懐かしのカザルスホールに来ました。

主婦の友社のホールとしてお馴染みだったカザルスホールが、日大に売却されて数年経ちますが、あと3ヶ月で閉鎖されるらしい。都心で音の良い小型のホールの代表だっただけに残念だね‥。
昔は随分お世話になったけど、日大のホールになってからしばらく外部貸し出しをしなくなっていたので、久しぶりだ。
昨年ピアノソロでF1を持ち込んだらしいけど、私はその時ツアーに出ていたのでスタッフが担当した。
今夜は佐藤征一郎先生のバス・バリトン独唱会で、ドイツ歌曲「冬の旅」全曲を歌う渋いコンサートだ。

ピアノは江口 玲。珍しく歌の伴奏をやる。
13時搬入で、とっても狭い搬入経路を通って、ピアノの行く先々にある障害物をどけながら、ピアノ庫に半分お尻を突っ込んで、その隙間で下手のドアを折りたたんでピアノをかわして、やっとステージに到着というアクロバティック搬入。これぞカザルス!懐かしい(笑)
昔ここには主婦の友会館があって、御茶ノ水の下倉楽器のすぐお隣。
私もまだまだ若き25歳位(笑)、下倉楽器の調律師として一般家庭の調律を、バリバリ年間1000件以上回っていた頃、この主婦の友会館の上に音楽教室があって、良く調律に来た。
やがて建て替えられて、カザルスホールがopen。
カザルスというくらいなので、チェロやヴァイオリンには良いけど、ピアノにはちょっと響き過ぎて風呂桶だったのだが、パイプオルガンを入れてからは適度に響きが抑えられて、とても使いやすいホールになった。
しかしその後売却されて、しかも来春には閉鎖。
都心ではホール経営は難しいと思うけど、是非とも残して貰いたいホールだ…。
93年にニューヨークから持ち帰ってきたF1のファーストコンサートも、このホールだった。
リハーサルを客席で聴きながらいろんな事を思い出した。
終演後、バックステージの人達と思い出話で盛り上がったけど、恐らく今夜が最後のステージになるだろう。
ありがとう、カザルスホール。
今年夏、市川市文化会館で行われた新人演奏家コンクールの、各部門優勝者によるガラコンサートの調律に行って来ました。
朝9時入りだったので、日曜日の渋滞を予想して7時半に渋谷を出発したら、高速はガラガラ。
8時に着いてしまったので、近くのデニーズで1時間つぶしてホール入り。
小ホールにある艶消しのスタインウェイは、25年位前の良かった頃のスタインウェイで、私の好きな楽器だけど、いかんせん予算が無いらしく、弦切れの恐怖と戦いながらの調律だ(笑)
11時に終わって、急いで首都高速に乗って六本木ヒルズに向かう。
途中呉服橋付近で2台前のトラックが、急ブレーキ!
そのまま渋滞の最後尾にズド~ンと追突!それに慌てて前車も急ブレーキ!
それをヒラリとかわして、左車線から事故現場をすり抜けて先へ急ぐ(笑)
バックミラーで見る限りでは鞭打ち程度で済みそうだから良かったね。
あのまま停まったら大渋滞に巻きこまれてた!
あとはスイスイ霞ヶ関で降りて、六本木ヒルズのグランドハイアットに到着!
13時搬入のトラックはまだ着いてなかった。
今日は、ボールルームで行われるアルマーニのパーティーの特設ステージで、辻井伸行君のコンサートがある。
なんとセレブで豪華な特設ステージだろ(笑)

持ち込んだピアノは、まだ辻井君がヴァン・クライヴァーンに優勝する直前に「徹子の部屋」で弾いた楽器。
彼の先生の川上さんも、カプースチンのレコーディングに2回とも使ったので、なにやら縁がある。
今日はラ・カンパネラや、ドビュッシーの映像、ハンガリー舞曲などを弾く。
リハーサルをやっている間に、久しぶりに会ったエイベックスのプロデューサーのNさんと立ち話。
クラシック業界では大手レコード業界が次々撤退するなか、エイベックスは貴重な存在だ(笑)
1時間バッチリ、リハーサルをやって「うん弾きやすい、弾きやすい」と
いよいよ今日は、CD368(愛称ルイス)のコンサートデビューです。
紀尾井ホールに13時搬入。

