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真新しいF1のサウンドボードと、駒

午後からはアキコ・グレースが、自宅に置く小型のスタインウェイを見に来るので、調整。
2~3日前にニューヨークから到着した、ピカピカのL。1978年製で、例によってサウンドボードとピンブロックを交換したニュースタインウェイ。
グレースは「こんな音の良いLはマンハッタンでも見たことがない!」と大喜び。それは当然。
ちょっと惜しいけど、譲る事にした。
勿論、手放す時は返してもらうことを力説してね(笑)
夕方からは、佐山雅弘、国府弘子組が2台ピアノの練習と打ち合わせに来るので、大急ぎでピアノの移動、入れ替え。

夜8時過ぎからやっと自分の時間。
今夜は、先日ニューヨークから帰ってきたF1の調整。サロンに1人篭って仕上げて行く。
93年、一緒にニューヨークから返ってきた頃を思い出しながら、整音する。
半月前はまだまだ、落ち着きのなかったサウンドボードも、少しずつ本来の響きを取り戻してきた。
程よく枯れて落ち着いたケースと、出来の良いフレームに、White Eastern Spruce のサウンドボード。
私の考える理想のニューヨークスタインウェイの姿である。
もう現在のスタインウェイ社では作れなくなってしまったのだから、こうやって自分でやるしかない。
それはストラディヴァリウスやガルネリが職人達の手によって、何度も修復されて、何世紀にも渡って素晴らしい音色を奏で続けているように・・。

夜も12時を回った頃、ようやく人に聞かせられる程度に仕上がってきたので、事務所で作業を続けていた3人のスタッフを呼びに行った。
「早く聞きにおいで。今まで聞きなれたあのF1のサウンドボードの材質を交換したら、こんな音になると言う貴重な経験だぞ!」
そして、夜遅くまで、我々は楽しんだ。

この楽器でいつお披露目コンサートをやろうか・・。

ちょうど12月20日、国際フォーラムでピアノ・コンチェルト『皇帝』を頼まれているので、そこにこの新しい究極のF1を持っていくか、来週ついにマンハッタンからやってくる1922年製CD199にするか、思案中。
贅沢な悩みでとても楽しみだ。

写真は真新しいF1のサウンドボードと、駒。
ちなみに、駒ピンの頭が丸いままになっていますが、忘れたのではありません(笑)
通常は、この状態からグラインダーで、頭を平らに削るのだけれど、その時に発生する熱の影響を避けるために、わざと削っていません。