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相模湖レコーディング最終日                       10/31

忙しかった10月も今日で終わり。
朝はのんびり11時入り。調律は13時アップで、アーティストが15時入り。余裕の録音だね(笑)

今日は、昨日のクライスレリアーナの続きから。
内声をいろいろ変化させたバージョンを録って、そのあとは、ショパンのノクターンやバッハ、ブラームス、ラフマニノフを録った。
時間がたっぷり余ったので、結局CD2枚分位の曲を録って終了。
今回のアルバムは、今の若い人たちにぜひ聴かせたいと思う。
これを聴いて、「ピアノってこんなにいろんな表情が出るんだ!」と改めてびっくりしてもらいたい。
こんな風に音楽を音色で表現できることがわかれば、弾きながら恍惚な顔をしたり、大袈裟に体をくねらせて弾いてる姿が滑稽に見えてくると思う。
かのアイザック・スターンが、「音楽で表現できないから、身体を揺らす」って言った意味をわかって欲しいね(笑)


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今回のエンジニア桜井さんとは、もう20年位前からの付き合いで、日本クラウン、ワーナーミュージック、エイベックスの各社クラシック録音で、良く一緒に仕事しました。
今、クラシックのレコーディング・エンジニアとして残っている人は、みんな知り合いなので、本当に狭い業界になってしまいました。

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パソコンを使ったデジタル録音が主流になり、機材はどんどん進歩して軽量&小型化していくけど、クラシック録音のマイクとスピーカーは、依然アナログが主流。
この20年ほとんど変わらず、B&K、ショップス、ゼンハイザー、ノイマンといったところだ。
スピーカーは多少、他のメーカーも使われるが、やはりジェネレック、B&Wがほとんど。
日本製品が使われる事はまずない。性能曲線は素晴らしいんだけどね…。
やっぱりこの世界も、数字じゃなくて音色という感覚で判断されるから、ピアノと同じなのかもしれない。
こういった話も、今度の本「調律師、至高の音を作る」に出てくるから買いましょう!(笑)

話がそれたけど、録音が終わって、今回も「やっぱり、うまい人と仕事をするとスムーズに終わるよね」が結論でした。
それは、それぞれの仕事の役割がわかっていて迷いがないし、決して他人のせいにしないので仕事が楽、ということ。
エンジニアも調律師も、会社を辞めて独立しても数年で表舞台から消えていく人が ほとんどなのは、それまで会社の看板で仕事してたということ。
自信のないひとは、会社に残ったほうが良いよ。ホント大変だから(笑)


相模湖レコーディング                         10/30                          

この土日は、相模湖に籠もってシューマンのレコーディングをやってます。
ピアノはローズウッドで、作曲家、ピアニストの雁部一浩によるシューマン・クライスレリアーナと子供の情景。
台風の関東直撃予想と土日が重なっていたので、今朝は6時に渋谷を出発した。
ところが予想に反して道はガラガラ。7時にはホールに着いてしまったので、2時間も潰す事になってしまった。
9時に搬入して調律。
昼頃に準備ができたけど、雁部さんは余裕で15時にホール到着(笑)
相変わらずの雨の中、台風直撃は心配だけど、この相模湖交流ホールは温度湿度も安定しているので、安心だ。

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雁部さんは、ローズウッドしか弾かないので、ピアノに慣れる練習は皆無。
いきなり「クライスレリアーナ」から録り始めた。
モニターを聴いていると、シューマン弾きと言われたホロビッツが、このピアノを弾いて大喜びしたのが、とても良くわかる。
シューマンは特に、オクターブの中で内声を際だたせなくてはならない。
4声が和音の中で分離して聴こえないピアノでは、ピアニストが内声をコントロールしても意味が伝わらない。
ローズウッドならではの表現力が最大限生かせる曲だ。
シューマンがこの曲を書いた頃は、既にかなり精神的に病んでいたので、普通のピアノで弾いている録音と聴き比べてもらいたい。

「クライスレリアーナ」の後は、「子供の情景」まで一気に録ってしまった。
中でも「トロイメライ」は、ホロヴィッツのモスクワ公演のアンコールライブを彷彿とさせる音色。
私はあれ以上の仕上がりだと思うね、大人のクラシックだね。

夜は8時半に終わって、もう小曲しか残ってないから、明日は午後から開始。
エンジニアの桜井さんもホテルをキャンセルして帰る事にしたので、私だけ1人、上野原のルートインに泊まる。
調律は誰よりも早いからね(笑)
いやぁ~しかし良い録音が残せたって嬉しいよね。