今日の南 紫音/江口 玲の紀尾井ホールのリサイタルに持ってきたCD368は1912年生まれ。
スタインウェイ本社のコンサート&アーティスト部、コンサート貸出専用の楽器としてニューヨークで生まれ、数々の名演奏に使われ、そして100年の時を経て日本のコンサートステージに復活デビューしたのです。
もちろん、サウンドボードや駒、ピン板などは交換して、いわゆる骨董品ではなく当時実際に使われていた新しい状態に復元したので、そのパワーはまさに巨匠時代そのもの。
まだまだサウンドボードや駒が若いので、瑞々しい若い音だけど、あと2年も経てば、落ち着い枯れた音が出るようになります。
それまでせいぜいステージにあげては調整を繰り返して熟成させて行きますので、楽しみにして下さい。
夜な夜な仕上げてきて、やっとコンサートコンディションになってきたので、今日の南紫音ちゃんの紀尾井リサイタルに花を添えるべく、参加しました。

これからレコーディングやコンサートで活躍して行く第1歩として今夜のリサイタルは、忘れられません。

今日は、ハンガリー・ソルノク市立オーケストラとのコンチェルト。
井崎正浩さん指揮、バルトーク・ピアノ協奏曲第3番だ。
ハンガリーのオケなので、バルトークは雰囲気バッチリだね。
持ち込んだピアノは、もちろんF1。
この曲はオケが大人数なので、普通のピアノでは、確実に負けてしまう。
いくらうまく弾いても聞こえなきゃねぇ。
昨夜、スーパーブリリアントにチューニングアップしたので、今日は楽しみだった。
先週のすみだトリフォニー大ホールでも使用したが、セルゲイ・シェプキンはバッハだったので、パワーより音色重視、今回の調整とはかなり異なる。
10月のサントリーホールでのコンチェルトと似た調整だが、あの時はガーシュウィンだったので、また少し違う。
リハを聴いたら、狙い通りの音が出ていて満足(笑)

ハンブルク・スタインウェイだと、次高音から最高音にかけての音がどうしても痩せてくる。
これを無理にブリングアップしようとすると、キャンキャンとマルチースが騒いでいるみたいな音になってしまうので、この辺の芸当は出来の良いニューヨーク・スタインウェイの独壇場だ。
抜けの良いクリスタルなスーパーブリリアントな高音部と、深いパワーのある重低音、輪郭がはっきりして倍音が乗った低音域は、ピアノに存在感を与える。
実際、この厚いオケをものともせず、乾いた音でピアノがガンガンオケを引っ張って行く様は圧巻だった。
ハンガリー人もびっくり(笑)楽しい仕事でした。
さて、ピアノの搬出はスタッフに任せて、私は今夜のもう一つの現場、先日レクチャーをやった明日館に向かった。
ここでは、B型持ち込みでジャズ/クラシックのコンサートをやっている。

新宿~池袋を行ったりきたりで忙しい夜だ。
朝9時に駒ヶ根を出発して、今日も快晴の中央道を走ります。
途中、高井戸で事故渋滞の情報があったので、ルート変更して河口湖~山中湖~御殿場経由で横浜工場に向かう事にしました。
途中、河口湖から望む富士山は綺麗です。

やっぱりこの辺に工場を移したいなあ(笑)。
今日は移動日で、他のスケジュールが入ってないので、夜は明日のオペラシティーのコンチェルト用にF1を調整しました。
朝8時半に渋谷を出発して、爽やかな秋空の中央道をひた走り、11時半に駒ヶ根着。
インターを降りてすぐのところにある明治亭で、まずは名物ソースカツ丼を食す。
ダイエット以来、禁食していた最後の大物、カツ丼。
解禁記念として、スタッフは「並ソースカツ丼」、私は「黒豚ソースカツ丼」(笑)
充分満足して、13時にピアノ搬入。
十数年前、秩父も飽きたので、DENONのスタッフと、草津~駒ヶ根とホール探しをしていた頃、このホールを見つけて、ピアノソロのレコーディングをした。
その時、録音が終わって露天風呂に入った帰り道、みんなで振り返ったら、真っ暗な駒ヶ根の山の上に巨大なヘールポップ彗星が見えて、大騒ぎした思い出がある。
まさに人生観が変わるような気がしたものだ。

