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クラヴサンの曲を録音

8/30~9/1はサロンでCD録音。
プーランクやラモーのクラヴサン曲を録音するので、ピアノの音をクラヴサンのようにして欲しいというご注文(笑)
以前F1をクラヴサンのような音色に調整してコンサートをやった事があり、それが結構気に入ったようで、今回の録音になったというわけだ。

それならば、フルコンではなくクラヴサンに近い大きさのB型でやろうということになった。
古楽器はフレームが無く、弦の張力もピアノに比べて圧倒的に弱いので、近代ピアノで弾くと、高音より低音のほうが音量が大きくなりすぎてしまう。よって、フルコンより小型の楽器のほうが音のバランスが良いし、サスティーンも余り伸びないほうが良い。

ホールの楽器を使用するわけでもなく、自前の貸し出し用の楽器だから、自由に、ゆっくり気兼ねなく思い切った調整ができる。
私の場合、古典の曲を弾くピアノの調整は「鍵盤のあがきは浅く」「ダンパーの掛かりはなるべく遅く」ということを1番大きなポイントにします。
ご存知のように、通常は鍵盤のストロークの半分くらいの位置でダンパーが上がり始めますが、それを3/4位まで下に下げると、その位置までダンパーの重量が鍵盤にかからないので鍵盤が軽くなります。
さらに、ダンパーがなかなか上がらないという事は、鍵盤を少し戻しただけで音が止まるので、次の鍵盤に移行するときに前の音が無駄に残らずノンレガートに弾きやすくなります。

午前中に楽器の調整を終えて、午後からリハーサル、実際には3時頃から録り始めた。
1~2分の曲ばかりなので、曲数の割には、とんとんと進んだ。
楽器をB型にしたのは正解で、フルコンだと低音が膨らみすぎて、なにやら巨大な楽器で弾いているように感じられる部分も、まあまあタイトで良い感じになった。
リスト以前の時代には今のようなフルコンなど無かったので、曲によってはバランスが崩れてしまって、とても作曲者の意図を忠実に再現しているとは思えない音楽になることがある。
小さいホールで小型の楽器しかない時は、胸を張って古典をやれば良いんだよね。

昔、ニューヨークのスタインウェイ社ショールームで、最も小さいMODEL-Sのグランドピアノを、「バッハを弾くにはとても良い」とセールスマンがお客に説明していて、「日本のセールスマンよりよっぽど音楽がわかってるな」と思ったっけ。
確かに、ショパンが3000人の大ホールで巨大なフルコンを弾くことを想定して「子守唄」を書いたとは思えないよね(笑)




秩父でレコーディング

秩父ミューズパーク・ピアノ庫のエアコンは修理中で未だ治らず・・・。
特注の遠隔集中管理型のシステムも、はや16年経つからね。

27~28日は日本フィルのVn松本さんの録音。
松本かっちゃんとは、もう20年くらい前からよく仕事で一緒しました。
なかなかクールなかっちゃんは日本フィルのメンバーの中でもよくもててました。お互いにすっかりおっさんになってしまったけれど、音楽をやっているな仲間はみんな気持ちは若い(笑)

10数年前、日本フィルは、「行方不明の坂本弁護士一家を探そう」というチャリティの室内楽コンサートを各地でやっていたので、よく一緒に仕事をしました。坂本弁護士はまだ修習生時代に、組合運動をやっていた日本フィルに、勉強を兼ねてサマーコンサートやいろんな活動に参加していたので、日本フィルのメンバーとは顔なじみだったらしい。
そんな縁で、横浜アリーナで行われた坂本弁護士の葬儀では日本フィルがレクイエムを演奏した訳です。
私も今まで持ち込んだホールの中で1番巨大な場所がこの横浜アリーナだったので、忘れられないコンサートの一つです。
葬儀というのは急に日程が決まるので、確か、大坂のフェスティバルホールで行われるグリーグのコンチエルトの日と重なっていて、横浜アリーナの2階の会議室に、フルコンをもう1本持っていって、2階でグリーグのゲネプロ、その後アリーナでレクイエム本番をやったような記憶があります。

