ヴィンテージ・スタインウェイ 4/19

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2月からとりかかっていた1893年製のヴィンテージ・スタインウェイB型のオーバーホールもようやく仕上げ段階。
このピアノは先日のゴールデン・スタインウェイと1年違い。
まぁこの時代は完全に手作りだったから、ピアノが完成するまでの期間が長く、またアートケースモデルは普通の黒いピアノに追い越されることも良くあり、製造番号と年式早見表は必ずしも一致しません。
正確には本社の台帳に「何月何日に完成、最初のオーナーの納入先」までだいたい書いてあるので、必要な時にはそれを参照します。
ともかく「連打できない、鳴らない、鍵盤が重い」の三重苦から抜け出して、本来のタッチと音色を取り戻し、見違えるようになりました。
100年前の元気だった頃にタイムスリップできて、ピアノも喜んでいるみたい(笑)
豊富な知識と経験がない技術者の手に掛かると、迷いに迷ってとんでもない改悪修理をされがちですが、こうしてオリジナルに戻してあげると、ちゃんと巨匠時代のスタインウェイの性能を発揮します。
このピアノもまた、つぎの世代に引き継ぐことができました。
年度末の殺人スケジュールが終息して、てんてこ舞いだったスタッフもようやく手が空いたので、今日は二人体制。
私がダンパー調整やっている間に、スタッフは緩くなったキャプスタンボタンの埋め木。
弦が落ち着いて来るまでこれから月一回のペースで調整に来ます。



久しぶりの東京            4/13

神戸~宝塚で仕事をして、戻って来ました。
今夜は仕事抜きのプライベートな時間、銀座の有名鮨店「銀座からく」でコース料理をごちになりました。
私の昨年の誕生日祝いなんですが、延ばして延ばして、やっと祝ってもらいました!
自分の誕生日祝いを仕事の関係で延ばして貰うのも如何なものかと思うけど、そろそろ期限が切れそうなので‥(笑)

しかしこのお店は本当に美味しい!
なにしろ大将が本まで書いたワイン好きなので、料理に合わせたワインがずらり。

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あまりの旨さに写真撮るの忘れて、スターターのウニとデザートの卵焼きしか写真撮ってない(笑)
この卵焼きに甘い貴腐ワインがまた合うんだねぇ~。

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音楽の才能と料理人の才能はよく似てるとかねがね思ってるけど、ここに来るとそれを再認識させられる。
料理を食べて、これは何と何を組み合わせてあるとか、この食材にはこのワインが合うとかいった才能は、自然の音を聞いて、それを音で再現できるとか、どんな複雑な和音を聴いても、音の組み合わせが耳コピできるとか、舌と耳は同じだね。
このお店のカウンターで飲み食いしてると、スポーツ界や政治・経済の有名人が普通に隣で食べてたりするので、不思議な感覚(笑)
今夜も呑みすぎたけど、美味しいワインは明日に残らないからまぁ大丈夫!





そして神戸                4/11

昨日スタッフと神戸に入って、今日は朝からゴールデンスタインウェイの調整。

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この楽器は昨年末からオーバーホールを開始して、1月末に引き渡し。
以降、月1回通って細かい仕上げをしています。
修理見積もり依頼が来て、最初に見たときに、どっかで見たスタインウェイだなぁ‥と思って調べたら、私がニューヨークで買ったピアノの本のグラビアに載っていた1894年製のアートケース・ゴールデン・スタインウェイでした。

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世界に1台の特注品。
大きさはC型で、装飾を除けばわが社のローズウッド・スタインウェイとほとんど同じ年代の楽器なので、我々の得意分野。
昨年末に弦を外してピンを抜き、アクションを持ち帰って、工場でオーバーホール。
1月に10日間かけて現地で本体の修理。
平成の大修理を終えて、ようやく復活しました。

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つくばから神戸へ            4/9

昨夜遅く、山梨から中央道~圏央道を乗り継いで雨のなか、つくばのホテルに到着。

今朝は9時から「つくば学園クリニック」にできたばかりのサロンの調律。

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個人のサロンとは思えない音響と豪華な作りで、キャスターの付いたふわふわの椅子はまるで応接間。
くつろぎながら音楽を聞けるし、大ホールの後ろから遠いステージの音を聞くより、本来のクラシック音楽を楽しむ「サロンで贅沢に」の世界。良いなぁ~これが渋谷にあったらなぁ~。
ここに比べたら松涛サロンは廊下だね(笑)

ピアノはベーゼン。
今日は院長の誕生日記念コンサート。
院長のお姉さんはベルリン在住の著名なピアニストで、今日はヴァイオリンの娘さんとのコンサート。
私は次があるので、本番は聞けなくて残念!


