カプースチンン録音最終日

一昨日から泊まっている栃木佐野インターのルートインは結構良いよ。
駐車場は広いし建物は綺麗だし、大浴場はあるし朝ごはんは充実してるし、ルートイン偉い!

昨夜は近くのレストランでしゃぶしゃぶを打ち上げがてら皆で食べて大盛り上がり!
実は昨夜「明日9時にホールに入るなら、2台で行ったり来たりも無駄だから」という理由で、トラックはホールに留め置きしてみんなの車に便乗させてもらった。
案の定、帰り道に晩御飯を食べる事になって、うまい具合に飲める事になった、しめしめ(笑)
そんな訳で、今朝はエンジニア組と一緒にホール入り。

ピアノをチェックすると、ここのホールも、夜になると高音部のオクターブが下がり気味になっていたのに今朝は戻っている。
気になって昨夜上げた音だけが更に上がっていたので、その音だけ
下げた。
飛び出したり引っ込んだり鳴きむらのある音を揃えておしまい。
あとは安定しているので、本当に楽。
この1週間いじめられてきたからね・・(笑)

それとは裏腹に、ピアニストのKさんはもう大変。
めちゃくちゃ音数の多い曲を昨日からず~っと弾き続けだからふらふら。本当に大変な曲だ。
「もう限界だ、体力が・・」と言いつつも、殆ど休みなく弾き続ける。
お昼は体力回復の為に、近くの万世に行ってステーキを食べた。
そのうち、上州名物の雷が鳴って録音中断。
後世に残る記念すべきカプースチン新曲世界初録音も刻々と時間が無くなってきた。

20時20分、ドクター・・ではなく、ディレクターストップ!
まるで24時間テレビ・マラソンピアノ演奏記録に挑戦のようなレコーディングもついに終了。
お疲れ様でした!
搬出は私1人で、8分で終了、東北道に乗って、1時間10分で渋谷に戻ってきた。
楽器をサロンに降ろして、本日終了。

カプースチン レコーディング

昨夜20時50分に栃木県岩舟町のコスモスホールに楽器を搬入した。渋谷を出発したのが19時30分を過ぎていたので、1時間半かからなかった。C2の高速ができたお陰だ。

岩舟町周辺は大雨で急いで搬入しなければならなかったので、スタッフを連れてきて助かった。
おまけにホール下手のドアが思ったより狭くて、意外と搬入にてこずったけれど、何とか21時には間に合った。
帰りは録音スタッフがいるので、ちょっと手伝ってもらえば、1人で搬出できそうだ。

今日は昨夜とうって変わって快晴だ。
岩舟にホールがあるらしいということは聞いていたけれど録音で来るのは初めてだ。
キャパは600位にみえるが、バルコニーがぐるっとあって、700人ちょっと入るらしい。
本当に日本は音楽ホールが至る所にある。
こんなにホールがあるのは世界で日本だけの現象だ。

今日は久しぶりにピアノ・ソロ。調律は9時入り11時アップ。
ピアノ1台ってなんて楽なんだろう!
ここのところの鬱憤を晴らすべく念入りに調律。
それでも時間が余ってしまって余計な調整までやったりする。
時間があるって夢のようだ(笑)
ピアニストのKさんと譜めくり役の奥様登場。
カプースチンは2回目の録音。
前回は2年前の徳島で「魔の15日間CD5枚連続録音」の時だった。
今回の曲は殆ど新曲で、カプースチン自身も未発表のものもあり興味深いけれど、本当に音数が多くて御年70歳のカプースチンも頭の中に楽曲は生まれてきても実際はすらすら弾けないと言うのもわかる。

ピアニストのKさんは難曲に頭を抱えているけれど、ここのところ想定外の仕事ばかり続いて自信を打ちのめされていた私は、久しぶりの1台ピアノに時間たっぷり。これこれ、これがいつもの仕事(笑)
楽屋でモニターしながら、ようやくこの1ヵ月振り返って日記をしこしこ書いています。
さて、そろそろ今日の終わりの時間、久しぶりに余裕の1日でした。






録音2日目

後半戦に突入!
調律は11時半アップ。今日は撤収があるので、20時前には終了しなければならないから、余り時間がない。
2台ピアノで、ラフマニノフを録るというのに・・・。
昔のように、レコーディングといえば最低3日間とっていた頃が懐かしい。

調律が終わってすぐに録音開始。
録りはじめて、中井さんからお呼びがかかり、ハウスピアノの方、ピアニシモの連打をもっと効かせて欲しいと要求があったのでチェックに入る。
あれれ・・?先週の保守点検で戻したはずのバックチェックの咥えが広げられている。これじゃピアニシモの連打は効きにくいはずだ。
2台ピアノの調律と音色調整に気を取られ、先週保守点検で直したからとすっかり油断していた。
少し時間をもらってタッチ調整をやる。
格段に弾きやすくなったと中井さんも満足。

