
ここのスタインウェイはアーティストにとても評判が良いと、よく言われます。
それは我が社が保守管理しているからです(笑)
そりゃレコーディングスタジオには長く関わってますからねえ~。
ホールのピアノ調律と最も違うのは、レコーディングは当然ながら音が残るということです。
つまり証拠が残るので言い訳できません。
レコーディングは1日あたり大きな予算をかけるので、ピアノにトラブルがあって録音が止まったりしたら大変です。
責任の重さが違うので、常にピアノの状態管理は必要です。
クラシック録音はコンサートホールを借りてワンポイントで録るので、スタジオはほとんど使いません。
それ以外の音楽は、ソロ演奏は少なく編成も複雑なので、スタジオでの録音になります。
スタジオはブースが別れているので、それぞれの楽器を別トラックに録って後で重ねる事ができるのと、うまくいかなかった楽器のみ録り直しができるのです。
基本的に調律することはほとんど同じなんですが、ホールの録音よりスタジオはピアノにマイクが近いので(残響は後で付ける)、楽器から出るノイズは特に目立ちますから、気を抜けません。
ハンマーからの直接音も良く拾うので、私は音色を少し柔目にしますが、エンジニアの好みと腕によってこっそり変えることもあります(笑)

クラシックを録り慣れたエンジニア(ホントに数がすくないけど)は、EQは全くスルーします。
午前中から録音を始め、夜まで同じ曲を録り続けたりすると、楽器が良く鳴って来て音色が変わってしまうことがあります。
あまり音色が違いすぎると編集箇所がわかってしまうので、最後のマスタリング作業の時に若干EQで調整する事もありますが、まぁそれならもう一度録り直したほうが良いね、って事のほうが多いです。
ホール録音とスタジオ録音の大きな違いは、クラシック以外ほとんど調律後の立ち会いを頼まれないことです。
スタジオはエアコンのオンオフでピッチが変わってしまうことがあるので、それも想定して調律をしなくてはなりません。
立ち会いがないということは、後で直しが出来ないので、なるべく調律が長持ちするように努力するのですが、あまり音が狂わないと、以後立ち会いを頼まれなくなり、下手くそな調律師のほうが稼ぐというなんだか納得いかない現実もあります(笑)
とは言っても人は人。
いくら努力しても良ければピアニストとピアノのお蔭、悪ければ調律師のせい。
悲しき裏方人生。
好きじゃないと出来ません、この仕事(笑)
いつもそうだけど、なんでコンサートって同じ日に重なるのかねぇー。
今日はお日取りも良いのか、5ヶ所の現場をスタッフが手分けして回ってます。
私は早朝に市川市文化会館の調律を終えて、電車で銀座王子ホールへ。
朝サブちゃんが搬入したF1を調律してリハーサルと本番の立ち会い。

しかし王子ホールの搬入は、正面玄関からお客さんと同じエレベーターに乗せて客席を通ってステージから上げなきゃならないから大変。
まぁ場所が銀座だからしょうがないか。
その他のコンサート現場から続々と連絡が入り、無事に進行中。
市川のコンサートは、前半に江口君がワーグナーのソロを弾くんだけど、全体はヴァイオリンとのアンサンブルだったので、ピアノはホールのハンブルグスタインウェイを使いました。

25年くらい前の、まぁ、ハンブルグスタインウェイとしては最高レベルのピアノなので、どんなワルキューレになるか楽しみにしていましたが、やっぱり物足りないの声が出てきた。
簡単には表現できないけど、すごく難しいエチュードを聞いてる感じと言うか、倍音が素直すぎて音に立体感がない。
色が少ないので、この曲をピアノで弾く意味がない気がする。こんな感じかなぁ…。
そう思うとやっぱりヴィンテージって凄い楽器なんだな。
気がついたら21日だぁ。
今月は音友の連載の原稿まだ全く書いてない(汗)
今年から始まった私の連載も、もう11月号なんだね~。
今回はCDピアノの事を書くと予告したので、頭の中には内容もできているけど、それを文章にするのに結構頭を切り替えないと書けない。
毎回2400文字以上と決まってるんだけど、書き始めると、文才がないからどんどん文字数だけが増えて行く(笑)
今回は内容からして写真が増えそうで、文字数考えると没になりそうな写真がこれ。
屋根が一回り小さいとか


脚やペダル枠が窓のあるデザインの写真。


わかるかなぁ…
今週は、ローズウッドピアノがわが社に来る前の写真持ってる人とか、

ホロヴィッツのSP~LP~CD全部持ってる人が来て、ワイワイ楽しい出会いがありましたねぇ。
今日からちょっと三重県にいってきます。
新東名静岡パーキングに止まったら、なんと隣にサブちゃんのトラックが停車!

