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行徳文化ホール I&I   3/10

実は、この日記を書いてるのは4月21日の香川県。
あっちこっちからまた日記が滞ってますよ~と指摘されてました(苦笑)
仕事に追われ、テレビ局やレコーディングの話は公開できず書けない事が多いので、その辺は飛ばし飛ばししていたら溜まりに溜まって4ヶ月。
3日前からほぼ1週間、香川県の観音寺にあるホールに籠もってコロムビアとレコーディング中の楽屋で書いてます。
やっと3月まできました(笑)


この日は行徳文化ホールにローズウッドとプレイエルを持ち込んでショパン/ショパン。
江口/川口が市川でショパン三昧です。
1887年製スタインウェイと1843年製プレイエルは、わずか40年位しか変わらないけど、まるで別の楽器。
同じ時代に共存していたのだから、このスタインウェイが発表された時はびっくりしただろうね。

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さて本番は、まずは川口さんがプレイエルから。
開場とともにホールに入ったお客さんは、ステージ上にいつもと違う2台のピアノが並ぶ光景に興味津々だったので、プレイエルの第一音から聞き逃すまいと固唾を飲んで待ち構えていました。
現代のピッチより半音の半分低いA=430Hzなので、始めは違和感を覚えますが、すぐに川口さんの演奏に惹き込まれていく。
乾いた歯切れの良い倍音や伸びすぎない中低音と、木質で心地よい装飾音。
特筆すべきは輪郭のはっきりしたピアニシモ。
気がつけばショパンが描こうとした本当の景色が目前に広がります。
プレイエルは構造上、早い連打ができませんが、現代のピアノでは連打が早く弾けてしまう。
そうなると、当時とテンポ感も違ってきてしまうので、そこはフォルテピアノを熟知した川口さんの独壇場でした。




あっという間に前半を終えて後半は江口さんが1887年のスタインウェイでマズルカから。

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実はここでビアノのピッチが一気に440Hzに上がるので、急に音色が明るくなった印象を与え、現代のショパンの世界が始まります。
ショパニストと呼ばれたいピアニストは、楽譜で悩むより、こうやって聴き比べればショパンの世界が一聴瞭然。
とは言ってもこのローズウッドはショパン時代のフォルテビアノからわずか40年位しか経ってないので、この後の140年くらいは構造的にはも変わってないということ。
そんな事を考えながら江口さんの英雄ポロネーズを堪能した。

カーネギーホールでこのローズウッドスタインウェイを弾いた時に、今は亡きフランツ・モアにYou are marvelous pianist!と何度も絶賛された江口さんの実力は、このローズウッドスタインウェイのポテンシャルを存分に引き出してくれました。

20世紀初頭のカーネギーホールのステージで聴衆を魅了したこのローズウッドスタインウェイは、新しい時代の大型ホールの隅々までピアニシモを届ける力を秘め、フォルテピアノを席巻して、ピアノの完成型となったのです。
現代に至るクラシック音楽の歴史を垣間見る価値あるコンサートでした。