早速スタッフが事務所に行って、この1週間でピアノをいじった調律師を調べたところ、犯人はほぼ特定できた。
東京で個人でやっている人で、店のホームページには色々な経歴が書いてあった。
アクションの研究もしているようで、スタインウェイとヤマハとの違いや、あなたのピアノも改造してあげますよ!みたいな事が書いてある。
スタ戦の本にも書いたとおり、ここミューズパーク音楽堂のスタインウェイはサラブレッドであり、この楽器で良い仕事ができない調律師は、本人が良かれと思っている知識であっても、何かが間違っているのだと私は思う。

いずれにしても、公共の楽器を我が物のように改悪しないでもらいたい。非常に迷惑だから。
そんなに実験をしたいのなら、自分でスタインウェイのフルコンを買って、持ち込むべきでしょう。
自分の仕事や腕に、そのくらいのお金も投資しないで、他人のふんどしを借りて汚したまま返すような事をするような調律師に、人の悪口言う資格などありません。
ともかく本番中なので、こういった事で余計な時間を取られたくない。録音再開!

昨日も今日もお昼は店屋物の出前。
いつものようにマジョラムのカレーを食べることすら出来なかった(笑)
今日の後半は連弾なので、ハウスピアノは後ろにどけて、F1のみ、真ん中において録音開始。
ピアノが1台になって、何と調律の楽な事か(笑)
ここのところ、6台、3台、2台と、マルチピアノが続いて、少々疲れ気味。
中井&武田ペアも少々疲れてきたけれど、F1の鍵盤が軽いので、
随分助かったみたいで良かった。
20時には無事終了!記念撮影をして、お疲れ様!

我々は楽器を搬出した後、横浜の工場に直行。
車を乗り換えて第三京浜の環八出口にある「エルアミーゴ」のステーキにたっぷりにんにくを乗せて胃袋を満たし、渋谷に戻ったのが夜の1時半。
明後日から2日間、栃木県の岩舟にあるコスモスホールでカプースチンのレコーディングに入る。
今回は前日入りなので、明日はレコーディングで使用する楽器の調整をやる。


プロアルテ・ムジケ レコーディング

昨日、江口君がチャイコフスキー、ラフマニノフを弾いたF1をトラックに積んで、朝6時半に雨の渋谷を出発。
今日と明日は秩父ミューズパークでニューヨーク・スタィンウェイによる2台ピアノのレコーディング。

F1のお相手は、ミューズパークのNYスタインウェイを使うことにした。
ピアニストの中井&武田さんとは2枚目の録音かな?
今回はラフマニノフがメインで、バッハナーレなどアメリカ人作曲家の曲もあるので、NYスタインウェイを使ってみたいとのご要望。
そういえば、ミューズパークのNYスタインウェイとF1という組み合わせは、2台ピアノのコンサートではやった事があるけれど、レコーディングは初めてだ。

朝9時に搬入してNYを2台並べてみると、とても面白い。
F1はジャズ6連弾から、昨日はチャイコ、ラフマニノフのソロなので、当然パリパリのF1仕様6速ミッション。
対してミューズパークのNYは、何とまたまた飼い犬のようにおとなしくなってしまって、4ドア、カローラAT仕様。
製造番号もほぼ近いこの2台のピアノも、お嫁に行った先の教育でこうも人が変わってしまうものかと興味深い。
とりあえずざっと調律をあわせた頃にピアニストのお二人が登場。

こうして同じ条件で楽器を並べてみると、その差は歴然。
実に面白いのでさっそく弾き比べてもらった。
F1はコントロールが難しいので最初はびっくりするけれど、いろんな事ができることがわかってくると、音楽的に弾きやすいという意味がわかってくる。
飼い犬のようにおとなしくなってしまったハウスピアノは、最初は普通に弾きやすいと思うけれど、この甘ったるい音がいかにつまらない倍音しか出ていないかに気がつく。

そんな事より、2日間で2台ピアノのレコーディングをしなければならないので、調律師は2倍以上忙しい。
早速このキャラクターの違う2台を溶け合うように、それぞれ短時間で歩み寄らせなければならない。忙しい(笑)
4ドアセダンのAT仕様をとりあえず、2ドアGT5速クロスミッション位へのチューンアップに1時間。
F1のあり余る1000馬力のパワーを、700馬力くらいにディ・チューンするのに15分。
後は音を録りながら、少しずつ歩みよる事にした。
しかしたったこれだけの作業で、もともとは殆ど同じ楽器。
どんどん音が溶け合ってくるから面白い。
これが、NYとハンブルグならまだしも、NYとベーゼン、ハンブルグとヤマハなどでは、永久に音は溶け合わない。
ベーゼンとヤマハ・・・これはまるで水と油。
でも最近ヤマハはベーゼンを傘下に入れたから、ヤマハとベーゼンはそのうち溶け合うかも。ヤマゼンか(笑)