今回の、かっちゃんの録音は残念ながら私はスケジュールが重なっていて行けず、スタッフに任せて私は29日に秩父入り。
今日はショパンの小曲のピアノソロの録音。
この3日間の録音は久しぶりにホールのニューヨーク・スタインウェイを使用しました。
なぜかって?ピアノ庫のエアコンが壊れて以来、ピアノはステージ上に出しっぱなしだから、調整もかねて録音に使用すれば、ホールにはピアノの使用料が入って、保守点検並みの調整が無料でやってあげられるからです。
これも、お世話になった秩父に少しでもお返し(笑)








意外なとこに行くぞ!

失敗学で有名な畑村教授の招待で、自衛隊の富士総合火力演習に行ってきました。
朝の5時半に会社集合で、お茶の水の聖橋から、バスで自衛隊の東富士演習場へ。今日は戦車やヘリコプターなどの公開実弾発射訓練。そんなわけで、今日は珍しくピアノとは関係ない1日です。
とは言っても一緒に行ったのが稲本響だから、やっぱり仕事の話から抜けられないかも(笑)

午前の部はあいにくの霧で、ほとんど実弾発射はなくがっかり。
昼食後、戦車に試乗だ。初めて乗る戦車に大満足。
キャタピラーを観察して、ごぶちゃんの次期モデル、ろくちゃん、ななちゃんの開発構想が湧く(笑)
しかし戦車って意外と乗り心地がよいのにびっくり!この50トンもある鉄の固まりがかなりのスピードで突っ走る!大迫力。
驚いたのはそれだけではない、何と!4両ほどで走った戦車の中に、女性運転手を発見!いくらオートマとはいえ、戦車だよ、戦車。
最近バスやダンプにも女性の運転手が増えたけど、戦車までとはね!我が社の女性スタッフも3トントラックでピアノを運んでいるくらいでは威張れません、戦車ですから。
続いて戦闘ヘリコプターのコブラの運転席に乗ったりして、夜は夜間演習の見学。
霧も晴れ、実弾打ちまくりで、凄まじい音と迫力。
貴重な経験と貴重な1日だけの夏休みを終えて、夜の10:30頃会社に戻った。




京都最終日

10日間に渡り実施されたオーバーホールも、今日が引き渡し。
朝から整音の最終仕上げをして、夕方引き渡した。
会館の人も舞台の人も大喜び。
このホールのピアノを買い換えさせようと、地元のピアノの先生や、楽器店、調律師があの手この手で動いたようだけど、こうやって蘇ってしまうと、売上にならなかった商売人達の敵をまた作ってしまうかもしれない(笑)
しかし、もうそんな時代ではないと理解して欲しい。

さて、スタッフのお疲れ様もかねて、また六盛の手おけ弁当を食べて、夜8時過ぎにパジェロで東京に向かう。
夜中2時頃にやっと渋谷に到着!
今月は10日に松江からスタートして、京都~河口湖~堺市~和歌山~京都と回ったスケジュールもとりあえず終了!





古座川2日目

岡田邸のスタインウェイとヤマハのG5&U5の調整を、スタッフと一緒にすませた。
このニューヨーク・スタインウェイは1953年製のMODEL-Bで、弦やピン、ハンマーなどは当然交換したけれど、響板はオリジナルのまま。数本の皹は見られるが、54年を経過したとは思えないコンディションだ。玉のようにコロコロ鳴るスタインウェイは、音作りの巨匠の家で可愛がられている。

良かった時代のスタインウェイはまさにストラディヴァリウス。
今のスタインウェイからは決して出ないこの音は宝物だ。
しかし、新生スタインウェイは何であんなになってしまったんだろね…楽器は機械で作る物ではなく、腕の良い職人達が作るものだから、ホロビッツやルビンシュタインのような巨匠達がいた頃は職人も夢があって、腕が磨けたけど、巨匠がみんな死んで、小粒なピアニストばかりになってしまったから、普通のスタインウェイで満足。
若い職人は育つわけない。憂うばかりだ。

