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軽井沢 最終日

録音も4日目に突入。今日は最終日、最後の曲は定番のツィゴイネルワイゼン。演奏会でも、レコーディングでもよく弾かれる。前回の竹澤恭子さんのレコーディングでもこの曲を録音した。
こんな超有名な曲はかえって難しい。テスト録音をやりながら、アーティスト達はあーでもない、こーでもない、と話し合っている。
「ここは楽譜のように弾くとぴったり合いすぎているから、少しヴァイオリンの入りを遅くしよう」とか「この音色はもっと細いほうがよい」とか言いながら演奏を繰り返していくと、どんどん音楽的に完成されていくのがわかる。今日のステージからのお呼びは、「黒鍵で一箇所、微妙に音が出るのが早いところがある」ということだけだったけど、確認してみたら確かにその黒鍵だけ、時間にして100分の数秒、音の出が早かったので調整した。恐らく普通なら全く気がつかないような誤差でも、音楽を突き詰めていくと気になるのでしょう。ステージの上では、そこまで神経を研ぎ澄ませた演奏が続いているのです。

この曲が終われば、演奏会のように今回のすべての曲を通して弾いてみて、やり直す曲があれば録り直して終わりです。
片付けてピアノを搬出してやっと東京に帰れます。
お世話になった軽井沢は、シーズンオフのため、静かに録音ができてとても良いところでしたが、オフ・ザ・レコードはあらゆるお店が閉店中で、あまり旨いものにはありつけませんでした。



軽井沢 その5

昨日2曲目、「パガニーニ / シマノフスキー:カプリス」のテスト録音のときに「どうしても低音のピアニシモが膨らんでしまう。もっと小さくして欲しい」という注文。確かに物理的にはピアニッシモに弾けているのに出てくる音はなぜか膨らんでいる・・・。
こんなに音数が多くて低音のピアニッシモがどろどろ続くような曲だと、単なる小手先のテクニックでは限界があるし、楽器対してこの場でできる事はすべてやりつくした。ピアノの位置や向き、ステージの上に毛布を敷いたり取ったり、床裏の梁を探してキャスターを乗せたりはずしてみても改善されない。さて困ったものだ。
ミキサーの人と協力して、ピアノを思い切ってステージの板目で6枚分(約1メートル)前に出してみる事にした。
ピアノの向きも15度程下手に振っていたのを正面に向けなおす。(実は初日に板目5枚のところまでは動かしてみたのだが)
すると何と!今までの苦労は何だったのだろう・・と言うくらい音がすっきりした!板目わずか1枚の差で、中音域まで抜けが良くなって、びっくり。
このホールはどこの壁からも離して、天井はホールの真ん中が一番高いので、なるべくそこに近づけるほうが良い音で録れそうです。5角形のホールでは、慣れたシューズボックススタイルのホールとはまたかなり違う悩みが発生するのでした。

しかし、もしこれがホールのピアノを使って録音していたなら、みんな最後まで原因はピアノにあると思い、ピアノをいじくりまわしても結局解決しなかった、ということになりがちです。
慣れたピアノを持ち込めば、この楽器の最高の状態がいつも耳にあるわけですから、自信を持って他の原因を探れるわけで、ピアノを持ち込むメリットがここにもあるわけです。
とは言っても、完璧などあるはずもなく、何百枚ものレコーディングに参加しても、いやはや毎回難しい。だから面白い(笑)
こうやってレコーディングエンジニアと調律師が協力して、少しでも良い音で録りたいという努力とスタッフのチームワークで、作品を作っているのです。