相変わらずあわただしい毎日                        3/31

おとといは松濤スタジオで、先日コロムビアでレコーディングしたF君のジャケット写真撮影があり、新潟から帰ってきたベヒシュタインENの置き場所がなくてサブちゃんに預けてあったのが本日戻って来ました。
次の出番は10日後ですが、サブちゃんが運ぶので我社にしては珍しく梱包状態のままです。

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しかしベヒシュタインはスタインウェイより大きくて重い(笑)


ルイス君はここ数日、都内の某ホールに貸し出されていますが、帰ってきたらヴィンテージメインテナンスルームに戻り、スタジオのB型を工場に運び、代わりにセミコンのC型を3日のテレビ収録の為にスタジオに運んで来ます。サロンでは今日、歌とピアノのレコーディングがあります。
昨日のコンサートで使用したピアノを移動して、深夜にスタッフが調律したフルコンをチェックして、私は新幹線を乗り継いで和歌山へ。
本州最南端の串本はもう春!明日から4月ですね~。

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共立講堂                                  3/25

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昔懐かしい共立講堂に行って来ました。
ここのスタインウェイは、かつて日比谷公会堂や文京公会堂などのホールしかなかった時代に、来日したルビンシュタインも弾いたと言われるピアノ。
それを譲り受けてこの大学の講堂に置いてあります。
今はそんな面影もないけど、1955年製の良かった時代のスタインウェイ。
何年か前にオーバーホールしたらしいけどほとんど使ってないので、仏作って魂入れず状態。
もっと使いましょう!


先日、我社の貸し出し専用楽器ベヒシュタインENを久しぶりに倉庫から渋谷に持って来ました。

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ある大人気のアーティストのコンサートツアーに使う為です。
昨日は新潟で本番でしたが、これから全国を回る予定です。
我社で活躍しているのはスタインウェイだけではないんですよ!
しかしベヒシュタインは大きい(笑)

ロビーコンサート                            3/22

昨夜、スタッフ達は印西に泊まり、今日は千葉のこども病院でフコク生命の訪問コンサートを担当しています。
私は昨日FM横浜の収録があったので交代して渋谷に戻り、今朝の多摩区役所でのロビーコンサートです。
N籐あきらくんとチェロの神谷さんのジョイントリサイタル。
区役所入口のガラス自動ドア幅は、153センチなのですが、手で押し広げてギリギリなんとかフルコンが入りました。

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ロビーは天井の高い吹き抜けで、結構良い響きですよ。
ランチタイムコンサートなので、昼頃には終了して搬出。


会社に戻ってきたらホロ爺さんという方から手紙が来ていました。
開けて見てビックリ!
同封されていたのは、あの有名なホロヴィッツのボウタイの復刻版!
熱心なホロヴィッツマニアの方のようです。
ホロヴィッツと言えば蝶ネクタイ。
フランツ・モアまで巨大な蝶ネクタイを締めて参列したホワイトハウスでの式典の話は、お茶目な2人を象徴してます(笑)

こちらは、ホロヴィッツピアノCD75と鍵盤ボウタイ。

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そしてこちらは、ホロヴィッツ・イン・ロンドンのインタビューでの鍵盤ボウタイ。

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Aさんありがとうございました!
詳細は「ホロ爺の棒タイショップ」http://www.horowitz-bowtie.meで参照してくださいね!




レコーディングスタジオ                           3/22

今日は我々が保守管理している某レコーディングスタジオの調律に行って来ました。
普段はスタッフの担当ですが、たまにピアノのチェックも兼ねて見に行きます。

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このスタジオには、さる大手レコーディングスタジオが閉鎖された時、そこで使われていた比較的新しいハンブルクDを、我々がオーバーホールして納品しました。
このピアノ、アーティストやエンジニアさんからは、都内のレコーディングスタジオの中でベストワンという評判を頂いています。
手間味噌ですが、私もそう思います(笑)