工場にこもって仕事                            10/29              

工場にこもって、先日引き取ってきた某文化会館のスタインウェイのオーバーホール作業。
このピアノは、調律中に弦が切れ始めたし、アグラフやカポダストも弦が引っかかるようになってきたので、そろそろ全弦交換時期。
フレームも塗装が剥げて、あっちこっち下地が見えてきた。
フレームの高音域、は傷だらけでピンの高さもバラバラ。
度重なる断弦のたびに、未熟な調律師が下手くそな張弦をやったせいだ。

ピアノを引き取って全弦を外し、フレームを外してゴールド塗装は済ませたので、今日はカポダストの研磨。
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すっかり綺麗に蘇ったフレームをケースに納める。
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このハンブルクのフルコンのフレーム重量は151キログラム。
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スタインウェイのフレームは、年代によって少しずつ重さが異なるけれど、個体差もあるので面白い。
この楽器は素晴らしく音が良かったので、計ってみたらやっぱり軽い。予想通りだね、
フレームが重くて、良く鳴るピアノは見たことない(笑)。

さて、あとは、フレームをケースに納める最大の山場。
「鳴らなくなった、音が伸びなくなった」というオーバーホールの失敗の原因のほとんどは、この過程の間違いでおきる。
スタインウェイのオーバーホール経験の少ない技術者は、くれぐれも安易にフレームを脱着する事なかれ!
取り返しのつかない事になりますよ…。

さて無事ケースに収めて、規定トルクでボルトを締めたあとは、ちょっと休憩。
とうとう木枯らし1号でカバーが吹き飛んで、ボディがあらわになった我がロータス・ヨーロッパS2君。
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かわいそうに。忙しくて、何年も乗ってあげられないうちに、車検も切れていた。
今年、ホンS8のほうは復活させてあげたので、次はロータスを整備しようと決心した次第です。
はぁ~1日が40時間位あれば良いのに…。


君津市民文化ホール レコーディング                10/28  

連日の原稿書きからやっと離れて、今日は朝9時入りで、君津市民文化ホールでのレコーディングにやってきました。
今日は1日だけ合唱の伴奏を録音するだけなので、ホールのスタインウェイを借りました。
渋谷からは、海ホタルを渡って1時間かからずに着くので、時々使うホールです。
いつも使うのは大ホールなので、中ホールがあるとは知りませんでしたが、ここは以前、音楽ホールと呼ばれていたらしい500席位の立派な中ホール!残響も可変出来てなかなか使いやすい。
君津のホールは大ホールも中ホールもなかなかのものです。
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置いてあったスタインウェイの特徴あるserialNo.を見て何となく思い出した!
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このピアノは8年位前、「海の上のピアニスト」の君津公演の時に、大ホールで調律した事がありました。
それは確か、池袋の芸術劇場での「J-クラシックス」公演と重なっていて、「海ピ」全公演で唯一、ホールのピアノを使った公演でした。
あれから8年振りに再会したフルコン。
弦はそろそろ交換時期で、アグラフも引っかかるので調律はやりにくいけど、オーバーホールすれば新品より良くなる事は確実だね。
レコーディングで年に何度かしか来ないし、いつもピアノは持ち込みなのでハウスピアノの存在をすっかり忘れてたけど、久しぶりにご対面しました。
それにしても、この中ホールの発見で、君津はますます魅力的なホールになったね。

今日は立ち会いがないので、夕方、横須賀のTさん宅にお邪魔して、夕御飯まで頂いて帰りましたぁ~。
ご馳走さま!




本日校了!                               10/27

「調律師、至高の音を作る---知られざるピアノの世界」、帯には「ピアニストの心の声を聴く」。
ちょっと長いタイトルだけど、やっと次の本ができました。今日が最終校了です。
依頼があった時は、意外とサクサク行くかと思ったけど、何しろ一般の人がわかりやすい内容にして欲しいとの事。
まぁそれも簡単だろ、と思って取りかかったら、これが1番難しい!
なにしろ、編集&校正の人が5人も居て、クラシックの世界に居る人ならみんなわかっているような事も、次々質問が来る(笑)
そうか…俺たちがやってる事は、狭い世界の更に先の特殊な分野だ、と改めて自覚した。
だから思いっきり頭を切り替えて、小難しいクラシックの分野だけじゃなく、ジャズや映画音楽からテレビの収録の裏話、レコーディングの現場、コンサートの聴き方などなど、盛りだくさんの内容にした。
さらに、超コアなクラシックファンや、業界人、調律師に至るまで、当然この位は知ってるよね?って問いたい基礎知識編もあるから、このやろ!と思う同業者諸君も、どんどん読んで反論して下さい(笑)

11月12日、朝日新聞新書から発売。さあ、書店に急げ!