今日は、江口玲ソロコンサート。
悪夢の浜離宮から奇跡の復活!(笑)のローズウッドを持ってきた。
約1000席の大ホールは、我々が録音用に探したホールだけあって、なかなか良い音がする。
プログラムは浜離宮とほぼ同じだけど、連絡ミスがあったので残念ながらホンキートンクピアノは無し。
リハーサルの時は、もちろん浜離宮事件の話で盛り上がり、江口君はソステヌートペダル踏み換え恐怖症(笑)
仕方なく、再度確認チェックをして、太鼓判を押して、本番に挑んだ(笑)
今夜は東京からファンクラブ御一行様も駆けつけて、盛り上がる。
黒人霊歌に涙ぐむ人などなど、普通のピアノでは表せない表現力に圧倒。
前回、駒ヶ根に来たときも、このピアノだったので、主催者にわざわざ今回のピアノの確認をして来てくれた人も居たらしくて、やっぱりローズウッド持ってきて良かったなあ…。
CDも飛ぶように売れて、コンサートの感動を物語ってくれた。
打ち上げは、今日2回目のソースカツ丼(笑)。
大丈夫かなあリバウンド…。
毎回、お世話になる駒ヶ根の音楽鑑賞会の皆様、ありがとうございました。
昨夜は久しぶりの飲みすぎ食い過ぎで、朝起きるのがつらかった(笑)
7時半に渋谷を出発して、千葉県の白石市文化会館には8時半に到着。
初めてのホールだけど、なかなか響きの良い小型のホールだ。

今日は南 紫音/江口 玲のコンサート。先日の越谷市と同じプログラムだ。

リハーサル を聴いて、いつものようにバランスのチェックをする。
響きが良いので、痩せる事もなく音色は問題ない。音量のバランスを見るだけで良いので、やりやすいホールだ。
プログラムは先日の越谷市と同じで、前半はベートーヴェンとシューマン。
後半はラヴェル、チャイコフスキー、Rシュトラウスと続く。
連休の真ん中で、ちょっと集客が悪かったのは残念だったけど、お客さんは、 本当にレベルの高い演奏が聴けて、贅沢なコンサートだった。
搬出が終わって、大渋滞の中、横浜工場まで走ってピアノを下ろして渋谷に帰ってきてもまだ21時。
マチネなので、久しぶりに早く帰れたね(笑)
毎年恒例、稲本響が日頃の労をねぎらって、我々スタッフに料理を振る舞ってくれる日です。
この日の為に取り寄せた肉を使って、定番の豚しゃぶから、手作り餃子、超高級ブランド牛を2種類ブロックを炭火で網焼き!
さらに、大阪名物たこ焼きを焼いて、最後は豚しゃぶのスープ で作る特製雑炊で締め。
いつもこの日は、サロンの外にバーベキューセットを出して、煙もくもく(笑)

近所の迷惑顧みず、渋谷の松濤でバーベキューやってるなんて、道行く人もびっくり(笑)
しかし、響の料理の腕は、NHKの番組「食菜浪蔓」に出ただけあってプロ顔負け。
夜23時過ぎまでワイワイ。
今日だけはダイエットも断酒も中休み(笑)
快晴になって、爽やかな秋空の中、ピアノは13時搬入。
奈落から迫りでステージに上げて調律。
裏方さんの照明の調整が終わったら、大ホールは誰も居なくなって、広いホール内に調律の音だけがカ~ンと響く。
この時間が何だか一番ほっとするね(笑)

やがてシェプキンがやってきてリハーサル前にピアノのチェック。
オール・バッハなど古典のみを弾くプログラムの場合、私は、ダンパーの掛かりを遅くしてなるべく鍵盤を軽くし(近代物は逆にサスティーンを延ばす為にダンパーの掛かりは若干早めにする)、歯切れの良いタッチで、音色はブリリアントに鳴りすぎないように心掛けて調整を進めるが、今回はそれに加えてソフトペダルでの音色の変化と粒揃いに時間をかけた。
昨年来日して弾いたゴールドベルグの時は、グールドの再来という話だったので、その先入観からいわゆる硬派のバッハ弾きだと思い込んでいた。
しかし、彼が求めているのは、少しロマンチックなバッハなので、タッチとペダルで音色の変化が出しやすい事と、その為には全体の音色音量の粒が揃っている事が最前提なわけだ。
実はこんな調整は持ち込みだから出来るのであって、ホールのピアノは頼まれてもやりません。
…タダじゃやんないよねぇ(笑)
シェプキンは、安心して休憩のためホテルに戻って行った。
本番は一階の最後列で聴かせてもらった。