これは保守や調律費用をケチらずに必ず依頼してくれるので、理想的な保守管理ができるからなのです。
不景気でスタジオ経営が苦しくなると、ほとんどのスタジオが真っ先にピアノ維持管理費を削減します。
結果ピアノが荒れて良い音で録れないから、余計スタジオ利用が減り経営が苦しくなる悪循環。
「あそこのスタジオのピアノはひどい」といった噂は、エンジニアやアーティストから広まって行きますが、スタジオ側は知らない事が多い。
ノイズが少なくてすっきりした音のスタインウェイが入っているスタジオをみんな探してるのにね…


さて我社は年度末超ハードスケジュールもまだまだ続いているので一般部門は大忙し。
卒業式が終わって春休みに入るとピアノを使わなくなるので、各学校のピアノのオーバーホールが一斉に入ってきます。
本体の全弦交換と並行してアクションは持ち帰り、ハンマーや鍵盤ブッシングクロスの交換などは渋谷で夜遅くまでみんなが手分けして黙々と作業を続けています。

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こういう根気のいる作業は、女性スタッフのほうが確実に向いています。
男達は途中でタバコを吸いに行ったりして、見ていないとやたら休憩が多い。
どこの工場も現場は女性が多いのはこれが理由です。
男達よ、しっかりしろよ(笑)

フコク生命チャリティーコンサート                    3/19

お馴染みフコク生命チャリティーコンサート、今日は千葉の印西にあるフコク生命研修センターで行われます。
広い敷地に建つ新しい立派な建物にビックリしました。
食堂はもちろん宿泊施設もあり、新人さん達はここでみっちり教育を受けて全国に散らばって行くんですね!
今回はお馴染みmピアノのT中梢さんと、ソプラノのM美佳さんと、フルートのM真理さん。

渋谷を朝7時半に出発してピッタリ朝8時半に到着。
この巨大な施設にも関わらず、正面玄関のガラスの自動ドアが145センチしか開かないので、玄関前でヨイショっとピアノを立てないとならないけど、そこはフコク生命の社屋。
新人の若者たちが大勢で手伝ってくれました。

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リハーサルを聴いて、あとのスタッフを残して私だけ電車に戻ります。
明日の訪問コンサートは、同じ時間に近くのコンサートホールで保守点検をやっている別スタッフが交代でやってきます。
私は夕方18時からカフェでFM横浜の収録。
今回のゲストはT田真里ちゃんと、先月お亡くなりになった林秀光さんのお嬢さん。
そして春音楽祭のスタッフKさんにも急遽来て頂いて、春音の告知をしてもらいました。
T真里ちゃんとは久しぶりに会ったので、収録終了後もカフェでカレーを食べたりワインを空けたり、昔話に花が咲きました(笑)

今回収録分の放送は、3月24日と31日の18時30分~45分です。
この番組は、4月から同じく毎週土曜日の18時45分~19時に変更になります。


春・音楽祭~国立科学博物館                    3/18                    

我社が参入するようになったので、今までピアノがなかった場所でもピアノを使ったコンサートができるようになりました。
今日は朝8時半に科学博物館の2階にある、昭和初期の古い講堂にピアノを搬入します。
ここはエレベーターも狭く、狭い階段で2階上げなので、踊り場で回せるサイズを考えると170センチのM型が最大サイズ。

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こんな時活躍するのは、ピアノ階段上げ専用機「ピアノプラン」、この機械は我社になんと7台もあります(笑)
なにしろこの建物は最近、重要文化財指定になったので、床に養生したり神経使います(笑)。


音楽祭の仕事は何人もの音楽家達と仕事をするので、初めてお会いする人も多い。
今日のVnのT田さんとピアノのHさんとも初めてだ。

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調律が終わって、リハーサル開始。
もし、音楽性に乏しいピアノ弾きだった場合、いくらスタインウェイといっても、こんな小さくてしかもピカピカ光ってない古いピアノを見ると、ブツブツ文句を言います。
こんな人は大抵、自分の出す音を聞いてなくてぶっ叩いてピアニシモは出せない人(笑)
下手でうまく弾けない事をピアノのせいにする人です。
今日持ってきたのは1925年製のヴィンテージ・スタインウェイM型で、この同時代の建物にピッタリ!
我が社の小型スタインウェイでも「おっ!」とびっくりされる人気者です(笑)

