朝からプライムサウンドスタジオフォームの調律。
このスタジオのB型は弊社でピアノ保守管理を徹底しており、昨年全弦交換をしてから、状態も落ち着いてきて、抜群のコンディションになってきた。
コロコロと珠を転がすような次高音は、まさにニューヨークスタインウェイならではの麻薬だ。
ここのところピアノの録音が続いているのか、ほぼ毎日のように調律依頼が入る。
調律の変化も微調整程度で推移しており、スタジオのピアノとしては理想的な状態が続いているのが嬉しい。
11時半にアップして会社に戻り、アキコ・グレース達を連れて、市川の芳澤ガーデンへ行く。
ここは1000坪もある綺麗な庭園を持つ美術館なのだが、7月にワインなども振る舞ってジャズコンサートをする企画をたてたので、その打ち合わせ。
フルコンの搬入、搬出経路も楽で、簡単にピアノが入ることがわかり、この美術館で行われるコンサートもこれからグッと幅が広がると大喜びされた。
アーティストにとっても、今までこういった場所でコンサート依頼があっても、満足な楽器で演奏することなど奇跡に近い事だったし、調律師はもっと大変だった。
こうしてピアノを持ち込めば、全てが解決するわけだ。
夕方6時からは、六本木のミッドタウンで行われる映画の試写会に行く。
「ラフマニノフ」という題名のロシア映画で、勿論ピアニスト・ラフマニノフの半生を描いた作品らしい。
アメリカに亡命したラフマニノフとスタインウェイの関係がたくさん出てくるので、私に是非見て欲しいと招待された。
1873~1943年に生きたラフマニノフは、まさに私の研究テーマだったので、楽しみに出かけた。
試写会室は普通の映画館とはかなり違って200席もないので特等席だ。
おすぎさんも来ていたけれど、彼のような映画評論家はこういった純粋にクラシックを題材にした映画をどんな風に評価するのかな?
さて結論から言うとこの映画、私にはとても面白かった。
1920年代アメリカのクラシック業界。カーネギーホール。
スタインウェイ社がバックアップしてコンサートを企画し、スタインウェイを積んだ列車で練習しながら全米ツアーをやる。
(これは当時、パデレフスキーや、ラフマニノフが実際にやっていた。)
あまりの過密スケジュールで自分の作曲ができずに、悩むラフマニノフ。ロシア革命・・。
あるとこは誇張され、あるとこは省かれてはいるが、音楽的な面よりも恋愛・嫉妬等、人間ラフマニノフの新しい面が発見できる興味深い映画だった。音大生必見。
技術屋からの感想。
あらゆるところにスタインウェイピアノが登場するが、それは鍵盤蓋などのロゴだけで、実際にはどこにも本物のスタインウェイが出てこないところも興味深い(笑)
ロシアとスペインで撮影されたらしいから、仕方がないか・・。
この映画にぴったりのピアノがうちの会社にはあったのにね(笑)
試写室からの帰り道、道行く外人がみんなロシア人に見えて、話し声がロシア語に聞こえる・・。