牧丘レコーディング最終日      4/8

ローズウッドによるドビュッシー録音も今日が最終日。

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全ての曲は昨日録り終えたので、今日は楽屋で編集作業。
でも録り直しがあるかもしれないから、ピアノもマイクもスタンバイしたままにしてあります。

今回は、ピリオド楽器(作曲された時代の楽器)でドビュッシーを極めるレコーディング。
このローズウッドは1887年製作、ドビュッシーは弱冠25歳ぐらいで2年ほどイタリアに留学して帰って来たあたり。
没が1918年で、ローズウッドが現役で使用されていたのが1925年だから、まさにドビュッシーの生涯と重なる。
今回のレコーディングでは、普段あまり弾かれない作品が、このピアノで弾くとこんなにいい曲だったのか‥とドビュッシーの天才ぶりを再確認することが多々ありました。
それぞれの音域で音色が異なるので、複雑に織りなす音も決して濁らずに全てクリアに聴こえるのです。
現代のピアノでやたらペダルを踏んでもやもやとした響きの塊になってしまうと、ドビュッシーが意図していた曲の本質が伝わらない。
ドビュッシーと言えば初期の有名な綺麗な作品が名曲集としてもてはやされるけれど、このピアノで聴くとつまらないと、スタッフ一同納得しました。

さて、編集の最中に私はホールに併設されている温泉「花影の湯」で、ひとっ風呂浴びてきました(笑)

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このホールは温泉がついてるのが素晴らしい(笑)
ほとんどの曲を編集して、もうピアノは使わない事がわかったので、そろそろ撤収。
江口君は塩山駅から自宅に帰り、明日は名古屋らしい。
ピアノと機材は東京に帰り、私はこれから中央道~圏央道経由で、つくば市までパジェロで走ります。
今夜はつくば博じゃなくて、つくば泊。





牧丘レコーディング2日目          4/7

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昨日順調に録り進んだので、今日は余裕。
プレイバックを聴いて、つまらない曲は有名曲でもバッサリ切り捨て(笑)

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今年130歳のこのピアノはロマン派のあるべき音色をはっきりと教えてくれます。
現代の綺麗な音しか出ないピアノで弾くと普通に綺麗な曲でも、倍音の構成が単純だと単調なつまらない曲に聴こえてくるから面白い。
今では必ず名曲集に入っている曲を、作曲家達が当時「音楽的になんの深みもない駄作を書いてしまった」と吐き捨てる事は良くありますが、確かに奥深い楽器で演奏するとそれが良くわかります。

さて、予定通り全曲録り終えて、早めにホテルに戻る。
この録音環境の唯一の欠点はホテル近辺にコンビニも飲食店もないこと。
ぐるぐる車で探索して、ようやく焼肉屋発見!混んでる!そりゃ他にないものね(笑)

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さぁ、今夜は打ち上げ!



山梨市花かげホール             4/6

今日から3日間、旧 牧丘町文化ホールでレコーディングです。
朝9時にホール集合ですが、私は前乗りだから楽(笑)
東京からローズウッド君も到着して、搬入。
まずは電動ステージを下まで下ろして、客席の中央列を全て外して移動。これが大変。
しかし良い音で録るためには手抜きはできない。
客席を外してピアノをホールの中央に移動して半回転し、ステージと逆方向に向けて設置完了。

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音を吸収する布張りのシートを外して床面積を増やすと、ここは400席だけど大ホール並みの床面積が稼げるし、床に下ろしたのでピアノから天井までの高さがぐんと高くなって綺麗な残響が録れる。

今回のアルバムはドビュッシー。
ローズウッドが作られた1887年はドビュッシーまだ25歳。
亡くなったのは1918年でちょうど同時期に主流だったピアノなので、当時の作曲家達が何故このような曲を書いたのか良くわかる。
ロマン派の時代のピリオド楽器で聴くドビュッシーは、やはり天才だった。

順調に今日の収録を終え、ROUTE INN山梨へ。
このホールの欠点のはホテルが遠い、歩いて行けるところに飲み食い所もコンビニもない。
なので、ホテルのレストラン花茶屋へ。
21時半ラストオーダー滑り込みで急いで飲食(笑)


秩父レコーディング最終日         4/5

順調に進んだので、今日は余裕。

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午後早めに終了して、写真撮影。
集合写真も撮ったけど、告知前なので、ここではアップできません(笑)
片付けて、お昼は秩父名物の野坂の豚丼!