ピアニシモが目の前にまで聞こえるし、音色の変化がはっきりわかって美しい。
やれやれ、これで一仕事終わりだ(笑)
休憩の時に「ロビーのあっちこっちでピアノの事が話題になってましたよ!」と言ってスタッフがトイレから戻ってきた(笑)
なにはともあれ、何かが違うと言うことがわかってくれただけでも嬉しい。
普通、平均律全曲を途中寝ないで終わりまで聞くのは難しいよね(笑)
実はタカギクラヴィアという社名は平均率クラヴィーアからとったんですよ。
クラヴィーアとは鍵盤楽器の意味で、昔、会社を作る時に、アーティストサービス専門の会社にしたかったので、一般の人にはわかりにくいけど、音楽家はみんな知ってるクラヴィーアにしたのです。
最初は「ピアノはドイツ」だと思ってたので、タカギクラヴィーア、後にニューヨークにはまってからは、タカギクラヴィアと英語読みに変わった。
そんな事思い出しながら、後半を聴いていた。
全てのプログラムが終了したのが、21時半!
舞台袖で、シェプキンと「良かったよ!うまいね!」「いやピアノのお陰だよ!」
なんて誉め合いながら(笑)、お疲れ様でした。
痩せたら、寒さが骨身に染みわたる(笑)
今日もサロンは、シェプキンが練習に来て、1日貸切。確かにこのプログラムは大変だ(笑)
明日の為に、ピアノの音色の打ち合わせをやって、あとは鍵を渡してずっと1人で籠もってもらうことにした。
今夜は江口君が音友ホールでピアノトリオの本番があり、夕方急きょCDを届けに行った。
かつて知ったる音友ホール。
そ~っと入って行ったら、そこには珍しいリハーサル光景が!
ヴァイオリン&チェロの後ろで、一生懸命ベーゼンを弾く江口 玲!なるほど珍百景(笑)
すぐにサロンに戻らなければならなかったので、そ~っと失礼しました。
本番見たかったなあ(笑)
昨年大好評だったセルゲイ・シェプキンが今年もやってきました。
今日、明日は終日サロンに籠って練習、明後日はすみだトリフォニーで本番。
今回はバッハの平均率第2巻全曲演奏!です。24曲を暗譜するのは至難の業(笑)
昨日、あるアーティストのレコーディングで弾かせるピアノ選びの為に、サロンには4台のフルコンが並べてあり、シェプキンはびっくりして、それぞれのピアノを弾いて回っていた。
CD368をビューティフル!なんて言って喜んで弾いてるけど、「これにする~」って言い出したら困るなあ…まだ仕上がってないから(笑)
どのピアノもそれぞれ気に入ってシェプキンさん大喜び。
選ぶのを迷ってしまう…と言い出した。

大ホールでバッハを弾くので、音が遠くまで飛ぶ楽器が最優先。
しかも平均率全曲演奏は時間が長いプログラム なので、いろんな状況を考えて、今年もF1に決定。
19時まで練習して帰った後、F1を「バッハ at すみだリフォニー用」に深夜まで調整。
やってきました!お待ちかね、江口玲+ローズウッド at 浜離宮です。
今回は全てアメリカの曲で、アメリカ国歌から始まり、奴隷で盲目の少年=通称ブラインド・トムが作った曲やスコット・ジョップリンのラグタイム、第2部はガーシュインのラプソディ イン ブルーまで。
19世紀中頃から20世紀初頭、まさに1887年製のローズウッドが活躍した時の曲ばかりだ。
やっと奴隷が解放されて、近代アメリカになる直前の時代背景を表現するため、今回の演出にはSP盤から起こした音源を流したり、陽気なホンキートンクピアノも用意した。