さて古座川をお昼に出発して、トラックは一路、名古屋に。海岸沿いの42号線に出ると、やっと携帯が通じ、大量のメールを処理。現実に引き戻される(笑)

夜の7時頃に名古屋駅に到着。ここで、トラックとスタッフは東京に帰り、私は新幹線で京都に戻る。21時半頃に京都駅に到着。
スタッフがパジェロで迎えにきてくれたので、そのままタコ虎の山科店に向かう。私は日本一うまいと思うタコ虎のたこ焼きを腹一杯食べながら、10日間、京都に泊まり込んでオーバーホールを続けているスタッフと打ち合わせ。いよいよ明日で最終日だ。





古座川の岡田邸

和歌山県・串本の古座川に住む岡田さんは、元DENONのチーフエンジニアで、生まれも育ちも東京だ。
長年の出張録音で、日本中あらゆるところに行ったけれど、この日本一綺麗な田舎・古座川が気に入って、退職金で家を立て永住した。
バブルの時は、仕事を頼まれると南紀白浜空港から飛行機で東京に通っていた。最近は悠々自適で田舎暮らしを満喫しているけれど。

「トーンマイスター」と言えば聞こえは良いけど、ミキサーからオペレーター、ディレクションまで何でもこなす、でも全部中途半端な昨今のエンジニアに不満を覚えるアーティストやプロデューサーからお声がかかると、よっしゃ!とばかり、出かけて行く。いわゆる最後の職人。
この岡田さんとは長い付き合いで、日本のクラシックレコード業界の衰退期を一緒に仕事してきた。
奥さんは元コロムビアのディレクターで、我社のレーベル「NYS CLASSICS」第1作目、ジェルメーヌ・ムニエ「喜びの島」のディレクターでもある。ちなみに、NYSというレーベル名を考えたのもこの人で、実はこの3人の名前の頭文字である。
そんな訳で、公私ともに、親しい付き合いなので、年に数回お邪魔する。数年前に納品した抜群に良い音のするニューヨーク・スタインウェイB型の調整もかねて。

昨夜は9時頃に着いて、いつものように歓迎のディナー。
庭先を流れる古座川に仕掛けた籠に毎朝取れる手長エビ、ズ蟹、あゆ、等の獲物を塩焼きや甘辛煮はまさに自給自足。
岡田さんと、次の仕事の話を肴に、飲んだり食ったり。
全ての携帯電話が圏外になるこの山奥は、やっと雑音から逃れられる別天地だ。





おおとり?

朝7時1分、品川発のぞみで大阪に向かう。
阪和線の「鳳」という駅を、「ホウ」と呼ぶのだと勝手に思い込んで、「おおとり駅」でうっかり乗り過ごした(笑)

「おおとりけいすけでございます、ポテチン~」なんて、物真似してたのに・・・(古いか)。
そうか、鳳って書いておおとりって読むのか!

堺市のウェスティーホールには11時頃にやっと到着。
トラックは京都から既に9時に到着して搬入も終わり、調律もほとんど終わっていたので、そのまま10月に持ち込み予定している大阪のライブハウスの現場下見に行く。
戻ってきた頃にコンサート開始。
久しぶりの稲本ファミリーのコンサート。
マチネなので夕方終了して搬出。

さて、今日はこれから和歌山の串本まで走って、古座川の岡田さんの家まで走る。
リアス式の綺麗な海岸線、国道42号線をひた走り、夜9時前に岡田邸到着。7月のプーレ録音以来の再会だ。
今夜と明日は古座川泊。








河口湖その2

調律は朝10時30アップなので、昨夜は河口湖に泊まり、富士山を見ながら朝食を食べたけど、雪が全くないので、1月に見た時程の感激はない。ただの黒い山だった。
夕方仕事を終えて、楽器を搬出後、大渋滞の中、東京に帰ってきた。