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ここでアーティストと解散!お疲れ様!

我々スタッフはまたホールに戻り、ちょうどやって来たピアノ車にピアノを積み込み。(勿論ここで鍵盤の蓋を取り付け)
私は1人パジェロに乗ってみんなとは逆方向の荒川、三峰方面に走って峠を越えて雁坂トンネルを抜け、わずか1時間半で山梨に到着。
今夜は山梨のROUTE INNに泊まり、明日からここで3日間次のレコーディング!


秩父レコーディング2日目 椅子の話  4/4

レコーディングでは欠かせないノイズの出ない理想の椅子はこのガス式タイプ。

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しかしあまり低くならないので、ピアニストの希望により、トムソン椅子も持ってきた。

初日はこれで録音したけど、今日はもっと低い椅子で弾きたいと言い出した。
ホール中探して、やっと見つけた楽屋の椅子は38センチ!

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鍵盤蓋を外して超低い椅子で弾くのはグールドの専売特許(笑)
もっともグールドは35センチ位の椅子で、ピアノのキャスターもインシュレータに乗せてピアノを上げていたので、相対的にはもっと低い位置で弾いてたから恐るべしだね。

調律師としては鍵盤蓋を外してのレコーディングはとてもやり易い。
コンサートと違ってレコーディングは長時間引き続ける上に、エアコンを入れたり切ったりで温度湿度の変化が激しく、調律はもとよりアクションの状態も変わってきてしまうので、プレイバックや休憩の時間にアクションを出したり入れたり忙しい。
よって鍵盤蓋がないと、調整が楽(笑)
特に今日の曲はピアニシモの連打が多いので、究極の調整でピアニストをサポートする。
ホールのピアノ調整は年に1回の保守点検のみ。夏場、冬場、雨、使用頻度等々で刻々と変わるアクションの状態に対応するには多少の余裕を与えないと、非常に危険な状態に陥る。
普段「まるでF1マシーンのように」と表現するのは、フルチューンのマシーンがワンレースしか持たないとか、サーキットを競い合うには最高のパフォーマンスを得られるが、歩くようなスピードでは逆にコントロールが難しいのと良く似ている。
究極の連打やピアニシシモが可能になる代わりにレガートに囁くように歌いたい曲には向かない。
もちろん、ホールのピアノではこんなことできないから、アーティストサービスで専用のピアノを持って行けた巨匠時代のスタインウェイ・コンサート部の話。
究極を攻めるから音楽が面白い。

さて、超絶技巧の曲からパヴァーヌにかわって、調整は少し元に戻し、今度は音色の粒揃えのほうが大事になる。
さぁ、2日目で収録予定曲は全て終了。
夜は焼き肉で前打ち上げ。
ピアニストが上手いと焼肉も旨い(笑)

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秩父ミューズパーク音楽堂 録音    4/3

半年ぶりにやって来ました、この音楽堂!

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25年前、タカギクラヴィアのコンサート部発祥のホールといえる懐かしいホールで、コロムビアチームとレコーディング。
もちろんピアノは持ち込み。
しかも今回は鍵盤蓋を外してグレン・グールド風にレコーディング(笑)