さてピアニストのHさん試弾開始。
しばらく試し弾きしてピアノを覗き込んで何か言いたそう…。
客席で聴いてた私はそろそろご意見を聞かなきゃって出て行きました。

Hさん「素晴らしいピアノ!これ古いんですか?」
私「1925年ですよ」
Hさん「え~スタインウェイの一番良かった頃の楽器ね!」

この二言で全てが通じ会えます。
しばらくピアノの話で盛り上がって

「木が鳴ってる感じがVnにピッタリ合う!」
「最近のスタインウェイはプラスチックの音がして表現力に乏しいから、クラシックは弾けない」
「最近はピアノ弾きばっかりで音楽家が居なくなった」

…等々、全ての思いが一致。

本当に音色をコントロールしたいピアニストはみんな困っているのだ。
「そりゃ仕事だから我慢して弾いてるけど…」というピアニスト達の声を、メーカーも調律師ももっと重要視すべき。
このようにしっかりした目的意識を持っているHさんのようなピアニストとの仕事は本当にラク。
求めているものが同じだからだ。
しかし残念ながら、これがわかるピアニストのほとんどが男性なんだ…。
「このピアノ持って帰りたい!」と最大の賛辞を頂いてホッとしました。
もちろん本番も良い音で鳴り響いて、サイン会にならんだお客さんが何人も「素晴らしい音でした!」と言ってたので、喜んで頂けたようです。

搬出までの間、小学校の時「ツタンカーメン展」を見に来て以来の科学博物館なので、あの時展示されていた南米(多分エクアドルだったかなぁ)の人間の干し首とメキシコのミイラを探したけどありませんでした。
残念…もう一回見たかったのになぁ。
そうそう、江戸時代の女性のミイラが展示してあったぞお。
あと手前が忠犬ハチ公と後ろが南極のジロー。ハチ公は結構大型犬だったんだね。

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東京・春・音楽祭                              3/17

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昨日、東京文化会館にピアノは搬入してあったので、今朝は9時入り11時アップで調律。
いよいよ「漆原啓子/練木繁夫 ベートーヴェン・ヴァイオリン・ソナタ全曲を1日で聴く」の本番です。

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とは言うものの、昨日も今日も通し稽古をやってるし、先週は何日か松濤サロンやスタジオで練習。
三年間に渡って「笠懸野文化ホール」でこのレコーディングをやってきたので、もう何十回聴いただろう(笑)
今日は14時から前半5曲、1時間休憩の後、後半の5曲。
しかもそれぞれにアンコールを2曲ずつ弾くので、終演は夜9時。
朝9時~11時の調律以外に、前半と後半の間に調律の直し時間が予定表には入っていたけど、やはり現場ではハプニングが起こるもの。
ピアノをチェックしようと思ったら、なんと写真撮影が入るらしい。

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つまりアーティストの本番風景を撮るのだから、ピアノは明け渡して客席に避難(笑)
さぁ、これで再調律の時間はなくなった。
ヴァイオリン・ソナタ10曲を連続で弾いて、果たして調律が最後まで保っていられるか…。
私にも初めての経験!
いつもなら、後半はやることがないのでロビーでワイン飲んでヘラヘラしているのに、さすがにちょっと心配になって全曲客席で聴く事にした(笑)
今日はリハーサルも入れたらソナタを15曲くらい弾きっぱなしになるからなぁ…。