馬鹿な事を言ってないで、録音を始めよう。
粒立ちのはっきりした、細かいニュアンスがはっきり聞こえてくる。
これが甘ったるくて音の重いピアノで録音すると、音が全部団子になってしまって、うるさいだけになってしまう。
やはり、ラフマニノフにはNY しかありえない。
6台ピアノから2台ピアノになったので、ぐっと楽になったけれど、それにしてもこのラフマニノフはとても音数が多くて難しい曲。
しかも今回は2日間と言う短い日程だ。朝9時に搬入して、通常は11時アップだけど、ピアノは2台。
調律に3時間は欲しいところだけど、
練習やマイクチェックは早く始めたいだろうから、11時半アップにした。
後は音を録りながら少しずつ直していく事にする。
プレイバックを聞いてる間に直しも2台分やらなければならないので、大忙しだ。

秩父の山にあるミューズパークは気温と湿度の変化が急激に現れるので、ピッチも急に上がったり下がったりする。
しかも1台は大屋根を外してあるので、それぞれの楽器で受ける温度が違うため、いくら同じ種類の楽器であっても同じようには変化してくれないのでこれまた厄介だ。
それでも息のぴったり合ったお二人だから、この過酷なスケジュールをどんどんこなしていく。
一緒に来たスタッフが19時頃帰らなければならないので、駅まで送って行った。往復20分ちょっとですっ飛んで戻ってきたけど、案の定、夕方の冷え込みで2台のピッチが合わなくなってきた。
最後の調律直しに入って、20時半に本日は終了。

今夜は全員ルートインに宿泊なので、ホテル前の、やかましい親父がいるので有名な、甲子という居酒屋で晩御飯。
また明日!




国立博物館

朝8時に楽器を積み込み、上野に向かう。
日曜日なので道はガラガラ、15分で到着。
今日は国立博物館内で、江口 玲ソロ・コンサート。

楽器を9時に入れて、11時アップで調律。
会場はすべて大理石に囲まれていて風呂桶のように響くし、音の返りも固い。
通常は窓がある面をバックに横長で使用しているそうだが、今回はコンサートホールのように縦長に使うことにして、全ての椅子の位置を変えてもらったら、かなり自然なバランスで聞けるようになった。
3日連続ここ平成館でのコンサート、昨日は若林顕さんだったのだけど、腱鞘炎のため1ヵ月のドクターストップがかかって、急遽キャンセルとなったらしい。
2日続けてアキラさんのピアノ・ソロだったのに残念。

持ってきたF1は、今日のプログラム曲のチャイコフスキーやラフマニノフにはとても良く合うので楽しみだ。
まだまだピンが超硬く調律は大変だけど、昨日交換したアグラフはもう弦も落ち着いていて、何事もなかったかのように雑音は消えてくれた。演奏会の前日に弦を外すなどと言うとびっくりされるけれど、上手くやればそれほど怖がる事はありません。
それより音楽的に気になるノイズは極力避けたいですから。
F1も響板とピン板を交換してそろそろ半年。
だいぶ落ち着いてきたので、今年いくつか予定しているコンチェルトやレコーディングが楽しみだ。

1時15分開場。250席くらい用意された椅子はすでに満席。
今日のコンサートでは、それぞれの曲を弾く前に江口君が解説をするのだけれど、本当に良く勉強していると言うか、いろんな事知ってるね~!と感心。
1ヵ月くらい前に映画「ラフマニノフ」の試写会を見たが、まさにその頃の話なので、今日のお客さんはとても勉強になったでしょう。
圧巻のラフマニノフが終了して第一部が終了。
江口君は16時にコンサートが終わったらそのまま18時羽田発の飛行機に乗って福岡に行き、そのままリハーサルなので、今日は終演後に楽屋でのお客さん接待はせず、どうやって17時45分までに羽田に着くかばかり考えていた(笑)

私は今日も年度末で人が足りないので、16時に六本木に行って、
安藤和津さんのパーティで使うピアノの調律に行かなければならない。サブちゃんが朝ピアノだけは搬入している。
第二部の1曲目、チャイコフスキー「花のワルツ」終了と共に抜け出して、六本木に向かった。会場では既にいろんな出演者がサウンドチェックをやっていて、先ほどのチャイコフスキーとは別世界の60年代グループサウンズだ。
「なんでも鑑定団」でおもちゃの鑑定をやっている北原照久さんとか、
ワイルドワンズとかが「思い出の渚」などの懐かしい曲をリハーサルしていた。