河口湖にて

河口湖のイベントホールで、ヴァイオリニスト・加藤知子のサマーセミナーが行われているのですが、最終日はガラ・コンサートということで、先日仕上がったMODEL-Lを持ち込み。
久しぶりの加藤知子は元気そうでした。
搬入が終わった頃に、わざわざ会いに来てくれて、「レコーディングでいろんなところに行ったね」など昔話に花が咲きました。

ピアノを起こさなくてはならなかったので、スタッフも数人同行しましたが、この帰省ラッシュの中、すぐ東京に帰らなければならないので、焼き肉を食べさせる事にしました。結局高くついたかな(笑)

ピアノのオーバーホール

朝9時からホールに入って、オーバーホール作業のチェック。
我々のスタッフは年間何十台もオーバーホールをするので、慣れたものだ。素晴らしい仕事をする。

タカギクラヴィアに入社した技術者は、まず先輩から徹底的にオーバーホールを叩き込まれます。
スタインウェイの工場というと、難しい顔をした老職人達が神業のような職人芸で、コツコツ、ピアノを作っているように思っている人が多いですが、工場見学をした人が驚くのは、殆どがおばさんや、お姉さん、季節労働者などで作業していることだ。
色々な国から集まってきた様々肌の色の人、言葉もあまり通じない人までいたりする。
そうやってともかく形になったピアノを、最終仕上げのセクションが、楽器として仕上げて行くわけだが、この最終仕上げのセクション以外は、殆どが冶具に合わせて部品を取り付けていくような作業が多いので、意外と簡単なのである。

しかしオーバーホールは殆どが手作業になるので、一連の工程を覚えるまで相当の年数がかかる。工場でラインに沿って新品を組み立てるより余計な手間が多く、一台一台作業内容も異なるので時間もかかる。ともかく、何台も何台もオーバーホールを経験していくしか上達する術はない。

ここで、面白いことがわかる。男の子は何故か、こういったコツコツ手作業は向いてない人が多い。やたらと、結果を急ぐばかりに雑になる。こんな時黙々と、作業を続けられるのは女性である事が多い。
なるほど、工場に行くと、昔から女性が多いのも納得できる。

さて、今回の作業もできばえが良いので、ご褒美にお昼は旨いものを食べに行くことにした。昨夜の京料理が忘れられず、今日のランチは平安神宮の近くの六盛の手桶弁当を食べた。
皆を京都に残し、私だけ京都駅19時45分発の「のぞみ」で東京にひとまず帰り、明日からのレコーディングの準備だ。

松江から京都へ

昨日で、松江のジャズフェスティバルも終わり、宍道湖のしじみも腹いっぱい食べた。(何と、ホテルの朝食の洋食メニューのパンにも、もれなくしじみの味噌汁がついていた!)

一路、トラックで京都に向かう。京都組のオーバーホールは、すでに全弦の交換も終わり、仕上げに向かって順調に作業も進んでいるらしい。今日は月曜日で休館日なので、作業もお休みをして、京都の個人のお客さんの家を回るスケジュールを入れたようだ。

我々が京都に着くのは17時頃の予定なので、今夜は京都市内に繰り出して、スタッフに京料理をご馳走することにした。
予定通り17時頃ホールに到着。搬入口にトラックを置き、電源をお借りして庫内のエアコンを切り替えた。
これで、このトラックは18日の早朝までピアノごと留め置きだ。
さて、せっかくの京都だから、リクエストもあって、先斗町に行くことにした。納涼床で食べる京料理最高。

松江城国際ジャズフェスティバル2007

朝から猛暑の中、松江城天守閣手前の二の丸広場仮設ステージにピアノを上げた。
第1回、松江城国際ジャズフェスティバルには6組の著名ジャズアーティストが出演する。
昨夜、ホテルの部屋で、テレビを付けたら、早速放送していたので、こちらではなかなか盛り上がっているようだ。
10、11、12日の3日間の催しの中で、今日と明日がピアノの出番である。
猛暑の特設ステージで、しかも野外。16時~19時、19時~21時の2ステージで2組のアーティストが出演する。
朝9時から夜9時までの約12時間、ピアノは野外仮設ステージに出しっぱなしになる。