浜離宮朝日ホール                           10/20

今日の浜離宮は、久しぶりにF1を持って来ました。
昨年もここでやった、佐竹由美さんのリサイタルで、伴奏は江口君です。
昨日、このお二人は松濤サロンで練習してました。
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来月出版される本は朝日新書なので、ここだと同じビル内だ。
急ぎの校正があれば、呼びに来るかなあ…(笑)
本の編集もやっと一段落して、今日はのんびり音楽を楽しめそうだ。
リハーサルを聴きながら、久しぶりにF1の音色を楽しむ。


何たる忙しさ!                              10/19

最近ぱったり日記が更新されてないので、「忙し過ぎて大丈夫?生きてる?」ってみんな心配してくれてますが、
大丈夫ですよ~。私は元気です(笑)

今月に入ってから、来月12日に出版される本の再稿を夜な夜なやってました。
そんな折、15日の夕方、母親の訃報が入って、16日に急遽、仙台に行って来ました。
16日朝、千葉のコンサートホールにピアノを搬入して調律、リハーサルまで立ち会って、東京駅から新幹線で仙台に向かいました。
兄の家は仙台駅から遠いので、駅でレンタカーのプリウスを借りて、夕方到着。
88歳の誕生日を迎えた翌日に老衰で息を引き取ったらしいので、いわゆる天寿を全うしたってやつだね。

全て終わって、プリウスをレンタカー会社に返却する時にガソリンを入れてビックリ!
「満タンで1.5リットル、208円です!」耳を疑ったね(笑)
いくら霊柩車の後ろをゆっくり走ったと言っても総走行距離50キロだから、脅威的高燃費!
普段1リッター8キロ位しか走らない車に乗ってると…時代は変わったね。



ツアーも一段落してもう10月                      10/4

私の今日の担当は、日本橋公会堂で須江太郎リサイタル。
実は日本橋公会堂は初めてのホール。
聞いた事ないなあ…落語とかやる和風のとこかい?と思いつつ、来てみてびっくり!
確かに和物メインの多目的ホールとはいえ、反響板を組むと、400席ほどのちょうど良い大きさの音楽ホールに変身。
しかも舞台裏も意外と広くて楽屋もトイレも充実。
響き過ぎないので、ピアノには、とっても良い!これは嬉しい発見だ。
ピアノの搬入も楽勝だし、都内に欲しかった大きさのホールがこんなところにあった!
面白いのは、1階は普通の椅子席だけど、さすがに和物をやるだけあって、2階バルコニーの一部が畳!
一度ここに寝っ転がって、クラシックを聴いてみたい(笑)
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そうそう肝心のコンサートは、前半がショパンのポロネーズ(踊りはないけど)やマズルカ。衣装は19世紀風の燕尾服。
後半はドビュッシーとシューマン。なんと、衣装は羽織袴!
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長年コンサートをやってきて、邦楽の和服姿の人とのコラボは何度もあるけど、ピアニストが羽織袴で弾いたのは初めて見た(笑)
曲はお客さん大受け!いろいろ考えるね~(笑)

最後にマイクでお客さんにF1ピアノの説明と、ピアノにお礼を言ってくれて終了!
楽しいコンサートでした。


静岡で変な仕事                             10/1

昨夜の浜離宮での、マヨネーズダンスがよっぽど衝撃的だったらしく、メールの山(笑)

一転して、今日は朝7時半にベーゼンドルファーを積んで(貸出ピアノにはベーゼンもあるんやで)、スタッフと3人で静岡へ。
静岡駅前にできた静岡市美術館オープニングセレモニーにベーゼンを貸して欲しいと、依頼があったのです。
狭い廊下を通って、ロビーに出て、しかも40センチのステージ上げ!聞いてないぞ!
とりあえずやる事はやって、搬出までの間、掛川にあるヤマハリゾートつま恋の「森林の湯」に行って、久しぶりにちょっとのんびり。
でも、また搬出で大汗かいたので、温泉効果も消えてしまった。
今日はただの運送屋さんでした(笑)