オーケストラが練習している中で調律させられる事はよくあるけれど、ピアノの前にPAのスピーカーを置かれて、がんがんバンドの練習をしている中で調律をしたのは初めての経験だ。
なにせ時間がないらしいのとそれを仕切る人も現場にいなくて、調律師なんてどうでも良いらしい(笑)
それでもこっちは余りにも懐かしい大好きだった曲を本人が横で弾いているので、ひそかに一緒に歌いながら取り合えず遠慮しながらそこそこに調律を終えて帰った。
あのあとどうなったんだろう(笑)

倉敷終了

朝7時半頃、ホテルの大浴場でサッパリして部屋に帰ろうとしたら途中の廊下でサブちゃん達とばったり。
彼らはこれから出発らしい。
私達はこれから朝ごはんを食べて、ロビーに9時半に集合して出発だ。

狭いトラックの運転席に3人で700キロを走って帰るのは疲れるので、私だけ岡山駅から新幹線で先に帰る事にした。
と言うのも昨日痛めつけられた楽器の中には、明日からクラシックのコンサートやレコーディングのスケジュールが連日入っているものがあり、今夜は楽器を元に戻すために遅くまで働かなければならないので、少しでも体力を温存したいからね。
岡山駅でトラックとおさらばして、のぞみに乗って、14時半頃には東京に着いた。
車に乗り換えて横浜工場に行って、サブちゃんを待つ。
18時頃にやっとサブちゃんが「混んでたよ~」と言いながら戻ってきた。
ここで1台降ろして、明日、別の現場で使う楽器を積んで、渋谷に向かった。

結局20時頃デュトロ班も同時に渋谷に到着。
ここで計4台降ろして、私はさっそく明日使うF1の調整、というより修理だ。
ジャズの6連弾ともなると、ステージ上は音の洪水になる。
離れた相手の音が聞こえないので、だんだんぶっ叩くようになるし、誰かが拳や肘打ちを始めると、あっちこっちでそれが始まる。
まあ、お客さんはそれが楽しいのだけど、こっちは後が大変(笑)

ピアノには何が起こるかというと(興味ありますか?)、1番多いのがハンマーヘッドの膠切れ。
戻ってきた楽器を弾いてみると、あっちこっちでパチパチ、カチカチ。
私は個人的には膠は余り好きではない。
乾燥して強打されると、膠自身が割れるからだ。
ハンブルグは膠で、ニューヨークはボンドなので、ハンブルグのほうが圧倒的にパチパチ膠切れを起こす。
他には、余りにも強打されたハンマーは腰が砕けてパフパフの音になったり、ペケペケの音になったりするので、鳴りむらが酷くなる。
事前に接近は少し遠めに取ってあるので、ジャックテールが折れるような事はなかったけれど、仮に折れたら悲惨だ。
ハンマーは弦を突き破ろうとして、弦が切れるかハンマーシャンクが折れる。
あらゆるフェルトやペーパーパンチングはつぶれ、タッチ調整は殆ど狂う。
恐るべし6台ピアノ(笑)

昨年しっかり勉強させていただいたので、実は今回、CD199も耐久テストをかねて、参加させていた。
本当は組み上げたばっかりで、相当弾き込まなければならないけれど、しっかり叩かれて目覚めたCD199は、なんとすっかり落ち着いて帰ってきた(笑)
ピアニストの皆さんは誰も、この中に1922年の楽器が混じっていたなんて知らないから、先入観なしでぶっ叩いていただいてくれたが、それに耐えたCD199は実に頼もしく思えてきた(笑)

さてさて、夜中までF1の調整をやっていたが、どうしても気になるアグラフのノイズがあるので、迷ったけれど思い切って気になる2個(音数で言えば2音だけれど、弦の数は3本)を新品に交換する事にした。
明日はマチネでいつもより本番が早いため、新品の弦を張らずに今までのものを再使用する。
この弦は昨年の9月、響板張替えの時に交換しているので1番落ち着いている時期だ。
案の定、全ての作業がおわりピッチを上げても弦は落ち付いている。
遅くまで手伝ってくれたスタッフに感謝しつつ、明日朝8時に楽器を積み込む事にする。





ジャズ6連弾 in 倉敷

朝9時にホールに入る。
12時までの3時間でとりあえず6台の同調だけは取っておこうと調律をはじめて、ホールのスタインウェイに取り掛かった時だった。
バ~ンと嫌な音をたてて次高音の弦が切れた・・。
やはり予想していた事が起こったわけだ。