今日の松江市は今年の最高気温の36度を記録する猛暑。
持参した温湿度記録計をにらみながら、ピアノの状態把握に忙しい。
気温は午前中にすでに36度を記録したが、幸い湿度は36%くらいを推移しているので、まだ救われる。
当然予測していたことなので、朝9時~11時に頂いた調律の時間は、何もしない。ゆっくり楽器があったまるのを待つ。
みるみるピッチは上がり、オクターブがうなりだす。しかし何もしない。ここで調律をいじると、後が面倒なことになる、
結局合わせても合わせても狂ってしまって、リハーサルや本番の時間にも再々調律しなければいけなくなって、周りに迷惑をかける割には、殆ど演奏中に狂ってしまう。
充分環境に楽器が慣れて来るまで待ってから手を入れるに越したことはない。
こんな時に大慌てをして、精密に割り振りからやり直していたりしたら、きっと大失敗をするだろう。
1時間ほどで、ピッチは441HZから444HZくらいに上がったりさがったり、しかも全体にではなく、部分的に狂う場所が違うから
始末に負えない。
本番が何時間後で、その時の温度湿度がどのくらいになるかを予測して、仕事をしなければならないので、ここは経験の見せ所。

それにしても、こんな環境のところにスタインウェイのフルコンを持ち込んでいるのを見たら、コンサートホールの保守管理担当者はびっくりして、腰を抜かすかもしれない(笑)
「ピアノはデリケートな楽器なんです。誰にも触らせてはいけません、壊れます・・。」こういって脅かす業者や調律師は、修理ができないか、「私(当社)しか触ってはいけません」と、結局独占するための口実に、やたら過剰な保守を押し付けているだけである。
そんな普通に使ってすぐ壊れたり、極端に保守管理が難しい商品を貴重な税金で買うものではない。

では、スタインウェイって、そんなに壊れやすいものなのか?
結論から言って、5億円のストラディバリウスでも、ケースに入れて
どこにでも持ち運んでいるでしょう?いくらピアノは張力が強いと言っても、ストラディよりは丈夫。
2700ステージを超える、あらゆる環境で培われてきた我々の豊富なキャリアは、「どうやったらスタインウェイが致命的に壊れるか・・」そんな事も判っているから(笑)



地獄のツアー出発

いよいよ松江~京都~大坂、真夏の、お盆大渋滞ツアーに出発した。
松江組は朝5時半渋谷出発。第2班京都組は10時渋谷出発。
我々松江組は厚木、岡崎、刈谷で大渋滞に巻き込まれ、松江に到着したのが午後8時頃。
しかし何と後から出発した京都組も、殆ど同じ時間に京都に着いたらしい。
こちらは、豊田からトリトンを通って、東名阪、西名阪、大坂湾岸から中国道に抜けたのが正解だったようだ。
今夜は、明日から始まる松江国際ジャズフェスティバルの前夜祭パーティで、しっかり飲んで、宍道湖のほとりのホテルでぐっすり。

銀座 Apple Store

いよいよL君のお披露目。アキコ・グレースのソロ・ライブだ。

ジャズの場合、フルコンよりB型のほうがバランスが良い場合がある。
ソロだと全てのパートの音域を1台の楽器でカバーしなければならないので、フルコンのほうがよいけれど、モダンジャズの基本、ピアノトリオはベースも入るので、必ずしもフルコンを必要としない。
アドリブ・ソロの部分は仕方がないとしても、B型くらいのほうが見た目も含めてバランスが良い。
最近は持込の範囲が広がったので、貸出専用の、より小型のスタインウェイも必要となり、昨日の日記に書いたL君のデビュー及び、チェックの日となりました。

