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豊田コンサートホール

朝5時にデュトロで、豊田に向けて出発。
先週のアン・アキコ・マイヤースに続いて ツアーの第2弾が始まりました。日本では4年ぶりのギル・シャハムです。
今日は久しぶりの豊田市コンサートホール。さすが世界1のトヨタの町だけあって、豪華なホールです。

さて、先日の神戸国際会館で撮れた写真はいかに偶然だったかの比較見本として、今日も同じアングルで録ってみました。通常の照明はステージより客席のほうが暗いので、殆どがこんな感じで映ります。
神戸の時は照明のセッティング中で、ステージより客席のほうが明るい時があり、偶然そのタイミングのときに撮ったので、綺麗な客席に私がシルエットだけで溶け込んでいるみたいに撮れたのです。今日は、神戸に負けず劣らず綺麗なホールなのに、おっさんがはっきり写ってしまって、目障りな、普通の写真になってしまいました(笑)

さて、今回のギルのツアーの持ち込みは、豊田、静岡AOI、王子ホール、そして25日最終の紀尾井ホールです。
4年前、サントリーホールでの名演はNHKで何度も再演されているので、見た人も大勢いると思います。今年も最終の紀尾井ホールはNHKが収録するので楽しみですね。

今日は日曜日で東名もスイスイ、横浜から3時間半で豊田に到着。
9時半に搬入して、調律開始。
昨日大きな調整は殆ど済ませているので、あとはステージ上で、ホールの癖にあわせて微調整するだけです。
この豊田市コンサートホールは以前フルートの高木綾子の録音でも来たことがありますが、シューズボックススタィルの約1000席で、かなり奥行きがあるにもかかわらず、一番後ろの席まで見事に音が届く魅力的なホールです。
9階建てビルの最上階にあるので、ロビーからは抜群の展望で、コンサートホールにいるのを忘れるほど夜景も綺麗です。


前回のサントリーでは、ギルの衝撃の演奏テクニックにびっくり!
ヴァイオリンであんなPPPPPがかすれもせず、なぜ出せるのか・・!
完璧な音程とあいまって、どんどん小さくなるPPPPPP!ダメだ、ピアノの音量が大きすぎる。たまらず江口君が私を呼ぶ。
「もっと小さい音が出したい・・」サントリーホールのステージで、頭を抱えた。
この約2000人のホールで、しかもただでさえ音が飛んでいかないこのサントリーホールに合わせて、フォルテ重視で調整してきたのに・・まるで違う方向に調整を変えなければならない。
時間が無い・・。音量を下げるだけならばハンマーに針を刺して、柔らかくするのが、よくやるテクニックだけれど、そんな事をしたって江口君は決して満足するはずない。
ピアニシモに芯がなくなって、モワっとした鼻詰まりの音を彼は求めているのではない。
それは音量だけではなく音色まで変わってしまうからだ。
ともかくタッチで限りなくPPPPPが出せるように調整をやり直す。
それならずっと遠くまで減衰しないで
PPPPPが聞こえるはずだ。そんな苦労も知らず、ギルは更にPPPPPPに拍車をかける!
だめだ、もっと音を小さくしたい・・江口君も悲鳴を上げる。また調整をやり直す。こんな時ホフマンアクションだったら・・。

(ホフマンアクションとは---鍵盤を押していくとやがてコクンと感じる「エスケープ」「アフタータッチ」とよばれるあの感触が全くなく、いくら弱いタッチで弾いても音の抜けがない調整のアクションのこと。)

実際はこのコックンと抜ける位置がハンマーが弦にもっとも接近している位置なので(この後は鍵盤を押し続けてもハンマーは逆に弦から離れてしまう)、この先が音の出るポイントなのだ。
この位置はピアニシモで演奏上とても重要な位置なのだが、鍵盤の表面の高さと「あがき」と呼ばれる鍵盤の深さを計る基準はあるものの、このアフタータッチの高さの明確な基準はない。
実際この位置は感触で判断するしかないので、殆どのピアノが揃っていない。(目に見える部分を一生懸命揃えたピアノほど、音の出るポイントがばらばらな事が多い)
ここが揃っていないと、和音で鍵盤を押した時にそれぞれの指で出る音のタイミングがずれるので、1枚の板のような和音ではなくポロロンポロロンと分散してしまう。これはピアニシモの時は、より顕著に現れるので、とても重要なわけです。

このサントリーホールでのリハーサルは、久しぶりに目の覚めるような出来事で、現状にアグラかいてちゃいかん!と汗だくで時間一杯まで、ホフマンアクション風に調整をやり直した事を昨日の事の様に思い出すわけです。
日本ではそれ以来だけど、その翌年もニューヨークでのレコーディングやエイブリフィッシャーホールでのコンサートで、タカギクラヴィアUSAのスタインウェイDを使ったから、ギルちゃんに会うのは3年ぶりかな?
そんな事を思い出しているうちにいつものように早めに江口君は現れた。今日は日曜日でマチネなので、3時開演。
久しぶりのギルは少し年をとって中年太り。そのせいか、以前よりヴァイオリンの音が太くなったように聞こえるのは、気のせいか?
相変わらずヴァイオリンを弾くという技術もこれ以上のものはないというほどのテクニックで、まさしくこれは天才だ。