製造番号50万番代、1987年の楽器で何本も弦が切れた痕があり、すでに全弦交換の時期が過ぎている。
ホールの舞台さんも、あ~また切れましたか・・・と。
フレームには何人もの著名なピアニストのサインが入っていて(私は基本的にピアニストのサインがフレームに書いてあるのは好きではないが)、きっと多くのコンサートに使われてきたのだろう。
楽器自体は素晴らしい素材で、持って帰りたいくらいだった。
弦を交換して、少し調整をすれば大人気の楽器になる事は間違いない。
しかしきっと古いから・・という理由でそのうち二束三文で処分され、ピカピカのプラスチックのような楽器に取って変わるのであろう(笑)
弦やハンマーだって消耗品だというのに、新車を買ってタイヤが磨り減ってきたから車ごと買い換えるみたいな話だ(笑)
倉敷市の皆さん、手放す時は是非譲ってください(笑)

とは言っても、今日のところは弦が切れてはどうしようもないので、1番被害の少ないポジションに配置する事にした。
こんな事をしているとどんどん時間がなくなってくる。
照明や音響さんも仕込みやチェックをやりたそうだし、これから調律する楽器の真横に照明の点いたバトンが降りてくる。
まるでファーストフード店のフライドチキン状態に楽器が暖まる(笑)。
彼らには彼らの仕込みの作業があり、調律師だけの時間ではないのでお互い譲り合って進めなければならない。
ステージの上は6台のフルコンで埋め尽くされて、ピアノを他に逃がす余地もない。
6台ピアノは、普通のソロや2台ピアノとはまるで別の世界が繰り広げられる。
今回はあまりにも時間がなさすぎるので、リハーサル終了後に直しをやる事にして、ひとまずお昼。

6名のアーティストが勢ぞろいしてリハーサル開始。
今回までは、昨年と同じプログラムなので慣れたものかと思いきや、半年以上経っていて皆さん結構忘れているのか、延々リハーサルが
続く。
開場時間がどんどん迫ってきて、これはもう限界!という時間にスタッフを走らせて、調律の時間をくれ~と騒ぐものの(笑)、ステージ上もそれどころではないみたい。
やっと、調律お願いしま~す。の声がかかったのが、開場30分前。
6台を30分で直すということは、1台あたり5分!
しかも時間がかなり押していて、そのうち開場しま~す。
お客さんがぞろぞろ入って来た。
これではテストブローもできないからもう笑うしかない。

クラシックのコンサートではなく、スタインウェイを6台並べて拳でぶっ叩くのも、お客さんからすれば面白いのかも知れない。
昨年はそれに耐える調律をするぞ~!と燃えて結果は出せたけれど、今回のように時間がなければ調律は責任は持てないので、あきらめて引っ込む事にした。

あとは客席で聞く事にして本番開始。
1部の途中位から1音ひどく狂ったユニズンがあったので、休憩の場面転換の時にさすがに直しに入ったけれど、その後、楽器には特にトラブルもなく、調律もやってない割にはまあこんなものかな、で終わってやれやれ。裏方は大変だ(笑)

2年前に6台ピアノの初回を川崎でやった時は、ヤマハが6台全てを持ち込んで調律師も数人来てやったらしいけど、それでもひどく狂ってきて途中でスペアのピアノに取り替えたりしたらしい。
なぜか翌年からヤマハは降りてしまった。
何だかその理由がわかるような気がする(笑)

倉敷に出発

さぶちゃんのトラックは昨日、渋谷で3台、その後、目白のフォーシーズンスに貸し出していた楽器を夜10時に搬出し全部で4台を積み込んで、今朝出発したみたいだ。
我々は、デュトロにフルコン1台と椅子やその他の荷物を積んで、スタッフ3人で渋谷を5時に出発した。倉敷までの約700キロ、途中大した渋滞もなく順調に進んで、搬入時間の17時前にはホールに到着。
さぶちゃんのトラックも既に止まっていて、扉が開くのを待って搬入開始。

今回は5台持ち込んで、1台はホールのピアノを使用するため、ピアノ庫でチェック。
それにしても、今夜は20時までに作業を終えて退出しなければならないらしい。
昨年は前日朝から入れて夜10時頃までたっぷり調律の時間をもらったけれど、今回は極端に時間がない。

5台のピアノを搬入するのは大騒ぎだ。我々のデュトロは、50ミリの断熱材入りの冷蔵車にエアコン完備なので、温湿度対策は完璧だけれど、サブちゃんのトラックは普通のドライバンなので、丸1日冷え切った楽器4台を早くホールの反響板の中に入れなければならない。
デュトロから降ろした楽器は安定しているので、取り合えずこれから調律を始める事にしたが、それでも17時半を回ってしまった。
あと2時間半で6台は調律できないし、4台は冷え切っているから、調律しても明日またやり直さなければならないだろうし・・。
ともかく何台かピッチを揃えておくことにする。

