーに出ている間、やっぱり仕事が重なって、スタッフはまたまた飛行機で四国に行ったり来たりの「空飛ぶ調律師」だったらしい。
トラックで23日に大阪から戻ってきてからは、テレビの収録やら、雑誌の取材やらでのんびりするヒマもなく、おまけに仙台で風邪をひいたようで、胃腸の具合が思わしくないし、熱も出た。
なんだかくしゃみも出る・・・ピアノ屋らしく「アクショーーーーーン!」なんてやってみても、もはや会社では誰にも受けず(爆)
嬉しい事に食欲もないので、酒もワインもやめて、この際ダイエットをしよう!

そんななか、工場にこもって、新しい道具を制作中です。これはグランドピアノの鍵盤側を下にして、真っ逆さまに立てて運ぶ道具。 会場に搬入用のリフトがなく、客用のエレベーターでピアノを運ばなくてはならない仕事があるので、その為に考案したのですが、出張中にアイデアは固まっていたので、1日で試作品は完成した。久しぶりの溶接は楽しいなあ。
渋谷に持ち帰り早速試してみる。食べていないので腹に力が入らないけど、なんとか一人でピアノを逆立ちさせられた! 客用のエレベーターでフルコンを運ぶのは無理だけど、小型のグランドピアノならこれで入れられる。前から作ってみたかった一品。初使用は来週の北海道だ。
3月は1~2日に青山劇場。2~4日は秩父でチェロとピアノのレコーディング。
6日には北海道行きのフェリーに乗るから、今日明日中には完成させなきゃ!



大阪にいます

昨日(2月21日)夕方に東京を出発して、多賀のパーキングにあるホテルで一泊、今朝大阪に着きました。
9時にピアノを搬入して調律、楽屋でパソコン打ってます。
2月22~24日まで、マンハッタンのスタジオで、ジャズのレコーディングを頼まれており、TAKAGI KLAVIER USAのスタインウェイが出動予定だったのですが、現地プロデューサーの「どうしてもここで」というこだわりのスタジオには、フルコンが入らないようで、キャンセルになったため、大阪に来たというわけです。
先日の大雪情報を見て、マンハッタンに行くのはちょっと嫌な予感がしていたので、少しホッとしています(笑)

さてさて、今月のF1のスケジュールはこんな具合でした。
3~4日は、すみだトリフォニー。5日に渋谷を出発して富山入り。
6~8日とレコーディング。8日の夜渋谷に戻り、9日朝、アートスフィア搬入・調整。
10~11日本番。12日、横浜の金沢公会堂でコンサート。13日に渋谷を出発して、14日は新潟りゅーとぴあ、本番終了後仙台に向かい深夜着。15日は仙台市青年文化センターで本番。
16日、雨の中、東北道で渋谷に帰る・・・ご苦労様!
そして数日間癒されたF1は、21日また大阪に向かって、今日、本番です。

これはF1だけのスケジュールで、もちろんこのほかのピアノも、それぞれのシーンで活躍しているわけですが、今月は珍しく「F1以外のピアノでは公演が成り立たない!」というスケジュールが繋がった。 ここまで数があると、どこかでスケジュールが重なってもおかしくないのだが、まさに綱渡り(笑)
こんなスケジュールなので、他から依頼があっても残念ながらお断りするしかない、ごめんなさい!

昨年はフルコンも増えたし、取り廻しはぐっと楽になったとはいえ、楽器が増えたら増えたで、仕事も増える。持ち込みのコンサートやレコーディングもすでに1600ステージを越えた。
ここのところ、特に酷使されたF1は、この大阪公演を終えたらやっと3週間のお休みをいただき、ドッグ入りして3年ぶりのオーバーホールを迎える。 フレームを降ろして修正。チューニングピン、アグラフ、弦、ハンマーなどは全交換。さらには外装の傷(これは勲章)に至るまで修理する。 またコンサートステージに復帰するまで、しばしのお休みです。お疲れさま!



レコーディング最終日

2月7日。今日は本来なら休館日のところを無理に開けてもらったのだが、ボイラーマンが休みのため、暖房は入れられない。 心配した会館の人たちが、ありったけの暖房器具を持ってきてくれた。感謝! しかしステージ上は、雑音が発生してしまうのでストーブなどは持ち込めない・・・ピアニストはかわいそう。
さてさて、調律を始めて「なんか変だな・・・」。鳴らない。ピアノに一枚「幕」がかかったような感じ。 空気が重い。大体朝は、鳴りが悪いけれど、いつもとちょっと違う。
調整は何も変えていないので、試しに昨日の録音と聞き比べてみた。 明らかに、粒立ちが弱く、ffffでは音が団子になる。音の抜けも悪い。
今日は展覧会の絵を録る。音数も多いし、なにより内声の音色が変わらなければ、絵画の表現が乏しいものになってしまう。 ピアニストに「とにかく、まだ目覚めないピアノをもっと引き込んでみて」と言いつつ、原因を考えた。
温度か湿度か、はたまたそれらの急激な変化か・・・。 いやいや、そういえば、朝ホテルを出るとき、テレビの星占いで「今日の射手座は最悪。何をやってもうまくいかない」って言ってたな、そんなことまで頭をよぎる(笑)
とりあえず、展覧会は後回しにしてもらって、ラフマニノフから録り始め、お昼を食べた後から、voicing(整音)をやり直す事にした。 調整をやり直すと、ピアノもやっと目覚め、改めて展覧会を録り始める。一安心だ。
レコーディング・マイクは、まるで顕微鏡で音を見るように、コンサートではごまかせるような音色の微妙な変化まではっきりととらえてしまう。 しかも、作品として残る。 これが面白いから辞められない。
グレン・グールドがコンサートステージから去り、レコーディングのみに没頭したのも、わかるような気がする。