しかし私はコンサート・チューナーの仕事で最も重要なのは、目立たない事、つまり迷惑をかけない事だと思っているので、アーティストが時間ぎりぎりまでリハーサルに打ち込んでいる時に、途中で遮って調律の時間をくれとは言わないし、途中でめちゃくちゃに狂ってきても「調律の時間がなかった」とか言い訳をしたくない。
つまり、音楽を邪魔するほど狂わない調律ができるように修行すれば良いわけだ。
今日は雨だけど、幸い昨夜搬入してステージ上にピアノを設置しておいたので、空気にもなじんできた。
今朝は2時間ちゃんと調律時間はもらえたから、なるべくアーティストやカメラマンの人達にステージを空けるべきだ。
これも知り尽くした楽器を持ち込んでいるからの安心感。

休憩中や終演後は、ステージのピアノを見にくる人達や、ロビーでピアノの話の質問攻め(笑)
そして演奏マラソンの長丁場を最後まで素晴らしい音程で弾ききった漆原さん、何万という音でそれを支えた練木さん、お疲れ様!
練木さんは明日からもうアメリカに帰るので打ち上げにも出ずにすっ飛んで帰ったけど、ゆっくり休んでね~!
最後まで音楽を汚さずに保った調律をやり終えた自分とピアノも、ちょっと誉めてあげようかなあ~(笑)

このコンサートは、TBSのクラシック専門インターネット放送局「OTTAVA」にて、3月17日(土)13:00より約9時間にわたって、テレビ番組形式での動画配信による特別番組でも放送されました。


ホロヴィッツの写真                            3/16

先日雑誌の取材で来られた写真家のHさんが、ホロヴィッツピアノを見て「ホロヴィッツが初来日の時に写真を撮ったのは、私の父なんですよ…」とポツリ。

聞いてびっくり!!

実は83年のホロヴィッツ初来日時の写真が、意外と見つからなくて探していたので、これはラッキー!ってわけで今日持って来て頂きました!
貴重なポジフィルムの中から、CD75の写真をメインに何枚かお借りして使わせて頂く事にしました!これで完璧(笑)
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夕方サブちゃんがピアノを引き取りに来て、東京文化へ17時搬入。
今日から上野で開催される「東京・春・音楽祭」のリハーサル。
明日はここで漆原啓子/練木ショゲオさんのベートーヴェン・ヴァイオリンソナタ全曲を1日で聴くコンサートがあります。
今日はピアノをもっと早く入れたかったけど、ステージでは17時までスタインウェイの保守点検をやっていたので、アーティストはピアノ搬入まで地下のリハーサル室で練習(啓子ちゃんだから稽古か?)をやってもらって、18時からステージに上がってもらいました。
通し稽古はすでにソナタ第6番まで終わっていたけど、まだ先は長い(笑)

さてこれから1ヶ月上野の森で行われる「東京・春・音楽祭」に、今年から我社も参戦。
これが終わるとすぐにラ・フォル・ジュルネと音楽祭が続きます。
この時期はさすがに我がC&Aのピアノも大量に出払って、広くなった床にワックスをかけたりします。
昨年は3.11の震災で自粛ムードだったけど、やっぱり音楽の力で、日本中を元気にしたいね!

相模湖レコーディング最終日                     3/15

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順調なテンポでスケジュール通りに進んできたレコーディングも、今日が最終日。

毎晩ホテルの近くで呑み会(笑)
今回は寒かったので我々は日本酒!
昨夜も調子に乗って、お銚子で熱燗呑んでたら、グラグラ!銚子で地震(笑)
いよいよ近づいて来たかな…?
あの関東大震災も直下型と言っても震源地は相模湾だったらしいから、東京の真下でなくても大震災になるんだからなぁ…。