偶然とは恐ろしいものですなぁ(笑)
大好評で6回を無事終了した「ピアノマニア」シリーズ。
今日からまた新しいシリーズが始まりました。
もちろんヴィンテージスタインウェイを使って「ヴィルトーゾを目の前で聴く」をテーマに、松濤サロンでしかできないコンサートシリーズです。
初回は江口玲!

このアーティストラインナップを見ても、このシリーズがただ者ではない事がわかります(笑)
発表と共にすぐ完売してしまったので、急遽昼公演を追加。
かわいそうに江口さん、二回もベートーベンの熱情を弾く羽目になりました(笑)
今後のこのシリーズに乞うご期待!楽しみだなぁ。
今年から、また新しいホールのスタインウェイ保守点検を依頼されたので、初日だけ楽器の様子を見に行きました。
こういった仕事はスタッフに任せているので、私の出番はありません(笑)

会社に戻ったらサロンで先日録音したCDのジャケット写真撮りの真っ最中。

結婚式みたいだね~。
音大生は出会いが少ないから進化系連弾って新しい婚活になるかもね(笑)
今月は学校関係のグランドピアノのオーバーホールが立て続けに入っていて、スタッフたちは朝から晩までピンを打ち、弦を張り、会社に帰ったら持ち帰ったアクションの修理。
今年入った新人君たちも、日に日に成長しています。
今日はスケジュールが空いたので、スタッフの代わりに、都内のスタジオのレコーディングです。

その後は訪ねてくるお客さんと打ち合わせやら、FMの番組収録やらで、平和な1日(笑)
今月11日、ワシントンに飛び立つバンドネオン奏者M君の依頼で、象牙のボタンをプラスチックに改造する仕事を夜な夜なやってます。
ピアノも象牙鍵盤は輸出入がワシントン条約で禁止されているので、国外に持ち出したり持ちこむ場合も、「その象牙はワシントン条約で禁止になる前に作られたものである」という証明書(サイテス)を取る必要がありますが、通常は3ヶ月位懸かるのでM君は焦った訳です(笑)
そんな時用のプラスチックボタンがなんとかドイツで手に入ったので、ともかくバンドネオンをばらして、鍵盤を1本づつ外して象牙ボタンを切りとり、プラスチックボタンを同じサイズに切って貼り付ける作業を、延々とやってます(笑)



タカギクラヴィアの「クラヴィア」とは元々鍵盤楽器の事だから、ピアノに限らず鍵盤楽器全てを扱うことがモットーだけど、バンドネオンを修理しながら思った。
「これは鍵盤じゃない。ボタンだから」って断りゃ良かったなぁ(笑)
ふぅふぅ言いながらやっと期限前に完成!
喜ぶM君の顔みて一安心。
バンドネオンって面白い楽器!またまた扱う楽器のレパートリーが広がった(笑)
秋になるとお馴染みフコク生命のチャリティーコンサートが始まります。
いつもの仕事はスタッフに任せて、私がチャリティーを担当、もう十年以上やってるので、私のライフワークの1つになりつつあります(笑)
今日と明日は金沢。武田/中井ご夫妻の2台ピアノで、今回は2台持ち込みです。
金沢は時々来るけど、このホールは初めてでした。
我々は昨日から金沢入りしているので、今朝は余裕と思ったら、金沢市内は一方通行が多くて、ホールのビルは見えてるのに、なかなかたどり着けない。
しかも搬入口の前の道路が狭くて3トン車は大変。
なんとか搬入して調律を始めたら後発のトラックが到着、やっと2台揃いました。



いつもの慣れたスタインウェイで武田さんお得意のカンパネラも軽やか(笑)
今夜のホテルは日航ホテル金沢。なかなか立派なホテルでした!
明日はチャリティーのメインである地元の施設訪問なんだけど、残念ながら私はのっぴきならない仕事があって、東京に戻らなければならないので、明日はスタッフに任せて、一足先に帰ります。
このチャリティーはコンサートホールに来れない施設の人達の為に、前日の本公演で使用したピアノを運んで、本公演そのままのコンサートを施設でやるので、そんじょそこらのチャリティーとは全然違うのです。
ピアニストにとって最大のハンディである、現場のピアノで完璧な演奏を求められる欠点を払拭した理想のシステムは、長年やっていると結構面白い事が起きます。
前日にやった地元のコンサートホールより、施設の体育館のほうがよく響いて音が良いという事もよくあるんですよ(笑)
また我々のピアノ持ち込みシステムの運搬車開発は、この訪問コンサートでのアイディアによるものがほとんどなんです。
搬入が難しいほうが燃えるんですねぇ(笑)
さぁ今夜は金沢の旨い酒。
やっと時間がとれたので、お馴染み上野不忍の英多朗寿司に行って来ました。
と言っても、ここにはお腹が空いただけでは来られません。
お祝い事の時とか、自分へのご褒美(笑)
今夜は某若手ピアニストがモスクワに帰るので、しばらく旨い魚なんか食べれないだろう~ってなわけで、連れて来ました(笑)
いやぁこの店はいつ来ても技が凄いね。
先付けから

