fc2ブログ

「グリーグ再発見の旅」録音

グラーセルさんは、今日も朝10時にはホールにお見えになって、軽く指慣らし後、まだ空調も止まってないのに、「早く録音しよう、早く録音しよう」とせっかちに騒ぐ(笑)
この勢いだと、昼には終わってしまいそうな勢いだ。
ノルウェーの格言で「全ての事は3回目が一番良い」というのがあるらしく、1回目、2回目とプレイバックを聞きに戻って、殆ど3回弾いて終わり。
ここ1週間、ローズウッド君をずっと弾いているので、本当に安心しきっているようだ。おまけに「この楽器をポケットに入れてノルウェーに持って帰りたいと」何度も言う。
こんなにピアニストに愛されて、ローズウッド爺さんもさぞかし御機嫌だろう。
まさに相性ピッタリのカップルでした。

13時には全ての録音が終了し、打ち上げもかねて近くのバーミヤンでランチ。今回のレコーディングの話に花が咲いた。
ここで、7日の日記にも書いた「馬車と新幹線の話」と全く同じ話を偶然グラーセルさんが話し出したので、またまた意気投合しました(笑)
以下はグラーセルさんの話。

「作曲家が実際に活躍していた頃の楽器で演奏しなければ、その音楽の本当の意味が表現できません。
例えばブラームスの曲も、あの時代のティンパニーは、現代のものよりもっと小さかったのに、それを知らないで、現代の大きいティンパニーを叩くから、バランスが全然違ってしまう。
ピアノも昔の楽器は全体の音量に比べてベースのほうが大きいので、楽譜にはPPPと書いてあっても、現代のピアノではPPPで弾くと小さすぎてバランスが崩れてしまう。
昔のピアノはそれぞれのパートでいろいろな音色が出せたけれど、現代の楽器ではそれは表現できない。」等々、要約すると大体こんなお話でした。

ムニエの時もそうだったけど、遠い国ノルウェーからやってきたグラーセルさんも全く同じ話をするので、この「正統派シリーズ」を長年続けてきた事の意味が、また今回も証明されたような気がします。
こうして先生は2週間の日本滞在を終えて「明日ノルウェーに帰るの!」と元気にお帰りになりました。
2ヵ月後にこのCDができるのが楽しみです。

「正統なクラシックの伝統を後世に残していく」このシリーズは、コンセプトが凝っているのでお金がかかって大変だけど、こういった素晴らしい音楽家達も思いは同じだということ、そして「一気にパッと売る」営業目的のCDではないからこそ、皆さんが喜んで協力してくれて、こうしてまた作品が1つできあがることを嬉しく思います。
お金ではない財産は心を豊かにします。
次は7月にまた珍しい録音を企画しています。乞うご期待。