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オープン当初から約20年間スタインウェイの保守管理をやっていたので、このホールで何百枚ものCDを録音しました。
ステージの音響が太鼓なので、通常のコンサート位置に置くと低音がボケる。
床下に縦に入っている梁も細いので、足で床を蹴ると「ボーン」と太鼓のようになってしまう。
とうとうホール側が客席の前列を外れるように改良してくれたので(バブルの頃だからお金あったんだね)レコーディングの度にステージから客席床にピアノを下ろして録音したり、レコード会社と色々実験したものです。
その後ピアノを持ち運ぶシステムを完成させ、日本中のコンサートホールに行くようになったのは、このホールでの経験があってこそ。
次第にこのホールも話題になり各社がレコーディングをするようになって、なかなかスケジュールがとれなくなった。
合わせてとても良好な関係だったホール側に典型的な昭和のお役人が天下って来て、出入り業者はペコペコしろと言わんばかりな態度。
巷の営業マン達は、ごますり、後ろ向いてベロ出しながらもヘコヘコしてるんだろな~と思いつつ、私は典型的な技術屋なので、理不尽な役人に最後まで頭を下げなかったら追い出された(笑)
まぁいろんな事があったけど、懐かしい思い出。

今回のレコーディングは元々富山で録音と言ってきたけど、最近はこのホールも寂れてスケジュールが空いているし、近くて季節も良い事だし、秩父に変えてもらいました。
「ピアノソロをこの大自然の中でゆっくり録音したい」というわけで、かつて知ったるミューズパーク音楽堂。
レコーディングチームもこのホールは慣れてるので、音もすぐに決まり、お昼にgo!
渋谷のタカギクラヴィアカフェで出しているカレ屋ーのマジョラムは残念ながら改装中でやってない。

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それで、和平蕎麦の「ざるそば芝桜えびかき揚げクルミ汁付き」を食べてホールに戻り、夜まで録音。
アーティストが上手いと録音も順調に終了。
今回は常宿のROUTE INNがとれなくて、秩父第一ホテル。
そのお隣の居酒屋で飲み会。楽しい。



レコーディング・スタジオのピアノ保守点検   4/2

やっと日記が追い付いてきた(笑)
毎月原稿の締め切りがある仕事をやっていると日記を書くのが遅くなり、ずいぶんたまってしまったけど、連載が1つ終わって時間の余裕ができたので、レコーディング中にまとめてアップ。
スマホだとあまり過去の日記は表示されないけど、書いてありますよ~!

さて、今日は都内のレコーディング・スタジオのピアノ保守点検。
ベースの音域がどうも音の止まりがよろしくないと、前から思っていたので、今回はそこを重点的にチェック。
56万台の新しいハンブルグなんだけど、調べて見ると、恐れていたダンパーブロックのスティック!
しかも無視できないぐらいガチガチ。
このスタインウェイは昔のニューヨークのようにフレンジが膠で張り付いているタイプ。
これはダンパーの平行上下を得られやすい代わりに、スティックしたら最悪。
1個ずつ接着されたフレンジを剥がさないとセンターピンの交換ができないという気の遠くなるような作業が続く。
その後このメンテナンス性の悪さに垂直ネジ止めに変更したはずなのに、いつの間にかまた膠止めに設計が戻された。
設計開発のビル・ガーリックとも昔よくこの話をしていて、その時はちょうどネジ止めに変わった時期だったので、よかったねぇと言ってたのに、なぜ最近また戻したんだろ。
よっぽど乾燥してる国に住んでる奴の意見だな。

スタインウェイは何故世界を制したか。
音やタッチという楽器そのものの性能もさることながら、エラールやベヒシュタインに比べて圧倒的に整備性の良い設計だったからに他ならない。
ステージの上でトラブルが起きてもほとんどの作業が休憩時間のうちに終わってしまう。
なのにこのダンバーフレンジの先祖帰りはなんなんだ?

そんなことをぶつぶつ言いながら、やむなくスタッフと覚悟を決めて、アッセンブリーで外すことにした。
ダンパーを全部抜いて、ソステヌートロッドを外して、やっと顔を出すダンパーブロックアッセンブリー。
応援のスタッフを入れて3人がかりで、センターピン交換。
その間に私は会社に一旦戻り、明日からのピアノ選びをピアニストと共にやって、またスタジオに戻って、修理の続き。
ようやく21時に終了。
また元通り組みつけて調整をして弾いてみたら、音は止まるし、鍵盤は軽くなるしで、やっとここ数年の懸案が解決!

お値段?ほとんど無料。
わが社の保守管理しているレコーディング・スタジオなので、楽器のトラブルは結局普段の調律時に自らの首を締めることになるからね。
なんて人が良いんでしょ(笑)


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