その間にもステージ上には次々とピアノが組みあがって行き、足の踏み場もない位だ。
6台ピアノには椅子も6脚必要になる。
プレーヤーが好む椅子の高さは全く違うので、それぞれに名前を書いて演奏するピアノが変わる度に椅子も入れ替える。
譜面台も使う人、使わない人、その度に入れたり出したり。
椅子も並べてみると、こんなに高さが違う(笑)
あっという間に20時で本日終了。

先日福山でお世話になったブライトの西田さんが、友達の調律師の西尾さんと、天満屋(最近マラソンで有名)の企画担当の大井さんを連れて、見学に来てくれた。
夜は地元のビールの旨い居酒屋に招待してくれて、本当にお世話になりました!
明日はどうなることやら(笑)





録音最終日

4日間という最近では長丁場の録音も最終日。
今日はまず残っている1~2曲を録り、あとは全体的な最終チェックをして初日の録音で気になる部分があれば取り直す位だ。
朝10時にホール入りして、調律や音色を揃える作業を午前中一杯やったけれど、誰も来ない。皆、のんびりしているようだ。
そして、14時頃全員集まって、今までの気になっている箇所の部分録り。夕方、順調に全ての収録が終わって、東京に帰った。

サロンでは子供の頃から知っている、YちゃんのCD発売記念コンサートだ。長年ハンガリーに留学して、今年帰国した。
本番には間に合わなかったけれど、うまくいってるかな?

今回の録音はスケジュールを無理やりねじ込んだ仕事だったけれど、楽屋でもパソコンと携帯を使って、仕事ができるので、便利な世の中になったものだ。
未だに正月休みもできないけれど、早3月!
こうやって秩父ミューズパークの楽屋にいても、東京からどんどん今年も仕事が飛び込んできて、スケジュールのやりくりが大変だ。
レコーディングは待ち時間が長いので、お陰で溜まっていた日記も思い出しながら、どんどん更新できたので、遡って読んでみてください。






早くも録音3日目

今日も録音スタートは14時、ピアニスト入りが12時。
午前中はたっぷり時間があるので、ゆっくりピアノの調整をすることにした。
調律は殆ど安定してきたので、先にタッチ調整をする。
普段のコンサートでは、時間に追われて調律だけで精一杯だから、
じっくりアクションを見る余裕もないけれど、先日のコンサートで妙に反応が悪いような感じがしたところを、今日は全部やり直す事にした。

いつのまにやら、訳のわからない調整にいじくられていたアクションをじっくり見て、「はて、これをやった調律師はいったい何をどうしたかったんだろう・・?」としばらく考えた。
なるほど、打弦距離48ミリ、接近2ミリ、この辺までは本に書いてあるような、標準的な基準に合わせようとした気配がある。
次にハンマーとバックチェックの距離が近すぎると思ったらしく、ハンマーの銜えを遠くしたので、レピテイションスプリングが見かけ上、強くなってしまい今度はスプリングを弱めた、ということか。

この人は、これで標準的な数字になったと、満足したのであろうか・・?
結果として、連打は効かずメリハリの無い、モタモタした反応の悪いアクションになってしまった事に気づかなかったのだろうか?
鍵盤を大きく上下させないと連打が効かない。
つまりピアニシモで連打しようとすると、すととん、すととん、と音が抜けてしまう。
昨日までは、モニタールームで聞きながら、そういった箇所が出てきたら、プレイバックの間にちょこちょこ直して事なきを得たけれど、まったく
迷惑この上ない。

スタインウェイ(特にニューヨーク)は、一応マニュアルに基準値が書いてはあるけれど、ほとんど役にたたない。
昔、フランツ・モアに「NYスタインウェイの適正なる打弦距離は何ミリ~何ミリなのか」聞いたら、「それぞれのピアノで違うから、計ってみよう。」と言って、コンサート部においてあるピアノを片っ端から計った事があった。
計りながら、彼は「これは・・47ミリだ。え~こっちは45ミリだ・・。
おう!これは40ミリだ!」などと言いながら定規を持って大げさにびっくりして見せて、「でもこの数字がこのピアノの適正なる数字なんだ、こっちのピアノにはこの数字が適正なんだ。子供の顔が1人ずつ違うように、スタインウェイも1台ずつ違うけど、みんなスタインウェイというファミリーなんだよ」と言って笑ったシーンが何だか妙に面白くて、よく思い出す(笑)
これは簡単に言うと、「スタインウェイは手作りなので、個体差が大きく(精度が低い)とても基準の数字などで調整できない」という事だ。

