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NHK名曲リサイタル

あっという間に1月も後半。今日は「NHK名曲リサイタル」の収録です。前回の収録にはF1を持っていったけど、今日は1887年ローズウッド。
本番の前半は、このピアノが活躍した19世紀末から20世紀初頭の曲とトークも含めて約1時間。後半の1時間、ロッシーニや日本歌曲の伴奏にもこのピアノを使います。
搬入して調律、マイクセッティング、それぞれのリハーサルや打ち合わせなど、結局朝から夜9時まで1日缶詰状態です。場所は509スタジオ。NHKはとても近いので、車なら5分前に出発しても間に合います。スタッフも会社から徒歩や自転車で行ったり来たり。
御年120歳のローズウッド伯爵はさすがに圧倒的な存在感を放ち「なんだ今日は俺の出番かい?しょうがねーなー起きてやるか」と言わんばかりの不機嫌さ。
年寄りなので体温調整が鈍っているのか、いつものぬくぬくとしたスタジオから引っ張り出されると、寒いの暑いの、体調が悪いと愚痴をこぼす・・・。こんな時はいつものように爺さんが目を覚ましてやる気が出るまで、ほったらかしておきます。甘やかしません。

爺さんの機嫌が直るまで、時間つぶしに102スタジオまで探検に。
2~3日前に作曲家の宮川さんがサロンに来た時、NHKの自分の番組で使っている白いオンボロ・スタインウェイは結構気に入っている、と言っていたので、さっそく見てきました
1964年製No.388615のB型で、全身白と言うよりはもはやアイボリーに変色し、昔のNHKらしく、鍵盤蓋のスタィンウェイの文字まで塗りつぶされた名無しのごんべいピアノであったけど、ニューヨーク設計時代の素晴らしいピアノでした。

そろそろ調律するか・・と509スタジオに戻って爺さんのご機嫌を拝見すると、ほっとかれて、おまけに他のピアノを見に行ったのでヤキモチを焼いたか、そろそろやる気になった御様子。調律を終えてリハーサルを始めて、マイクチェック。
みんな始めて聞く音に戸惑っている様子。やがて、普通のピアノより遠鳴りする事に気がついて、マイクアレンジを変える。マイクはB&K、ショップス、ノイマンの定番なので、音色は特に違和感はなく主にバランスのほうに主点を置く。
今日は新春初公開録音なので、いつもより多い150人のお客さんが入った。そのせいで、本番は少し音が吸われて痩せてしまったけど、120年前の雰囲気は十分録れたと思う。特にドビュッシーは点描画のような雰囲気が良く出て、このピアノでなければ出せない音だと痛感した、
お勧めの録音です!

画像は「休憩時間にお客さんがピアノに群がるいつもの光景」(笑)