昨夜は呑みすぎて夜中に目が覚めてあまり眠れなかったけど、調律師の朝は早い(笑)
ホールには9時入り。
昨日は2日目でピアノも安定し、調律の変動も少なくなってきたので、他の調整に時間が使えた。
みんながお昼を食べに行ってる間に、気になっていた次高音セクションの調整。
音とタッチがなんとなくリニアでなく、フォルテで叩いた時わずかにパフッという感触が残る課題(天井が高いホールでないとほとんど気がつかない程度)に取り組んだ。
版画やオンディーヌの時には気にならなくても、映像の時には、気になるので、全く曲によって聴こえ方が違うのだ。
次高音のあるセクションのみ打弦位置を2ミリ手前にすると、問題は解決して音色とタッチの繋がりがスムーズになった。
本番中の休憩時間にシャンクからハンマーを抜いて打弦位置を変えて整音とタッチ調整をやり直すなんて「ピアノマニア」の世界だね(笑)

夜7時、無事に全曲録り終えていつも通りのフォトセッション。


相模湖レコーディング2日目                        3/14

若いのに海外生活10年以上のF君は、フランスを経て今はベルリンに住んでいるらしく、先週このレコーディングの為に帰って来ました。
噂には聞いてたけど、耳の良さはピカイチ。
音色の粒のわずかな不揃いを指摘するレベルは並みの調律師より格段に上。これは音楽家にはとても重要な事だ。

いかに音を外さず楽譜通りに弾けましたと言うピアノ弾きのほとんどは、自分の音を聴いてない。(本人は決まって私は音色にこだわっています!と言うけれど‥)
こんな場合は、ただ単に物理的に弾きやすいピアノがあれば十分。


ドビュッシーの曲は微妙な陰影を表現する為にソフトペダルを多用するので、ペダルを段階的に踏んでいっても音色の粒は揃っていなければならない。
コンサートの場合は数時間で終わってしまうから、それほど難しい事ではないけど、3日間朝から晩まで弾き続けるレコーディングでは、時間の経過と供に鳴りムラが出てきてしまう。
その度に調整を繰り返し、じっくり作品を作り上げて行くからレコーディングは楽しい。

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ドビュッシーが50歳、亡くなる8年前の1912年に生まれたピアノCD368(ルイス)は、当時この圧倒的な表現力で、鳴っていたんだろう。
もっとも、技を持ったピアニストでないとコントロールできないんだけどね(笑)


ドビュッシー録音                             3/13

今日から3日間、相模湖でコロムビアとレコーディングに入ります。
全曲ドビュッシーで、ピアニストはコロムビアでのデビューアルバムになるF君。
今年はドビュッシー生誕150年。
使用ピアノは1912年生まれで、今年100歳のCD368(ルイス君)、ドビュッシーが50歳の時のピアノだ。
なんともゴロの良い数字が並んだものだ。

昨夜コロムビアから録音機材も引き取ってきたので、車2台で相模湖交流センターに朝9時入り。
実は今日、13時搬入で紀尾井ホールでK嶋ちゃんと江口君のリサイタルが入ってたので、非公式にCD75を持って行ってホールでの音のチェックも兼ねて、豪華なコンサートにする筈だったのに、なんとWブッキング。
レコーディングの日程が仮抑えのまま確定していたらしい。
最近こんなミスが目立つ…。

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朝の様子でレコーディングが大丈夫そうなら、音決めが終わった時点で、1人スタッフを残して紀尾井ホールにすっ飛んで行く事にしていました。
渋谷で紀尾井ホール用のピアノを積み込む12時30分までに決断しなければなりません。
レコーディングは調律が終わり、音決め開始。
ドビュッシーは音色の勝負。
ショパンのようにブリリアントな音色のピアノに一枚薄い布をかけたような微妙な音色、そして絵の具のパレットのように色彩豊かな音色が出せなければならない。
これは昔、故ジェルメーヌ・ムニエ女史と「喜びの島」をレコーディングした時の彼女の要求。


当時フランス物、特にドビュッシーの録音は、音源が遠くで鳴っているピンボケたものか、近すぎるか、極端なものしかなかった。
こりゃちょっと違うだろ…もっと本物を録音したい、と考えて、ドビュッシーの弟子の中でもアシスタントを探したら、ご存知マルグリット・ロン(ロン・ティボーコンクールのロン女史)に行き着いた。
もちろん故人だったけどロンのアシスタントはジェルメーヌ・ムニエ女史で当時現役バリバリ。
ならばムニエさんを日本に呼んでレコーディングと公開レッスンをやれば、ドビュッシー~ロン~ムニエと直系のフランス音楽が表現できるはず。