びっくりしたのは、当時の奴隷のオークションリスト!まで登場して、まさに、アメリカの光と陰の現実を垣間見たような気がする。
リハーサルでは、ブラインドトムの擬音と笛が上手くタイミングが合わなくて、困った(笑)
縦笛はホイッスルのように喰わえる事ができず、誰かに口に差し込んで貰わなきゃならないから、今回の長身イケメン譜めくりストさんにお願いした(笑)
我々は今春レコーディングしたので曲の内容もわかってるけど、何しろ無名の聴いた事もない曲が多く、どんなコンサートになるか少し不安だったが、中弛みするどころかわかりやすい解説と起承転結のあるコンサートになって、お客さん大満足!
おまけに何と、三千数百回のコンサートをやってきて、初めての出来事まで起こった!
コンサート最後の曲、ラプソディインブルーで盛り上がっていた後半、ほとんどのお客さんは気が付かなかったようだけど、客席で演奏を聴いていて、ピアノに何か起きたような予感がしたのだ。
全てのプログラムが終了して、客席からは、どよめきと、やんやの拍手!
そしてアンコールの前に、ステージ上から江口君から呼びかけられてしまった。
「鍵盤が下りなくなったので、直してもらいます…」
客席から走って舞台袖に回ってステージへ。
ピアノをチェックすると、確かに69番Fの鍵盤が下りない。
ローズウッド爺さんも困った顔している(笑)
アクションを引っ張り出したら、観客は「お~」とどよめく。
今日のお客さんは、良くどよめく(笑)
ピアノの中を覗いたら、何とダンパーブロックが割れて鍵盤に引っかかっている!
応急修理をするにしても10分はかかってしまう。
休憩時間ならともかく、アンコールなので、そんなに時間をかけるわけにはいかない。
ここまでに、既に2分は経っているし…。その間に江口君はMC用のマイクでその場を繋いでくれてる。はてさて、この場合はともかく鍵盤が下りるようにしないと指を傷めるので、壊れた部品を取り除く。
あとはダンパーを外すか残すかで、音が伸びっぱなしになるか、出なくなるかを選択しなきゃならない。
音が止まらないと、以後の音楽を濁すので、そのFの音だけ音が延びなくなる副作用の方を選ぶ事にした。
ここまでで約3分経過!
まだまだMCで時間引き延ばし中の江口君からマイクを奪い取って、状況説明。
まるで相撲の物言いの「只今の協議についてご説明致します」みたいに
私:「部品が割れてしまったため、応急処置で外しました。
アンコールで弾く曲はこのFの音は伸びないので、そこのところ、ご了承を~」
江口:「え!割れたの?」
2人の漫談が続いたあとにアンコール曲(笑)
この珍事件が起承転結の結の部分になって、意図したわけではないけど大変盛り上がったコンサートになりました。
ロビーではCDとサインを求めるお客さんで長蛇の列。
私もあっちこっちで声をかけられて立ち話。
ある男性が、「いや~、江口さんって天才ですよね…」って言ってました。
今日のコンサートは、この言葉が全てを物語ってるよね。
渋谷に戻ったローズウッド爺さんは早速解体されて、修理完了。

ちなみに、今夜のトラブルは、タッチが強くて壊れたのではなく、ダンパーペダルからソステヌートペダルに踏み換えた時に 、一瞬のタイミングでダンパーブロックのリップをソステヌートロッドが噛み合う瞬間があって、運悪く逃げ遅れた鍵盤のダンパーブロックをソステヌートロッドが押し込んだ…強いて言えば、手ではなくて脚で折ったと言うか(笑)
そういえば、今夜のコンサートはPOWER OF PIANO(笑)
いえいえ、江口君の名誉の為に言っておきますと、この時代のダンパーブロックの構造物は膠でくっ付いているのです。
流石に125年も経ったら膠は保たないよね。
そんなわけで、新しく貼り直したダンパーブロックは快調に動いてます(笑)
このシリーズも8回目、いよいよ今年最後のコンサートになりました。
今日は菊地裕介による演奏で、Op.46~51、31歳から33歳位までの作品だ。
菊地君もちょうど同年代。
「ショパンが自分と同じ年齢の頃の作品を是非弾いてみたい…」という意気込みで、挑戦してくれました。