当時、私はこのスタインウェイの「手作りによる加工精度の低さ」を目の当たりにして、びっくりした。
天下のスタインウェイは、杵淵さんの言うように100分の数ミリ単位で作っているものだと思い込んでいたからだ。
しかしそれは、もっと深い意味を持つ事がわかってくる。
工場ではいろんな冶具を使って機械的に組み立てていくが、最終的に楽器として仕上げるセクションや調律師の担当は、調律・整音・タッチ調整が仕事。これは全て目で見えない、聴覚や触覚によるものだ。
数字には表せない、漠然としたスタインウェイの音色とタッチを求めて、各部を調整する。
仕上がった楽器に結果的には数字が残るが、素晴らしい出来上がりのスタインウェイの数値を計測し、それを当てはめて他のスタインウェイを調整しても、その音色とタッチが出来上がるわけではない。(ある部分を除いて)
限りなくアナログでアバウトだけれど、しっかりとスタインウェイの音色とタッチが体に叩き込まれてないと、出来ない仕事だ。

ミューズパークのスタインウェイにも、生まれながらの固有の数値があり、それに戻していくと、どんどん楽器が元気を取り戻してくる。
喉を締め付けて発声していたような音もだんだんクリアーになってきた。
よしよしこれだ、これだ・・。
またまた独り言で、ぶつぶつ言いながら(笑)楽器を仕上げていく。
楽器が元気を取り戻してくると、こっちの気分も楽しくなってくる。

今日も順調に録音は進んで、14時から始めたけれど、夕方には終わってしまった。今回はゆったりと4日間もとってある。
最近、こんな余裕のあるクラシックのレコーディングは、ユニバーサルレコードや、エイベックスでしか、 できなくなった。










秩父レコーディング2日目

昨日は大慌てだったけれど、録り始めてからは意外と順調に進んで、皆さんご機嫌だ。
余裕が出てきて、やっと内容がつかめてきた。

今回のエイベックスのレコーディングは、キュウ・ウォン・ハンさんのデビューアルバムで、テノールのようだったけれど実はバリトンで、内容はイタリア古典歌曲だ。
ピアニストかと思っていた人は実はイタリア人で、イタリア語の歌詞のチェックをする人だった。
何の情報もなく着の身着のままで飛び出してきたので、昨夜ようやく状況がわかって大笑い。

ミキシングルームになっている楽屋では、全員殆どのコミュニケーションが英語なので、まるでニューヨークでレコーディングしているみたいだ。
でも考えてみたら、メンバーは日本人と韓国人とイタリア人だから、
全員、英語は母国語ではない。これもニューヨークみたいだ(笑)

例によって歌のレコーディングはのんびり録るので、今日の録音スタートは14時から。
ピアニストはその前に練習をするので、調律は12時アップにして欲しいとの事で、私は9時にホール入りした。
何しろ、昨日は時間もないままピッチを440~442に一回で上げただけなので、今日は細かいところを見る事にする。

昨日は夕方から、だんだんピアノが鳴ってきて、皆さん満足していたけれど、私にはまだまだ不満だらけで、やりたい事がたくさんあった。
久しぶりに見るミューズパークのピアノは、またまたつまらない音に
いじくられていて(笑)、いくら歌伴とはいえ低音部など輪郭がわからない。
アグラフに弦は引っかかり、ジャンプする。
次回の保守点検で酷い症状のアグラフは交換したい。

使用頻度からすると、我がコンサート部貸し出し用の楽器の方が、よっぽど過酷な使用をしているけれど、アグラフがこんなに摩滅する事など
ない。
確かにアグラフの材質は昔のほうが良かったので、耐久性はかなり落ちてはいるが、雑な調律をするとすぐにノイズが出始めて、さらに弦が引っかかるように症状は進む。
公共ホールの備品の宿命とはいえ、調律師はもっと修行するべきだよ。
だからと言って、営業マンの言われるがままに、閉鎖的にするべきではないとは思うが。
スタインウェイ友の会みたいなのが最近できたらしいけど、お金払って講習を受けただけで急に調律が上手くなるはずないよ。

愚痴をこぼしながら(笑)3時間ほどかけて、調整・整音をやり直す。
息を吹き返したNYスタインウェイは、いつもの音色を取り戻した。
そう、健康な楽器は元にもどるんですよ・・。
午後から録音がはじまって、エンジニアのMさんは、「お~良く鳴ってるね~、ここの楽器は最近ますます落ち着いて良くなってきたね~」とニコニコ。
彼はオープン当初の18年前からここで何度も録音をしているから、少しの変化も聞き逃さない。
彼もまた日本だけではなく、ヨーロッパの各地で録音を数多く経験しており、世界中のスタインウェイの音を知っているから、話が早いし仕事も速い。
レコーディングは順調に進み、時間が余ってしまって、このペースでいけば明日には終わってしまいそうな勢いだ。








レコーディング?!