松茸の土瓶蒸し、

白身の刺身が続いて

釣りキンキの煮付け(写真撮るのも忘れる位旨い)
大間の鮪、北海道の生うに、

鰻ご飯と

デザートいつものお任せコース。
いゃ~切って並べるだけじゃない、技が全てのネタに手間暇かかってる。
それでいて偏屈じゃない親方が素晴らしい。
どんな美味しいお店でも偏屈な料理人が「黙って食べろ!」みたいな店は絶対行かない。
そんな職人は余裕がないんだね。
努力したのだろうけど、いっぱいいっぱいなんだろね(笑)
そんな人の料理より天才の料理が食べたい。
食も音楽も人を楽しませるためのものだからね。
毎年恒例のこのコンクール、今日はピアノ部門です。

ここのスタインウェイはオーバーホールしてから格段によくなった!
本当は立ち会いしたかったけど、今日もコンサートが重なってるので仕方なく次の現場へ。
進化系Duoのレコーディングもいよいよ最終日。

昼御飯はホール前の公園にあるレストランにいけました。

昨日も一昨日もお休みだったので仕方なくレストランを探して車で放浪したのですが、今日はやっと八海山膳にありつけました。
ホールの壁には五線譜にラッパのようなモニュメント、春の小川の楽譜になってるんだね。

しかもこのラッパから水が出る(笑)
自然豊かな環境でゆっくり録音できました。
しかし今回の超絶技巧Duo面白い!
無事録り終えて、搬出して帰京。
今回の録音はピアニストとエンジニアと私の最小人数でやってみました。
これが究極のハイクオリティで経費節約(笑)
普通このレベルのレコーディングだと、ピアニスト、エンジニア、アシスタント、ディレクター、調律師、それに往復の運送屋が必要。
調律師が1人でトラックを運転して機材も積んで来たら、これだけ経費節約できる。
調律師ってやればいろんな事が可能になる面白い職業。
ただホールのピアノの音を合わせるだけじゃあねえ~企業努力!(笑)
22時には渋谷に戻ってきたので、もう一仕事できた!お疲れ様~
ここでの録音の楽しみは、なんといってもホテルの朝食。

南魚沼にあるので、コシヒカリ中のコシヒカリ、南魚沼産が食べ放題!太る!
今日も快晴で録音日和、CD75のパワー全開で楽しい録音が続きます。


明日は搬出があるので、今夜は前打ち上げ。
前回の録音でも飲んだ八海山の利き酒セット(笑)

そうそうこのホテルは普通のビジネスホテルだけど、大浴場あり。
今日もトラブルなく順調!
さぁ今日から3日間、新潟に籠ってレコーディングです。
朝六時半に渋谷を出発して9時にホールに到着!
お馴染み伊賀&山口Duoのホロヴィッツ・トリュビュート・アルバム録音です。
400席クラスの相模湖、牧岡、岡崎のホールは、小品を録るには問題ないけど、スケールが大きい曲ではやはりアンビエントが不足。
音が飛んでいって帰ってくるまでの時間が欲しい。
とは言っても風呂桶のように響けば良いって訳じゃなく、飛んで行った音が帰ってくる方向が真っ直ぐ戻って来て欲しいね~。
この新潟の小出郷はキャパ1200。

素直な音で録れるから最近のお気に入り。
さぁマイクセッティングと調律が終わって、最初の録音は、お二人の編曲によるカルメン変奏曲。
ホロヴィッツお得意のバージョンだけど、4手に編曲されて更に超絶技巧!面白いねぇ~。

今日はこの曲だけ録って、ホテルにチェックイン!
明日は南魚沼産のコシヒカリ和膳食べるぞ!
昨日、コンサート終了後の打ち上げで、除夜の鐘のように12時のカウントダウンでシャンパンを飲み干し、いよいよ彼も今日から大人!

昨日の「十代最後のコンサート」とは少し内容を変えて、今日も満員のお客様を魅了!

終演後は、カフェでささやかなバースディパーティを開きました。

才能ある若者の旅立ちです。
今年は昨年より少し大きくなって帰って来たから、来年は更に貫禄が出るかな(笑)
大胆に自由に、そして謙虚に世界に羽ばたいてほしいと切に願います。