ロンより証拠(笑)

ムニエさんは楽譜のプリントミスまで指摘できる自信に溢れたドビュッシーを残してくれました。
ドビュッシーをハンブルクの新しいピアノで弾くと、色彩が乏しく表現力に欠けてつまらないので、フランス物はCDが売れない、演奏会で客が入らない原因ではないのかとさえ私は思っています。
音源が遠すぎず、輪郭がはっきりした部分もあるけどブリリアント過ぎず色彩豊かな音色は、当時のフランスの点描画を見ると、なるほどこれか!と理解できます。
今日はドビュッシーの版画を録音するけど、甘ったるい昨今のピアノで弾いたら、版画も漫画になってしまう。
音決めをしながら、ついに決断した。

「紀尾井ホールにはF1を運べ!」

本当にごめんなさい。今日は私は紀尾井には行けそうもありません…。

紀尾井の大役はスタッフNに任せる事にした。
しかし、Wブッキングするなよなぁ…



朝からお客様が大勢                          3/12

メンテナンスルームでCD75の調整をしながら、壁に取り付けた60インチ液晶モニターで「ホロヴィッツinロンドン」を見てたら、今まであまり気にしていなかった事を発見!

ショパンのバラードを弾く前に、椅子とピアノの位置関係に違和感があったのか、ホロヴィッツが椅子に座ったままこのCD75を両手でエイャ!っと左に振った!

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この時ホロヴィッツはなんと80歳(笑)
普通は椅子を動かすよなあ…。

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それにしてもでかい指だね…。

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ダイアナ妃はウィリアムズ王子出産1ヶ月前だからなのか、ちょっと顔が違うね(笑)
ビデオって面白い(笑)


何だかサロンが騒がしいので行ってみたら、今日はN木/U原さんの練習だと聞いてたのに、大勢の人!
なんと今月から来月中旬まで上野近辺で行われる「春音楽祭」のPV収録らしい。

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音楽ジャーナリストのH田さんの司会でN木/U原さんとピアノを弾きながらトークし、TBSのスタッフが撮影。

13時には、いつものN響のメンバーがリハーサルに来るので、仕方なく定休日だったカフェを急遽開けて、打ち合わせはカフェに移動してもらった。
連絡ミスで混乱した1日でした(笑)


めぐろパーシモンホール                        3/10

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今日のコンサートは、めぐろパーシモンホールが主催している「楽器の秘密」という人気シリーズより、「ピアノのひみつ」です。
昨年この企画を頼まれた時、スタインウェイを年代順に3台並べて、時代によるスタインウェイピアノのキャラクターの変化をやろうかと思ったのですが、小ホールなのでステージに3台並べると身動きが取れなくなってしまう。
そこでまず、ほぼ同年代のハンブルクとニューヨークを2台並べて、音色の違いを聴いてもらい、次にニューヨークはご存知F1を持って来て、アクションを2種類入れ替えると、まるで別の楽器のように音色もタッチも変えられるってことを、江口君がトークを交えて弾き分けるプログラムです。

このダブルアクションは、1993年、私のリクエストでニューヨークのスタインウェイ本社に作ってもらったもの。
それ以来、各地のコンサートやレコーディングで活躍しています。
笠懸や富山のホールでもマネをしたようだけれど、趣旨がはっきりわからないままダブルアクションを作っても無理。
結局セカンドアクションの方は、ほとんど使われてないようです。