菊地君は、自分の世界観を持った、私の好きな作曲家出身のピアニストだ。
抜群のテクニックと、自分なりのしっかりした音楽的感性の上でピアノを弾く。
今日の1曲目は、恐らくショパンの全作品の中で技術的に一番難しいとされる作品46「演奏会用アレグロ」から始まるので、大変だ(笑)
この気難しい1887年ローズウッドピアノを、「12時から1時間半位しか弾いてないので、まだ慣れないんです…」と言いながら本番に挑んだとは思えない弾きこなし振り。
小坂さんが一曲ずつ時代背景、その頃のショパンの心情等々、わかりやすく解説した後に、まさにその頃のショパンと同い年の菊地君の演奏を目の前で聴く事ができたので、帰り際に何人ものお客さんからお礼を言われました(笑)
いや、やっぱり小坂さんの話と、上手いピアニストが弾くヴィンテージスタインウェイの企画は、贅沢な良い企画だね、と自画自賛(笑)
次回は来年1月に干野君です、乞うご期待!
また紫音ちゃんの季節がやってきました。
これから紀尾井ホール他、各地でのコンサートが続きます。
江口君は先日のゆめりあホールの後、一週間ニューヨークに帰って、また日本に戻ってきました。
全く忙しい人です(笑)
今日はベートーヴェンとシューベルトがメイン。
このホール、私は初めてだったけど、一緒に行ったスタッフは、大ホールに何度かチェレスタの貸し出しに来た事があるらしい。


今日の小ホールは490席で、上野の東京文化会館を小さくしたような雰囲気だけど、響はあまりないので、ピアノとヴァイオリンの音量のバランスを とるのが難しい。
思い切ってピアノを奥に下げて、大屋根を全閉にしてみたらちょうど良かった。
ピアノは音色がはっきりしている楽器を持って行ったので、奥で全閉にしても輪郭がはっきり聴こえて問題なかった。
これが、まろやかな楽器だと、ボワンボワンになって、ピアノもヴァイオリンもお互いに弾きにくくなる。

紫音ちゃんのシューマンは久しぶりだ。
紀尾井ホールでレコーディングして以来に聴くけど、すっかり大人っぽくなったね!
今日はマチネなので、夕方終了。
スタッフが江口君のCD販売からなかなか戻って来ないので、結局1人で搬出完了!
元々そういうふうに作ったシステムだけど、実際やってみるとやっぱり画期的だね!(笑)
帰りは夕暮れの大渋滞の中、越谷から横浜の工場まで走る。
オバマ大統領は今日帰るらしい。どうりで混んでるわけだ。
途中、横浜のみなとみらいを通過。
今頃、別のスタッフはみらいホールに持ち込んだピアノで本番真っ最中の様子。
頑張れよ~(笑)
昨日は大阪からの移動日。
道中ずっと大荒れの雨で心配してたけど、今朝は何とか雨もあがり、スタッフ達は皇居の搬入に向かったみたいだ。
朝8時、警戒厳重な皇居の特設ステージに、ピアノを搬入。
広大な会場には、17時からの国民祭典に備えて、すでに数人の人が並んでいたそうだ。

午後からは、皇居近辺の道路も封鎖され、各地の祭りやマーチングなどのパレードが目白押し。
地方の物産展も大いに賑わっていたらしい。

朝からテレビのニュースで何度も放映されていたけれど、皇居周辺は、日本中から集まったお祝いの人でごった返しているようた。
色々な出し物があるなか、ピアノは歌の伴奏に使うスケジュール。
その時までステージの後ろに待機して、歌のコーナーの直前に前に出す予定だったので、搬入後一旦戻ってきたスタッフは、夕方、頃合いを見て、また皇居に向かった。
いよいよ式典が始まり、各界の著名人から、お祝いの言葉が述べられる。
陸海空合同の自衛隊音楽隊による演奏や、子供たちのビッグバンド、100人のよさこい踊りなど、いろんな催しが続いてかなりスケジュールが大分押しているようで、野外ステージ脇で待っているスタッフから「寒い、寒い」とメールが入ってくる。
今夜はかなり冷えるので、現場も大変だろう。
やがてスタッフから「ひぇ~!ピアノ演奏が中止になりましたあ~」とメールが入る。
なんと、時間が押してしまったので、中盤に予定されていたいくつかの催しとともに歌の出番はカット。
したがってピアノも出番なし(笑)!搬出!
やれやれ朝早くからご苦労さん(笑)
昨日の夕方6時に出発して、とりあえず多賀のハイウェイホテルに到着したのが夜11時半。
平日だけあって、高速もパーキングもガラガラ。
土日は千円均一で、大渋滞だけど、結局は平日の車が移動しただけで、総量は増えてないんじゃないの?
経済効果はあるのかなあ…。
今日は大阪いずみホールに昼入れで、稲本耕一生誕…じゃ無くて、デビュー50周年記念リサイタルです。
響の為に、F1と2ndアクションとムービングピアノを持ち込みです。
前半は稲本ファミリーのコンサートで始まり、響のコーナーで盛り上がって、休憩。
F1のアクションを入れ替えて、稲本渡のトリオで始まり、アクションを入れ替えて、 稲本ファミリーで終わるという構成らしい。