レコーディング中日

2月7日。今日は本来なら休館日のところを無理に開けてもらったのだが、ボイラーマンが休みのため、暖房は入れられない。 心配した会館の人たちが、ありったけの暖房器具を持ってきてくれた。感謝! しかしステージ上は、雑音が発生してしまうのでストーブなどは持ち込めない・・・ピアニストはかわいそう。
さてさて、調律を始めて「なんか変だな・・・」。鳴らない。ピアノに一枚「幕」がかかったような感じ。 空気が重い。大体朝は、鳴りが悪いけれど、いつもとちょっと違う。
調整は何も変えていないので、試しに昨日の録音と聞き比べてみた。 明らかに、粒立ちが弱く、ffffでは音が団子になる。音の抜けも悪い。
今日は展覧会の絵を録る。音数も多いし、なにより内声の音色が変わらなければ、絵画の表現が乏しいものになってしまう。 ピアニストに「とにかく、まだ目覚めないピアノをもっと引き込んでみて」と言いつつ、原因を考えた。
温度か湿度か、はたまたそれらの急激な変化か・・・。 いやいや、そういえば、朝ホテルを出るとき、テレビの星占いで「今日の射手座は最悪。何をやってもうまくいかない」って言ってたな、そんなことまで頭をよぎる(笑)
とりあえず、展覧会は後回しにしてもらって、ラフマニノフから録り始め、お昼を食べた後から、voicing(整音)をやり直す事にした。 調整をやり直すと、ピアノもやっと目覚め、改めて展覧会を録り始める。一安心だ。
レコーディング・マイクは、まるで顕微鏡で音を見るように、コンサートではごまかせるような音色の微妙な変化まではっきりととらえてしまう。 しかも、作品として残る。 これが面白いから辞められない。
グレン・グールドがコンサートステージから去り、レコーディングのみに没頭したのも、わかるような気がする。



レコーディング初日

いよいよレコーディング。曲目は以下の通り。

展覧会の絵(ムソルグスキー:ホロヴィッツ編)
前奏曲 Op.3-2、32-6、32-12(ラフマニノフ)
楽興の時 Op.16-3(ラフマニノフ)
パガニーニの主題によるラプソディより 第18変奏(ラフマニノフ:江口編)
「三つのオレンジの恋」より「マーチ」(プロコフィエフ)
「ロメオとジュリエット」より「モンターギュ家とキャプレット家」(プロコフィエフ)

今回のテーマは「ピアノの限界に挑む fffffからpppppまでの 驚異のダイナミックレンジ!」
ピアノという楽器は、<ピアノフォルテ>という名前が示すように、ピアノからフォルテまで出せる楽器を目指して発達してきた。 その究極が、19世紀末にニューヨークで完成されたスタインウェイであろう。その訳は・・・といった話は、またいつかするとして。
スカーーーンとどこまでも突き抜けていく高音。ビィーーーンと深い低音。倍音の全てを出し切って、fffffにも割れることなく、その超越しきったダイナミックレンジの広さ。
昨今のプラスチックの鎧を纏ったピカピカのピアノからは決して出せないスーパーブリリアントな音色。 この楽器が「なぜ楓のボディを持ち、ラッカーの薄塗りしかしていないか」の意味が明らかになる・・・とまあ、こんな感じの企画。
5日に楽器と録音機材をホールに搬入して、まずは寿司。
さすが北陸の魚は旨い。ブリしゃぶ最高! 「良い録音をするためには、酒と肴はケチってはいけない」とか、いつもの勝手な理由をつけて和気藹々。
今回のレコーディングは、私がプロデューサーなので、こういったことも大切なんです(笑)。
明日は録音初日だからあまり飛ばさないようにして、本日は終了!明日から頑張りましょう!