元々、時間さえあれば、調律師は技術でピアノを全く別のキャラクターに変えられるのです。
だからパラパラって弾いただけで、こんなピアノは嫌いとか好きとか簡単に言わないで下さい!
しかし変えるには時間がかかるので、あらかじめ別のキャラクターにしたアクションを作っておけば、それを入れ替えるだけ、わずか1分で全く別のピアノのようになるのです。
そういった可能性を証明するため、本当は調律師協会などが「調律師の仕事は調律だけではなく、タッチや音色変えることもできる」って事を認識してもらえるよう、もっとアピールしなきゃいけないよね。

もちろんこのセカンドアクションも、コンチェルト用のパリパリに鳴る仕様、歌の伴奏のように大人しいまろやかバージョン、羽のように軽いホロヴィッツアクション、重めのルーヴィン・シュタインアクションなど、変幻自在に調整可能なので非常に便利なのです。
しかし今日は、2台のアクションの違いが明らかに客席でわかるように弾き分けなければならず、それは普通のピアニストではまずできません。
大変な事を余裕でやってのけた江口さん、お疲れ様(笑)



続 ホロヴィッツピアノ                        3/8

昨日の日記に載せたホロヴィッツピアノCD503のデータ集2ページ目には、整音について面白い事が書いてあります。
なかでも「ハンマーは数ヶ所、別のセットのものが入っている。」の部分は笑えます。
日本の感覚から言うと目を三角にして怒る調律師がほとんどでしょうね(笑)
我社C&Aの貸出用スタインウェイも、全く同じ。

新品に交換して整音をやって、毎日のようにコンサートやレコーディングで使い込んで、やっと馴染んできた状態のハンマーは、良い音色やタッチを何年も保っているわけではなく、本番のたびに弦の当たりを見たり、整音でファイリングしたりして行くとフェルトが減っていきます。
なので、ある限界に達したハンマーだけ(特に良く弾く中高音域)だけを部分的に交換します。
せっかく最高の状態に保っているハンマーをまた全部新品に交換するのはオバカです(笑)
また1から整音タッチ調整のやり直しをやり、馴染むまで弾き込まなきゃなりません。
こんな場合、限界ポイントを超えた数個のハンマーから、徐々に交換するのがベストなのです。
それなら両隣のハンマーに基準を合わせるだけですから作業も早いし、急に全体の音色やタッチが変わる事もありません。
日本人技術者が見たら、「何てひどい修理だ!ハンマーがバラバラで揃ってない!」と言うでしょう(笑)
それは単に見た目の問題で、目をつぶって弾いてみると、どこが交換したハンマーかわかるピアニストはいません。
逆に言うと、部分的に違うセットのハンマーが付いていてもわからないように整音&タッチ調整をするほうが、余程難しい技術です。
これは常に最高のコンディションを求められる貸し出し用スタインウェイだからこその技ですね…。

しかしホロヴィッツやグールドでさえ、気に入ってたピアノを勝手にオーバーホールされてしまい、真新しくなったピアノを弾いてがっかりして、そのピアノを弾かなくなったことがあります。
スタインウェイ社でも、こういった過ちを犯す事があるんです。
アーティストの立場にあるフランツ・モアなどの現場のコンサートチューナーと、常に新しいピアノが最上と思っている工場の技術者との意志疎通ができていない時に、こんなポカが起きるんですね(笑)




ホロヴィッツピアノ                             3/7

弦の引っかかりも直り、昨日からアクション関係の調整に入っています。
ホロヴィッツピアノに関しては、89年にホロヴィッツが亡くなった翌年に、スタインウェイがCD503の詳細なデータを計測していますが、実はこの数値を他のピアノに当てはめても決してホロヴィッツピアノになるわけてはありません。

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スタインウェイは個体差が大きいので、CD503をホロヴィッツの好みのタッチに調整した結果が、この数値だったという事なのです。
したがって数値が重要ではなく、目に見えないタッチの感触が全てなのです。