さすがに50周年記念とあって、いずみホールはほぼ満員。
共演者や場面転換が多いので、裏方は大忙しだ。
この日の為に作った稲本ファミリーTシャツを稲本ママが我々にプレゼントしてくれたので、嫌な予感がしたが…、やっぱり我々もTシャツに着替えて本番のステージでお手伝い(笑)
立派に育った息子達と、お父さんのアンサンブルに50周年を祝福する拍手が鳴り止まない。
家族って良いね(笑)
昨夜遅く、栃木から戻って来ました。
今日は夕方、都内のお客さんのサロンコンサートの調律に行くだけなので、先日届いたCD368を、やっとゆっくり見る事ができました。

このピアノを発見してから丸2年。
ホロビッツがこよなく愛した楽器CD75と同じ1912年の生まれで、1887年製ローズウッドと、1921年製CD199の中間期の楽器。
まさにラフマニノフやホフマン、パデレフスキー等の巨匠時代真っ只中に活躍した楽器だ。
もちろん若きホロヴィッツも、この後登場するグールドも、この時代の楽器を生涯求めていたわけだ。
スタインウェイというより、この時代の楽器を知らずして、近代ピアノを語るべからずだね(笑)
ホロヴィッツが初めて日本に来た時に持ってきたCD75を聴いた時、体調が優れず演奏はイマイチだったけど、ピアノの音にはびっくりしたものだ。
「何故ホロビッツがローズウッドを大喜びして弾いたのか?」に対する答えが、この時代の楽器を見ると、なるほど…と良くわかる。
スタインウェイは1930年代まで、まさに巨匠達の要求を取り入れて、試行錯誤を繰り返し、設計変更を繰り返していた。
アクション以外のボディ・フレームの部分は1921年のCD199の頃には完成し、以後、根本的な設計変更はない。
この1912年製CD368はその設計で、中音域はカポダストからアグラフに設計変更されたが、まだ次高音域のカポダスト部分の駒ピンは斜めに植えてあって、タッチによる倍音の変化が出しやすい。(下手な人には余計な設計だけど)

アメリカでは、未だにこういったCDの付いたコンサート専用モデルの古い楽器をたまに見かけるけれど、長い年月の間に修理を繰り返されて、オリジナル部分がほとんど残されていないものが多い。
そんな状況のなか、このCD368が冷凍マンモスのようにほとんど改造されていない状態で発見できたのは幸せな事だ。

巨匠達の楽器の話になると、一冊の本になるくらい話が尽きない。
この日記の中では書ききれないので、小出しにしていきます(笑)
恒例のチャリティ・コンサート。
今日はのざわ特別支援学校。
朝9時にピアノ2台搬入。
恐らく日本最大級の広さと最新設備の養護学校です。
立派な体育館にトラックごと横付けて楽々搬入終了。
オープンしてまだ6年。設計が新しいので、あらゆるところがバリアフリー。
12時に中井&武田さんが来てリハーサル。
本番は、いつものように大盛り上がりで、目の前で聞く2台ピアノの迫力にびっくり。
終演後も記念撮影の列が延々と続いてなかなかピアノの搬出が出来ません(笑)

夕方搬出終了と、会社に連絡したら、サロンでは、ちょうどスタニスラフ・ジェヴィツキという若いピアニストのコンサートがこれから始まるらしい。
ショパンコンクール第2位、母親はタチアナ・シェバノワでお父さんもピアニストという経歴らしい。
残念ながら私は間に合わないので、全てスタッフに任せてのんびり帰る事にする(笑)
朝8時半に渋谷を出発、11時に到着した。
巨大な搬入口にトラックを停めたけど、今日はホールのピアノを借りるので、搬入は無し(笑)