いよいよコンチェルト本番

マチネのコンサートは慌ただしい。
朝11時アップで調律・整音を終え、リハーサル。昨日の問題点を全て解決してお昼を食べに行く。 僕の仕事はここで終わりだ。コンチェルトは始まってしまったら休憩がないので、何かトラブルが起こってもステージに出ていく訳にはいかない。 ピアニストがステージに出ていく前に、全ての責任を果たしておかなければならない。
そして本番が始まった。一曲目が終わっていよいよ出番。
東京のコンサートなので、ピアノを袖から所定の位置に引っ張り出すのは、我社の新人君たちの仕事だ。 くれぐれもお客さんの上にピアノを落とさないように!などと、笑えないようなアドヴァイスをする。 あとは客席のお客様のみが知る・・・だが、3階席の一番後の席まで、ばっちりピアニシモが聞こえたそうだ。 大ホール大入り満員大盛況の中、無事終了。やれやれ・・・とほっとしたのもつかの間、なんとアンコールを弾きにステージに戻っていった。それもトロイメライ!
「げ、聞いてないぞ・・・!」今日はリハーサルを含めると、朝からコンチェルトを2曲分弾いているし。アーティストにはいつも「本番中の調律の保持は保証する!」と言ってはいるが、アンコールに静かな曲を弾かれるのは、やはりちょっと緊張するものだ。(苦笑)
それでも自分なりに満足のできる結果になり、万雷の拍手の中、袖に戻ってくるピアニストと「やったね!」と握手。アーティストサービスととして、責任を果たした安心感と自己満足で、調律師冥利に尽きる瞬間です。
それでも、我々にはそんな感傷にふけっている時間はなく、終わった瞬間には、もう明日からのレコーディングの事に、頭は切り替わっています。



富山に行ってきました

まるで竜宮城に行った浦島太郎のように、毎日飲めや歌えやで、日にちが経つのをすっかり忘れてました(笑)。 富山湾の「きときと魚」とブリしゃぶが旨かったです。
さて、2月5日に東京を出て、6~8日まで、富山県魚津市の新川文化ホールでレコーディングをしてきました。 これはカーネギーホール録音以来3年ぶりの、タカギクラヴィアプロデュースになります。 ラフマニノフや展覧会の絵など、スケールの大きい曲が中心なので、キャパが1000席以上あり、かつ奥行きのあるホールを探していたのですが、エンジニアの岡田さんが、最近このホールで何度か録音しているので、紹介してもらいました。 最高のピアノ録音を目指して、カーネギーホールまででも出かけていくこのシリーズは、日本国内でもピアノに合ったホールを目指して、北海道から九州まで旅をします。

さてさて、富山で浦島太郎になっている間に、2月の日記をアップするのをすっかり忘れてしまいました。慌ててどこまで書いたっけ・・・とさかのぼること一週間前。
2月4日は、すみだトリフォニーホールで新日本フィルとコンチェルトでした。前日のリハーサルもホールでやるということで、ピアノは3日に搬入。前日にステージに乗せられるということは、温湿度の安定や楽器の調整がゆっくりできるという点でもラッキーでした。 曲目はモーツァルトの25番。 コンチェルトの場合、ピアノはまずF1が選ばれることが多い。それは当然「良く鳴る」から。 いくらピアニストがうまく弾いても、聞こえなければ何にもならない。面白さも半減。
しかし我がF1は百戦錬磨。室内楽で育ったヨーロッパの楽器と違って、大ホールで育ったNYスタインウェイの最も得意とするところ。(この辺は長くなるので、またいつか)

コンチェルト場合、僕はまず通常より更に音量を上げた調整にして持っていく。そしてリハーサルでオケとのバランスをみてデチューンしていく。なぜならオーケストラによって、音量も音色も違うし、現場では音量を落とす作業の方が簡単だから。
今回はモーツァルトだし、現代のようなピアノのなかった時代の作品だから、オケにあまり勝ってもいけないし、音色もマットな方がいいかな・・・。 そんなことを考えているうちにリハーサルが始まった。
モーツァルトは例によってなかなかピアノ・パートが始まらない。オケが演奏している間、ピアニストは何を考えているのだろう・・・?
それでピアニストに聞いてみた。「オケを聞きながら何考えてるの?」
答えはこうだった。「う~ん、最初の音はなんだったっけ・・・。」(笑)
確かにずーーーっと待って、やっと出した最初の一音が間違っていたらみんなずっこけるもんね。 私は私で、「指揮者のクリスティアン・アルミンクは、若くて長身でカッコイイな~、あの足が自分についていたら、調律師なんかやってないだろうな~・・・」なんて考えてました。
そうこうしているうちに、やっとピアノが出てきたので、バランスを聞きながら次の作業のことを考える。 調律は今日じっくりやってしまったので、明日はひろうだけ。心配していた音の痩せもなく、あとはオケに勝ちすぎている音量を少し落として、ピアニシモの方を重視して仕上げれば大丈夫だ。
ところで、ピアノ・コンチェルトの場合は、必然的にピアノを置く位置が決まってしまう。
いつも高音の方の足は、舞台の崖っぷち。 実はこの場所、反響板からは最も遠く、ホールの反響ポイントからもかなりずれていて、一番音の悪いところなのだ。
大編成のオケの場合、最前列の弦楽器もピアノの回りに並ぶので、ピアノと最前列の弦楽器は低域が痩せたスカスカの音になることが多い。 ただでさえ、条件が悪い設置場所の上、大音量の管楽器などにマスキングされて、「ピアノ・コンチェルトはカデンツのところしか、ピアノが聞こえなかった」なんてことがあるわけです。 さて、明日を楽しみにして、今日は帰ろう。。。(続く)