20数年前にニューヨークで始めてこのピアノを見た時の記憶は強烈で、当時の私のピアノに対する常識を根本的に覆してしまうものでした。
その当時の日本では、車やカメラもピアノも欧米のトップブランドを徹底的に分析して数値化し、それを再現すれば同じ品質の製品が作れ、更に材質や加工精度を上げればより良い物か作れて、世界に追いつき追い越せる筈だ…という理念で突っ走っていました。
これはある意味正しい選択であり、故にある時期、世界中にメイド・イン・ジャパンの製品が溢れてバブルを謳歌できたわけです。
しかし、材質と精度を上げた結果、高品質、長寿命の工業製品が作れるようになっただけで、残念ながら欧米の芸術的な手工芸品や、明らかに感触やフィーリングという数値ではなく五感でしか判別できない部分は、明らかに劣るのです。
数値化してコピーを取る事をデジタルと表すれば、人間の五感はアナログ。
今の技術では、このアナログのデータを取るセンサーは開発されていません。
それは時間軸という重要なデータを軽視してきた結果なのではないかと私は思います。
欧米の技術をデジタルデータでコピーして高度成長してきた日本ですが、今やアジア諸国に、同じ手法でほとんどの部分を追いつき追い越されてしまった現実を認めざるをえません。
スケートのフィギュア競技に例えると、いかに我々は技術点重視、芸術点軽視の道を歩んで来たかがわかります。

スタインウェイの話に戻せば、芸術的要素はアナログの世界。
全ての巨匠達と作り上げて来た失敗と成功の長い歴史は、経験という重要な時間であり、最高に完成されたスタインウェイには五感で感じる「Spielart」という感触があります。
技術者達はこれに向かってピアノを調整して行くのですが、これはマニュアルにも書いてありませんし、数値は参
考にしかなりません。


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昨日、メンテナンスルームに待望の60インチ液晶モニターが入りました。
いよいよ最終段階の調整に入ります。
当時のホロヴィッツの映像を大画面で見ながら、実写と比較して鍵盤の深さやダンパーの上がるポイントをチェック、音色で大体ハンマーの重さもわかるので確認作業に入ります。
DVD映像を止めてチェックするところは、結局私もデジタル人間かい?と思いながら、いやいやデジタルの良いところはどんどん取り入れても過信はしないって事ですよ(笑)
余談ですが、映像には無かった傷をボディに発見して修復したり、結構面白いです(笑)
さぁ、このピアノで来月はレコーディング。時間がないぞ、頑張ろう!

ご無沙汰してます                            3/5

この一週間は出張がないので、ほとんどの仕事をスタッフに任せ、私はメンテナンスルームに籠もって、ホロヴィッツピアノの仕上げの追い込みです。

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1983年、衝撃の初来日の際、度肝を抜かれて調律師人生を変えたあの憧れの《CD75》が目の前にあって、今自分がメインテナンスをやっている事が不思議です。
実は昨年私のところに来る前、ランランが気に入って自宅に借りて半年も返さなかったという事があったのですが、昨年私が決断しなければ、チャイナマネーで、今頃は中国に売られてたかも知れませんね(笑)
スタインウェイのコンサート部調律師だったタリーさんが責任を持ってメンテナンスをやっていたので、ほとんどがオリジナル状態だったけど、調律はアグラフに弦が引っかかってジャンピングするので微妙な調律はめちゃくちゃ難しい。
そりゃ弦やアグラフを新品に交換すればわけないけど、綺麗に直す事はオリジナルを損なうだけなので、部品はオリジナルを補修しながら直すという気の遠くなるような作業。

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ホロヴィッツはあの時、この弦を震わせて音を出したのだから、再使用しなければならないのだ。
チューニングピンを半周だけ戻して弦を外し、アグラフを抜いて、リーマを通して傷を削ってまた同じ弦を張る。今日、ようやく引っかかっていた部分が全て解消して調律が格段にやりやすくなった。
長い道のりだったね(笑)

ヴィンテージスタインウェイが3台並んだメンテナンスルームを、この時期に過乾燥から守っている加湿器ケロヨンが、疲れた神経を癒やしてくれます(笑)

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明日からタッチ調整だ、楽しみだね!



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