今日は、フコク生命チャリティーコンサートシリーズ・イン・栃木だ。
キャパ1600人のこのホールは、繁華街にあって便利。
調律が終わってお昼を食べに外に出たら偶然、去年NHKの中継生放送の時に来た広場に出たので、その時に食べた餃子屋さんに入った。
何となくこの辺の地理がわかってきた(笑)
ホールに戻ったら、もう中井&武田さん達がリハーサルをやってた。

このコンサートも、もう何回目だろう…。
いつものメンバー、いつものスタッフで、和気あいあいとリハーサルも終わり、大入りのお客さんを迎えて、本番も無事終了。
今日はホールのスタインウェイとヤマハを使ったので、搬出はなし。楽だね(笑)
このシリーズは毎回打ち上げに、その土地の郷土料理を食べさせてもらうのが楽しみだ。
今夜は何を食べに行くのかなあ~と思ったら、豪華な和食のお店で、船盛りの刺身だ(笑)
朝九時に、大泉学園の駅前にあるゆめりあホールに来ました。
主催者の方が、幻のピアノを持ってきて欲しい(多分ローズウッドの事だと思う)との事だったけど、このホールはビルの中にあり、狭い階段を上げるか、吊り上げるかしないと入らないので、諦めてもらいました。
キャパが200人位の小さいホールの割に、バックステージやピアノ庫も楽屋も広くて気に入りました。

面白いのは、ピアノ庫がステージの真裏にあるのに密閉が良くて、本番中でも調律や練習ができるとの事。
今日は江口玲のソロ・コンサートだけど、クローズなので一般の人は入れないようです。
前半で別の催し物をやっていたので、その本番中にピアノ庫で指慣らしや調律の直しをやりました(笑)
平日なのに夕方終了という、ちょっと変則的なスケジュールです。
本番までの間、楽屋で弁当を食べたり、昔話をしながら時間を潰してました。
今日は持ち込みではないので、ホールのピアノを調律、リハーサル後まで立ち会いという普通の調律師の仕事です。暇です。楽です(笑)
帰りは、大泉学園から石神井公園まで行って、池袋行きの急行に乗ろうと思ったら、なんと渋谷行き急行が来た!??
いつのまにか、西武線に有楽町線や副都心線やらが乗り入れて、なんとも便利になった事…。
めったに電車に乗らないので、時代に取り残される(笑)
さらに、終点の渋谷駅に着いてびっくり!
な、なんだこの広い地下駅は!
目の前に見たこともない渋谷の地下駅が広がる!
長年渋谷に住んでいながら、渋谷駅で迷ってしまった(笑)お恥ずかしい限りだ。
会社に帰ったら、お待ちかねCD368がニューヨークから届いていた。


久しぶりに再会したら、すっかりピカピカに見違えるようになって、恥ずかしそおーに立ってた。
1912年からずっとニューヨークに住んでたのに、こんな言葉の通じない国にはるばる飛んできたわけだ。
まだ時差ぼけ だろうから、今日はゆっくり休ませてあげましょう(笑)
その間に私はピアニストKさんの招待で福井の郷土料理の店で晩御飯。
【“ゆめりあホール”の続きを読む】
痩せたので、今年は寒さが身に凍みます(笑)。
今日は朝9時、渋谷AXに搬入。山下洋輔&ビッグバンドの仕事です。
NHKの裏なので、家からも会社からも5分で行けます。
調律を10時半にアップして、歯医者に行って、会社に戻ってきてもまだお昼(笑)

サロンでは午後からコロムビアのオーディション。
夕方、AXへリハーサル後の調律直しに行ったら、舞台の上は知った顔がウロウロ。
照明や音響、マネージャーや主催者。
みんなどこかで仕事をしているので、あっちこっちで、「おや、また会いましたね!」(笑)業界は狭いね。
夜9時の搬出まで時間があるので会社に戻り、夜7時からサロンでやってる角川映画の劇伴の録りと撮りに顔を出す。

女優のKさんがショパンの葬送ソナタを弾くシーン撮り。
監督やカメラマンやマスコミなどで狭いサロンはごった返している。
良く見ると、ここでも顔馴染みが揃っていて、「やあ~あの時はどうも!」とか挨拶。
ほんとに業界は狭いね、と言うより、それだけ長くやってるって事で、年取ったって事か(笑)