朝8時頃、携帯で起こされた。
エンジニアのMさんからだ。

「今日、秩父に何時頃入ります?」

一瞬、何事が起こったのか、理解できない。
「今日から4日間、エイベックスのレコーディングを頼んでありましたよね?」
ようやく思い出した。そういえば2週間くらい前に「3月の頭に秩父で
4日間レコーディングです。ディレクターから、詳しいことは改めて電話行きますから、スケジュール空けといてくださ~い」
そんな電話をもらった記憶があるけど、それっきりだったので、すっかり忘れてた。

折りから、この時期は毎年恒例の年度末、学校関係の調律が怒涛のごとく入ってくる時期で、猫の手も借りたいくらいスタッフ総出で調律回りをするので、人手が足りない。
そのため、せっかく、空いている私のスケジュール欄にも、ここ2~3日、クラシック以外の仕事もどんどん入れられていた。

殆ど寝ぼけた頭で、取り合えず着替えをバッグにつめて、会社に寄って調律カバンを車に乗せ、ともかく渋谷を出発したのが8時半きっかり。
携帯でスタッフに電話して、事情を説明し、今日から4日間のスケジュールを移動するように依頼。
何時に秩父に着くか、何でこうなったのか、いろいろ頭をめぐらしていると、追い討ちをかけるような事を思い出した。
昨日のコンサートで、何とピッチを440まで下げてしまった!
こんなことなら昨夜はこのまま秩父に連泊しておけばよかった・・。

渋谷を出て、新宿中野から出来たばかりの首都高速C2に乗った。
あっという間に戸田を過ぎて、外環、関越、と順調に走る。
気がつけば、10時に秩父ミューズパーク着。
なんと普段の1時間遅れで済んだ。
しかもまだ誰も到着していない。
私が昼頃には着けるかも・・と言ったので、スタートを14時に延ばしてくれたらしい。

やがて録音スタッフが到着。
皆さん平謝り。エンジニアのMさんが私に電話した時点で、ディレクターのAさんは全てお任せしたつもりだったので、改めて連絡しなかったらしい。
皆が了解したつもりになっていたわけだ。あぶない、あぶない。
こうやって、わずかに空いたスケジュールに、はたまた私の正月休みはすっ飛んだ(笑)

朝から私のスケジュール変更に会社は大慌て。
私は昼までかかって、440~442に上げる、上げる。
14時頃、アーティストがやってきた。
何しろ今回は何のレコーディングかも聞いていなかったので、外人がぞろぞろ入ってきても、誰がピアニストで、誰がマネージャかもわからない。
どうやら、テノールでトスティやプッチーニをやるみたいだ。

大体初日はマイクセッティングに時間をとられて、15時頃から録り始める事が多いので、今日は綱渡りだったけれど、どうにか間に合った。






秩父ミューズパーク

昨夜遅く、秩父の農園ホテル入りをして前泊。
今日は9時からミューズパークのピアノを440に下げ調律をしなければならない。
今日はトワ・エ・モアのコンサート。
最近、白鳥さんは復活コンサートをあっちこっちでやり始めて、先日も誰でもピカソの収録でご一緒した。
今回はトワ・エ・モアだけでなく芥川さんも一緒で、なつかしのデュオ復活だ。

ホールに入ってみると案の定、機材搬入の真っ最中で搬入口開けっ放し。
ミューズパークの舞台は外気が直撃で、キンキンに冷えている。
しかも、照明も音響も仕込みが始まるのでピアノ庫での調律を余儀なくされる。
舞台の準備ができると、20℃に設定されたピアノ庫からまだ冷えているステージにピアノを出さなくてはならず、そのうち暖房やライトで急激に暖まり始める。
この寒暖差だけでも危険なのに、9時開始10時半アップでピッチを442から440に下げなきゃならない。大騒ぎだ。

リハーサルが終わって、14時半から調律の直し。
案の定、次高音のピッチはガンガンに上がってきてオクターブが濁るほどだ。
30分で狂いが目立たないくらいに仕上げて、綱渡り調律終了。
私はこんな時は必ず、中央の割り振り、ロングミュート部分のユニズンを後回しにしないで、なるべく早めにあわせてしまう。
オーケストラとのコンチェルトの時も同じだ。
調律の時間が限られている場合は、殆ど出てこないような最高音域や、ユニズンがない単音のバス弦のあたりは後回しにして、一番目立つ真ん中のユニズンをなるべく早めにあわせておく。
いつ他の楽器が入ってきて、ピアノの横で音を出し始めるかわからないし、突然、調律を途中で止めて引っ込まなければならないかもしれないからだ。
ピアノ・ソロの場合でも、突然マイクテストを延々とやられて、中途半端なまま調律を終えなければならない事もある。

リハーサルが終わったら、早速、秩父倉庫に行って、勿論、片付けの続き。
今日は日曜日なので、なるべく遅く帰らないと関越の渋滞にはまるから、のんびり19時半まで作業をして、明日から始まる工事の準備の為に横浜の工場に向かう。
22時半頃工場到着。
準備をして、渋谷に戻って、皆でラーメンを食べて、解散。








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