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江口 玲 Newアルバム

今年も半年過ぎたと思っていたら、もはや7月も終わり。
今年もいろんな事がありました。 ピアノを持っての出張も北海道から九州まで、はたまた大雪の富山から新潟、仙台。

その富山で収録した江口玲待望の新作「展覧会の絵」がついに発売!
今回 は「ピアノという楽器のダイナミックレンジの限界に挑む!」がテーマだったので、芯のあるpppp から突き抜けるfffffまで、を実現するために、楽器はニューヨーク・スタインウェイの 通称F1を選んだ。
ホロビッツを使おうかとかなり迷ったけど、fffffの迫力はF1にはかなわない。 やはり1887年の設計では、その後のスタインウェイに比べるとまだヨーロッパ的な 部分が残っているからだろう。その後まさにfffffに重点を置いた近代的なモデルチェンジがなされるのだが、 これも巨大なカーネギーホールの影響であることは間違いない。

F1が持つ「中音から最高音にかけての音の抜けの素晴らしさ」は、弾いた人しかわからない。殆どのピアノ は中音、次高音、最高音といくにしたがって、音のエネルギーが減って音が痩せてくる。 それを補おうとハンマーを固めると、必ずキンキンとした金属的な音になるし、もともと大きなハンマー がついていて接弦時間が長い為、ffffで叩くと決まってベシャッとなり、音が詰まる。
音が詰まると つまらない音になる(笑)
だが健康な旧ニューヨークスタィンウェイなら、このあたりの音色はまさに独壇場だ。他の楽器では 逆立ちしてもこんな抜けの良い高音は出ない。
(残念ながら新しいニューヨークスタィンウェイは この限りにあらず)
我がF1も、響板の余計なテンションが取れてきて、ようやく枯れた音が作りやすくなってきたので、整音も楽しい。
そしてffffよりももっと難しいのはppppのほうだ。これには93年のショパン誌5月号に私が書いた記事(フランツ・モアのインタビュー記事) の中に、図解入りで紹介したホフマンアクションを採用した。

レコーディングエンジニアはおなじみの巨匠、岡田則男。いくらピアノ技術者、ピアニスト、ピアノが頑張っても、録音技師 がピアノの音を判っていないと、この音は受け止めてもらえない。今まで何度も苦い思いをした ことがあるので、自由に作品を作れる我々のこのシリーズに彼の力はかかせない。
そして各々の才能と、アナログレコードとは比べ物にならないデジタル録音の威力とがあいまって、 超ワイド・ダイナミックレンジが実現したわけだが、世界中で発売された「展覧会の絵」と比較しても これに勝る録音はまず存在しないであろう・・・と言うのが我々の感想である。勿論 次回やる時はここを、こうして・・とかまた欲が出るので、完璧なんてありえないところが面白い のだが。
ともかく、まずはお聞きください!
注)ステレオのスピーカーを破壊しないように適度な音量で(笑)