銀座4丁目交差点の1ブロックとなりにあるMACのApple Storeは、流石に近代的な内装です。
総ガラス張りのエレベーターはシャトルといって、階数を押すボタンがありません。つまり各階停止で、常時自動的に動いているのです。
銀座通りの歩道でL君の鍵盤を下にして、ピアノを起こし、全ての足を外して、総ガラス張りのエレベーターに乗せて3階へ。
キャパ80席のとてもゆったりした固定椅子で、ちょっと豪華な映画館風のスペースです。
しかし普段はワークショップなどに使われていて、音楽をやる空間ではないし、案の定バリバリに鳴るように仕上げていったのに、厚い絨毯で吸音されたこの部屋では少し寂しい音になってしまったので、やむなくPAを入れてもらった。
なにせ響板が新品なので、音も若い、若い(笑)
ピカピカの中身を覗き込み、皆が綺麗ですねぇと言う。これから響板が落ち着いてきたらどうなるか楽しみな楽器です。

この楽器、今月は河口湖のイベントホールで行われる、ヴァイオリニスト:加藤知子のサマーセミナー・コンサートにも持って行きます。
このイベントホールは入り口が狭く、ここもやはりピアノを立てないと入らないところなので、早速出番です。
今度はばりばりクラシックですからどんな音になるやら。

響のレコーディング

サロンにて、響のレコーディング。使用楽器はローズウッド君。
「LOVE 30」という芝居の中で使われる曲で、すべて響のオリジナルです。
昨年もすでにテーマ曲はレコーディング済みですが、今回はお芝居がまた別のシチュエーション&出演者なので、新たに何曲か作り直すとのこと。モニターを聞いていたけど、なかなか良い曲に仕上がったね。
14時頃から録り始めて22時頃までに録音は終わったけれど、その後編集なので、結局深夜2時頃までかかってしまった。
私は録音の合間を縫ってサロンとスタジオを行ったり来たり。
というのも、明日は先日NYから届いたNYスタインウェイMODEL-Lの初お披露目なので、調整に大忙し。
MODEL-Lは全長180cm(ヤマハのC3サイズくらい)で、今までエレベーターに入らなかったところでも持込ができる、アーティスト達から切望されていた小型のスタインウェイです。

2ヶ月ほど前にコネティカットで見つけたこのLは、1978年式のモデルで、30年ほどスタインウェイのファクトリーに勤めていたおばーちゃんが持っていたものだ。
1978年というと、会社の経営が思わしくなくなったスタインウェイファミリーが、CBSに会社を売却してからすでに6年ほどたっている。
テフロンアクション満載の雑な作りで、製品のばらつきが多くて、評判が悪くなった頃の時代ではあるけれど、実はまだ腕の良い職人が残っていた頃で、1984年以降の極端なモデルチェンジをしてしまったスタインウェイよりは好きだ。
脈々と受け継がれてきた伝統のスタインウェイの設計をまだ殆ど残しているので、雑な部分や、好き嫌いが多いテフロンアクションなどを調整、交換してあげればあのNYサウンドを取り戻す。
この辺は私の専門、得意技(笑)

この楽器は、うまい具合に保存状態が悪く(笑)、超乾燥状態の中に長年置かれていたようで、響板は見事に割れ、床が見えるほどの隙間が3本も入っていたお陰で安く手に入った(笑)
中途半端に綺麗な楽器より、ここまで響板にダメージがある楽器のほうが思い切って理想のオーバーホールできるからいい。
さてさて、オーバーホールの内容は、まずは響板の交換。
戦前の素晴らしかった頃のスタインウェイは響板にWhite eastern spruce を使用していたけれど、乱伐の為に、現在ではsitca spruceに変わってしまっている。ところがカナダでは現在でもWhite eastern spruceがとれるので、腕の良い職人達はそれを使う。勿論含水率5%で。
さらにピン板と駒も新しく交換。詳しい内容はここでは省くけれど、ローズウッド君とほぼ同じ修理内容。
これで、私の目指す理想のスタインウェイになるわけだ。ここまで約一ヶ月。この状態で空輸。
アクションや、製音、仕上げの肯定は日本でやるので、こんな大作業の割には早い。
2週間ほど前に成田に着いて、ちょこちょこ手を入れていたけれど、ようやく仕上がってきたので、明日のアキコ・グレースのライブに持っていくことになった。楽しみだ。